はじめに。

蛾色灯。へようこそ。この記事は常にトップで表示されますのでご了承ください。

こちらのブログは 僕が主に関東や中部地方で撮影した蛾画像保管を兼ねた蛾ブログです。
僕のフィールドワークを徐々にまとめていかなくてはいけませんしね。。。

画像を淡々と貼っていって種の基本的な情報、僕なりの考察を加えているだけのブログ(というか記録簿)です。

何か同定間違いやご意見等ございましたら、コメントをお願いいたします。
一度書き上げた記事でも、記録画像や考察に追加があればどんどん加筆していきます。

寄主植物や成虫出現時期等は図鑑や経験に基づいて記述しています。
しかし学名の意味や読み方はあっているとは限りません。僕の妄想が多分に含まれています。
簡単に信用して引用する事は絶対にやめてください。

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↓一応、目的の種を検索しやすいように目次を作っておきました。(まだそんなレベルではないのですが)

蛾色灯。掲載種別目次

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更新記録的な…ツイート。

本垢のくだらないツイート。


Facebook やってます。



主要引用文献:
岸田泰則(編),2011.日本産蛾類標準図鑑1.352pp.学研教育出版.東京.  
岸田泰則(編),2011.日本産蛾類標準図鑑2.416pp.学研教育出版.東京.
埼玉昆虫談話会,1998,埼玉県昆虫誌Ⅰ(第2分冊). 埼玉昆虫談話会. 


「蛾色灯。」内の文章、写真の著作権は飯森政宏に帰属します。写真及び内容の無断転記・転載は禁止です。
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【0202】クロフカバシャク
Archiearis notha okanoi

環境省のRDBでは絶滅危惧II類(VU)に指定され、永らく記録が途絶えていた。

しかし2015年に青森で再発見され、一躍蛾屋の間で話題になった蛾である。
工藤 誠也, 工藤 忠,2017.東北地方におけるクロフカバシャクの再発見.やどりが (253):2-5
著者のブログ→青森の蝶たち

その後、長野で生息が確認され、新たに記録された。
四方 圭一郎・青木 由親・工藤 誠也,2016.長野県で発見されたクロフカバシャク(シャクガ科,カバシャク亜科).蛾類通信 (280):121-124

さらに秋田県でも記録されるなど
梅津一史,2017.クロフカバシャクを秋田県で採集 .誘蛾燈 (230):101

採れだすとどうやら既知の発生期より実は一か月ほど早いのではないかということがわかってきた。

兎にも角にもクロフカバシャクはここ数年蛾屋の心をざわつかせていたのだった。


僕もミーハー蛾屋のはしくれとして是非この手にそして写真におさめたいと思い、長野で発見されたという産地へ向かった。

まだ雪が残る山間部だが、この日は20℃に近い晴天。コンディションは良いと思われた。

到着して10分、視界の奥に目立つ飛翔体が舞う。


「あれか」


自分の短い竿では届かないところだったので見送った。しかし、どういうものかはわかった。

【カバシャク】を採集したことのある人ならわかるだろう。アレと同じである。


その後、5分も経たないうちに近くを横切る橙色の飛翔体。

ロックオンして落ち着いてネットを振る。


よし!!

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【成虫♂写真】20180326長野県<標高 1100m>

なんとか一発で仕留めた。クロフカバシャクの名の通り、カバシャクより黒味が強い。

それは裏面にも表れていた。

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【成虫♂写真】20180326長野県<標高 1000m>

黒部分が明らかに多い。似ているが差異点を抑えれば間違うことはないだろう。

さらに♂は触角の差異があり、同定に役立てることができる。

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【成虫♂写真】20180326長野県<標高 1000m>

このような両櫛歯状の触角はクロフの特徴である。

場所を少し変える。

現場で落ち合う予定だった蛾類学会会長とA氏が先に到着していた。

二人ともひとつづつ採集したとのこと。その後三人で歩くが飛んでいるのは越冬明けの蝶ばかりだ。

長いこと何も採れない時間帯が続く。まだ盛期にはちょっと早かったのか… 少しダレてくる。

A氏がまたひとつ採ったようでニコニコしながら三角紙に入れている。

いいなぁ。。。


その直後、僕の目の前に橙色の飛翔体が舞い降りる。

どうやら吸水に来たようだ。

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【成虫♀写真】20180326長野県<標高 1100m>

なんと二つ目はメスであった。またメスを採ってしまった。

僕をメスハンターにでもさせるつもりであろうか。

合計二個体を採集しこの日の採集行は終わった。少ないが成果がないよりは百倍マシである。


食餌はヤマナラシなどのヤナギ科。カバシャクのカバノキ科とはここでも違いがある。


種小名はnotha (ノーダ)  いろいろな種の種小名に使われているようだがよくわからない。


現状では青森・秋田・岩手・長野でのみ記録されており、埼玉では記録がない。

【0201】ヨモギキリガ
Orthosia ella

春に現れるキリガ。ヨモギキリガは分布はしているが中々採れない、そんなキリガである。

キリガの仲間というのは基本的に樹木に幼虫がつくのだが、ヨモギキリガはその名の通りヨモギを食餌とする。

ヨモギと言えば河川敷などに良く生えている草である。普通、そんなとこでキリガは採らない。

糖蜜採集も基本的には林のあるところで行う。キリガを採りに行ってもそこにヨモギキリガはいないのだ。

偶々生息域が重なるところで採集をすると飛んでくる。そんなちょい珍キリガなのだ。


そんなヨモギキリガ、飛来するとやはり嬉しい。

前翅からは想像できない純白の後翅を見たら最後、ヨモギキリガはお気に入りのキリガになってしまうのだ。

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【成虫♂写真】201800324埼玉県さいたま市桜区<標高 5m>

種小名はella (エラ)。 スペイン語で「彼女」の意。

埼玉での記録は少なくない。川口から大滝まで幅広く生息している。

【0200】カバシタムクゲエダシャク
Sebastosema bubonaria

 
 「カバシタムクゲエダシャク」

蛾屋でなくとも名前くらいは聞いたことがあるかもしれない。

♀は1992年、♂に至っては1970年以来ずっと見つかっていなかったまさに「幻の蛾」である。

2008年からフユシャクを始めた僕であるが、半分UMA扱いのこの蛾を真面目に探しに行ったのは一度きりだ。

痕跡すら見つけることのできなかった僕らは、それ以来カバシタカバシタと言うものの殆ど何もしていなかった。


諦めていたのだ。


しかし、あの2016年3月17日にすべては一変した。


昼前、親交の深いY氏から一報が入った。

「やった!!」の文字と共に送られてきた画像に写っていたのは紛れもない、毒瓶に入っているカバシタムクゲの♂であった。

僕らは色めき立った。蛾LOVE氏に連絡を取り、次の日に向かうことにした。

翌日は金曜日であったが、もちろん仕事などしている場合ではない。


2016年3月18日、僕らは彼の地へ向かった。ミノムシ研究者のN氏、むし社のK氏も一緒だ。

彼の地には昨日Y氏と一緒に採集をしていたフユシャクの第一人者、中島秀雄氏がいた。

5人で彼の地を歩く。


8時45分。橙色の飛翔体が目の前を飛ぶ。

「いた!あれだ!!」口々に叫ぶ。走る。振り逃がす。

その後も橙色の飛翔体は僕らを嘲笑うかのように飛び回る。


速い。とても追いつけない。

ネットなどほとんど振らない僕らに採れるシロモノではない。

10数個体を見るも5人のネットに収まった個体はいなかった。


11時を過ぎると飛翔体もなくなった。一行にあきらめムードが漂い始めたその時である。


「おーい!!!!」


50m先くらいの林縁部から中島氏の声がする。というかこんなに大きい中島氏の声を僕は今まで聞いたことがなかった。

「採ったか!?」

一行は慌てて中島氏のもとへ駆け寄る。


満面の笑みを湛えた中島氏が指さした先に・・・  いた。

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【成虫♀写真】20160318

いた。本当にいた。幻ではなかった。

人は興奮しすぎると立てなくなる。僕はこの時知った。脚が震えるのだ。

皆で記念写真を撮り、談笑する。素晴らしいひとときだ。

大きな、とても大きな収穫を得た僕らは林内を歩く。

蛾LOVE氏がいきなり僕を指さす。「ああああああ!!!いたああ!!!」

振り返るとそこに・・・ いた。

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【成虫♀写真】20160318

まさかの二個体目。しかしこれは悔しかった。僕のすぐ後ろにいたのだから…


卵を皆で持ち帰り育てることに。

飼育の顛末はこののち発行された日本の冬尺蛾

中島 秀雄 · 矢野 高広,2016.日本におけるカバシタムクゲエダシャクの再発見について.蛾類通信 (278):65-67
中島秀雄・阪本優介・松井悠樹・中 秀司, 2017,カバシタムクゲエダシャクの幼生期, TINEA 23(6)

もしくは蛾類学会コラム7 「なに食ってるか分からない蛾」を飼育して実験材料にする(1) 幻の蛾、カバシタムクゲエダシャクをご一読願いたい。


一年後、各人の家庭で続々と羽化するカバシタムクゲエダシャク。

我が家でもいくつかの個体が羽化した。実は今まで♂と♀が同一種である、という確証はなく推定であった。

この時初めてカバシタムクゲエダシャクの雌雄とされていた蛾は同一種だと確定したのだ。

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【成虫♂写真】飼育羽化

2017年3月、再び僕らは彼の地にいた。

今度は処女♀を持ち、コーリングに寄ってきた♂を採る作戦だ。

あれだけ苦労したのが何だったのかのように♂はたくさんやってくる。

Kabashitapea
【成虫交尾写真】20170321

野生の♂も採集することができた。


そしてまた一年後、僕は自分の手でようやく♀を採集することができた。
P3152916
【成虫♀写真】20180315

幻の蛾は眠りから覚めた。知見も増えた。これからは新産地も発見されるに違いない。

しかし幻の蛾がまだ幻の時に出会えたあの興奮、足に力が入らなくなったあの興奮は一生忘れないであろう。

僕の蛾人生に刻まれた出来事であることは間違いない。

種小名はbubonaria(ブボナリア)。まったくもってわからない。それでいい。

学名の意味くらいは謎のままでいい。


埼玉では一例、さいたま市田島にて♀の記録がある。次は埼玉での再発見を成し遂げなくてはいけない。

まだまだ僕とカバシタの付き合いは続きそうだ。

【0199】チャイロキリガ
Orthosia odiosa

春に現れる春キリガ。その中でもチャイロキリガは普遍的にみられる種のひとつだ。

和名そのままの茶色に外縁部に現れる三角の白紋。

あまり迷うことはないように思われるが、白紋が消える個体があり、レア種の【イイジマキリガ】?と思うことも。

まあ大体チャイロなのだが…

Photo_2
【成虫写真】20150318東京都東大和市<標高125m>

種小名は odiosa (オディオサ)。 「憎い」という意味があるようだ。

こんな名前をつけるなんて何があったのか…

埼玉では平地から山間部まで幅広く記録がある。

【0198】アカバキリガ
Orthosia carnipennis

春に現れる春キリガのなかでも中盤に出てくる種だ。

肌色の前翅に目立つ I 紋が印象的で、他に紛らわしい種はない。一目でアカバキリガとわかるだろう。

各種広葉樹を食餌とするド普通種ではあるものの、美しいことに定評があるキリガのひとつである。

P3192940
【成虫♂写真】20180319埼玉県秩父市大達原<標高360m>

埼玉では平地から山間部まで幅広く記録がある。

種小名はcarnipennis(カルニペンニス)。ラテン語で直訳すれば「肉の翼」。肌色の前翅を評したわかりやすい命名だ。


余談ではあるがむし社から発行している「日本の冬夜蛾」では僕の撮影したアカバキリガが表紙を飾っている。

キリガ好きの方は是非、ご一読いただきたい。(在庫僅少と聞いていますのでお早めに)

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日本の冬夜蛾 (小林秀紀 編,2016, むし社)

【0197】アトジロエダシャク
Pachyligia dolosa

春の訪れと共に現れる春の七枝尺、第三席。

一見シャクガには見えないその風貌は、毎春名前を尋ねられる蛾ランキングの上位である。

様々な広葉樹を食餌とするので普遍的に生息し、個体数も多い蛾だが見つけるとやはり嬉しくなるものだ。

春の季節が順調に推移しているのが感じられる。

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【成虫♂写真】20180319埼玉県秩父市大達原<標高360m>

種小名は dolosa (ドロサ)。 ラテン語で嘘、偽。 何かほかに対象となる種があるのかな…

埼玉では平野部から山間部まで幅広く多くの記録がある。

【0196】クラマトガリバ
Sugitaniella kuramana

早春、少しづつ街灯の下に蛾が増えてきた頃に見られるトガリバである。

同じような時期に出る似た種に【マユミトガリバ】がいるが、マユミは背中に毛束が見られる。

前翅には若干の個体変異があるが、毛束がなければクラマトガリバだ。

クマシデを食餌とするので、クマシデの多い谷沿い=山地における人の行動範囲でよく見かける種である。

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【成虫写真】20140329 長野県軽井沢町長倉<標高1368m>


埼玉では旧大滝村や皆野町、長瀞町といった山間部での記録がある。

種小名はkuramana (クラマナ)。 京都の鞍馬山のことであろう。

原記載を当たると May 25, I928, at Kurama by Kyoto. の記述がある。
Matsumura, S.,1933.A List of Cymatophoridae in Japan, Korea and Formosa with a generic Key.Insecta matsumurana, 8(2):102.

クラマトガリバの生息域と採集日からして鞍馬山と推察される。

【0195】クワトゲエダシャク
Apochima excavata

目にする機会の多い【オカモトトゲエダシャク】に酷似した種である。

戦前はクワの害虫としてその名を馳せたが、桑畑の減少により生息地は急減した。

近年は点々と記録があるにすぎないレア蛾となってしまった。

環境省のRDBカテゴリでも準絶滅危惧(NT)に指定されており、生息地の保全が急務である。

僕が勝手に制定した【春枝尺四天王】(春に出現するエダシャクの中でも採集しにくい四種)の一角であり、

残り三種を採集していた僕にとってクワトゲは是が非とも出会っておきたい種であった。


そんなクワトゲ、有名な産地がいくつかあり僕はそのひとつ岐阜県の産地へ赴いた。

到着した感想はなんの変哲もない河川敷である。どこにでもありそう、といったら失礼かもしれないが

埼玉でもこのような環境はあるだろう。食樹であるクワは確かに散見されたが、特記するほど多いわけでもない。

本当にこんな場所にいるのかというのが正直なところだった。

しかしである。

小さな常夜灯の下に見慣れたスタイルの蛾がついている。

一見して色が薄い。クワトゲであった。

到着して5分。まだ陽も落ちていない。恋焦がれたクワトゲとの対面はあっけなく達成された。

P3042764
【成虫♂写真】20180304 岐阜県<標高 25m>

目的は達成してしまったが、せっかく6時間もかけて遠路はるばるやってきたのにこれで帰るのはちと寂しい。

追加を狙って少し離れた場所でライトトラップをやることにした。

19:00に点灯。何も飛来しない。ヒゲナガカワトビケラだけが増えていく。

21:00を過ぎてシモフリトゲやトビモンなどが飛来するがクワトゲは飛来しない。

あんなに小さい灯りに来てたんだ、発生しているんだ、来ないはずがない。

23:00。なにも増えない。ここまで何もこないとさすがにテンションが下がる。もう無理か…

23:30。何やら飛んできた。期待もせずに見てみたら




来た!クワトゲだ!!

P3042768
【成虫♂写真】20180304 岐阜県<標高 25m>

続けて2♂飛来。良かった良かった。どうやらクワトゲは日付が変わるあたりに活動するようだ。

そういえばオカモトも飛来は遅かったっけ。さて楽しくなってきたぞ。いくつ追加できるかな…


長男が叫ぶ。

「何だ?これおかしいよ?」


なんだなんだ何がおかしいんだ。


長男「クワトゲ?なんだろうけどなんかでけえよこれ」


は? まあそんな個体もいるだろ どれどれ…

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【成虫♀写真】20180304 岐阜県<標高 25m>

うわあああああ!!!!!! メスだ!!!!!!


メスだ。メスである。どうみてもメスだ。



クワトゲのメスは灯りにこない、のが定説である。

近似種で普通種のオカモトですらメスは灯りにこないので珍品なのだ。


でも飛来した。というか僕はこいつらのメスはほとんど飛べないんじゃないかとすら思っていた。


飛べたんだねキミたち。。。



ということで、合計6♂1♀を採集し、僕の岐阜行は大勝利で幕を閉じた。



さて、ここまでお読みの方は疑問を持つ方もおられると思う。

「オカモトとクワトゲって何が違うの?」

傍目にはそっくりなこの二種、いくつか相違点がある。


1.クワトゲは色が薄い

よく言われてることだが、クワトゲはオカモトに比べてくすんだような色である。


これは実際見ると意外とわかる。しかし、すべてをこれで識別できるかというと疑問符がつく。P3042753

顔を撮ってみても何かくすんだ色の薄い感じがする。彩度が低いと言うべきか?

2.クワトゲは前翅内横線が「くの字」になる

内横線とは一番頭側にある目立つ濃い線のことだ。(本来はもっと内側に亜基線というのもあるのだが)

これがクワトゲは「く」の字になり、オカモトは「(」状になるのである。

P3052781

特異な止まり方をするアポキマ属だが、翅を広げると普通の蛾になる。

こうなっていれば「く」の字になっているのがお判りいただけると思う。

しかし翅の模様を中々見せてくれないため、一見ではわかりづらい。



3.クワトゲの後脚には二対の距がある

【オカモトトゲエダシャク】 でも触れたが、クワトゲは後脚に二対の爪があるのだ。
P30427571_2

これは撮影のみでも角度に気を付ければ判別することができる。

当記事一枚目の画像にも二対の距が確認できるのでもう一度ご覧いただきたい。


以上のような識別点でクワトゲは判別できるので、アポキマを見つけたときにはご活用いただければと思う。

種小名は excavata(エクスカバ-タ) 掘る、とか掘り出し物、みたいな意味があるようだが相関は不明。

【アカエグリバ】にも同じ名前がついているようだ。


埼玉では1990年代初頭に皆野町と寄居町での記録がある。

【0194】サクフウフユシャク
Alsophila yanagitai

日本に35種が分布するフユシャクガ。

その中でも九州にのみ産地が知られるのはこのサクフウフユシャクと【クジュウフユシャク】だ。

サクフウは漢字で朔風と書き、北風を意味する。1995年に新種記載された新しい種だ。
中島秀雄, 1995. 九州産Alsophilaの1新種 Tinea 14(3):196-199

どちらも関東在住の僕にとって、この二種は遠かった。 

仕事の忙しい師走時期にまとまった休みを取り九州まで赴かねばならない。

さらに外れた時に他の蛾を狙う楽しみがほとんどない。この二種だけを狙うのみなのだ。

しかもルックス的に他種とあまり変わり映えはしない。たとえ採れたとしても【シロオビフユシャク】に似てるヤツ、なのだ。

複数要素が重なり、この九州フユシャク二種は行く気すらなかったのが正直なところであった。


しかしである。

フユシャク全種制覇を果たすには採らなければならない。その思いが今年は強くなった。

折しもむし社から日本の冬尺蛾が発売され、刺激を十二分に受けてしまった僕は決断した。



サクフウを採ろう。



休みは取れた。いや取った。 あとは九州へ行くだけだ。

最低でも♂は仕留めたい。可能性を高める為にライトトラップセットを持参しなくていけない。車で行くことにした。

20時間かけて熊本へ。そこで福岡のSさんに合流してポイントを案内していただいた。



日没後、僕らが彷徨う林内にフユシャク亜科らしき飛翔体が舞う。

ネットを振る。確認する。

シロオビと違う!翅がでかい!これがサクフウか!!!

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【成虫♂写真】20171209熊本県<標高750m>

思ったより簡単に採れてしまった。いくつも舞う飛翔体はすべてネットインすればサクフウだった。

しかし九州まで来た意味はこれでできたというもの。あとはメス、あわよくばペアを…

そんなうまくいくわけはない、と思いつつも林内の木を舐めまわすように探す。

Sさんが僕を呼ぶ。「メスだ!メスがいるよ!!」

僕「え??」

S_3
【成虫♂写真】20171209熊本県<標高750m>

うわあああ!! メスだ!! ちなみにサクフウのメスは僕の知る限りほとんど採れていないハズ。

とんでもないものを見つけてしまった気分だ。 少しシロオビなどとは違ったねずみ色がかった感じがする。


その直後である。


Sさん「ここにオスがいるんだけど、ちょっと撮影しづらいなあ… 変な体勢で変な位置にいる」

僕「どれどれ・・・  これペアじゃないですか???」

Sさん「やっぱりそうか??」

S_4
【成虫♂写真】20171209熊本県<標高750m>

まさかのペア発見である。

ペアはSさんがつい数日前に見つけたが極レアものである。

単発突貫で九州へ来てしまった僕が見つけていいようなシロモノではないのだ。


大満足の九州行となった。Sさんには改めてお礼を申し上げたい。本当にありがとうございました。


種小名は yanagitai (ヤナギタイ)。僕も少なからずお世話になっている発見者の柳田慶浩氏に因む。

九州各地に記録があるが、他地域での記録はない。現状九州特産種である。

【0193】アルプスギンウワバ
Syngrapha ottolenguii nyiwonis

高山蛾、と呼ばれる蛾の中では唯一のキンウワバ亜科に属する。

コケモモ、ガンコウラン、クロマメノキが食草として記録されており、生息域と密接な関係があると思われる。

他の高山蛾に比べると低標高でも採集されており、高山蛾のなかでは比較的出会いやすい種類だ。

成虫は7~8月に見られるが、秋になると低標高地に降りてくるという習性もあるようで、純粋な高山蛾とは言えないかもしれない。


しかし、その美しさには何の関係もない。

新鮮な個体は美麗種が多いキンウワバの中でも1,2を争うのではないかと勝手に思っている。

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【成虫写真】20160804 群馬県吾妻郡草津町<標高2070m>

本日羽化しました!と言わんばかりの美麗個体。紫色が鮮やかである。

毎日定点観測をしているのでなければ、こういった個体に遭遇するのは完全に運である。

この美麗個体に逢えた運には素直に感謝したいと思う。


S_2
【成虫写真】20160804 群馬県吾妻郡草津町<標高2070m>

同日同所で飛来した個体であるが、幾分スレた感がある。紫色は褪せ、渋めの銀色になってしまう。

トサカ部分が他のキンウワバとは違い、何層にもなっているように見えるのが特徴的だ。

撮影した群馬県では上信山地にのみ生息し、準絶滅危惧種としてRDBに記載されている。

種小名はottolenguii(オットレングイ)。献名だな・・・調べるのめんどくさいのでやめる。


埼玉では記録されていないが、いてもよさそうな気がする。クロマメノキが高山帯にあるかどうか。 

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Deilephila elpenor lewisii

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