蛾色灯。へようこそ。この記事は常にトップで表示されますのでご了承ください。

 

こちらは僕が主に関東や中部地方で撮影した蛾画像保管を兼ねた蛾ブログです。

淡々と画像を貼って種の基本的な情報、僕なりの考察を加えているだけのブログ(というか記録簿)です。

 

何か同定間違いやご意見等ございましたら、コメントをお願いいたします。
一度書き上げた記事でも、記録画像や考察に追加があれば加筆していきます。

 

寄主植物や成虫出現時期等は図鑑や経験に基づいて記述しています。
しかし学名の意味や読み方はあっているとは限りません。僕の妄想が多分に含まれています。
簡単に信用して引用する事は絶対にやめてください。

 

 

↓一応、目的の種を検索しやすいように目次を作っておきました。(まだそんなレベルではないのですが)

 

蛾色灯。掲載種別目次

 

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主要引用文献:
岸田泰則(編),2011.日本産蛾類標準図鑑1.352pp.学研教育出版.東京.  
岸田泰則(編),2011.日本産蛾類標準図鑑2.416pp.学研教育出版.東京.

 

 

「蛾色灯。」内の文章、写真の著作権は飯森政宏に帰属します。写真及び内容の無断転記・転載は禁止です。
(C) 2009-2023 飯森政宏(Masahiro Iimori). All rights reserved.

 

 

 

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エゾサクラケンモン Acronicta strigosa (Denis & Schiffermüller, 1775) 

「エゾ」と名の付く蛾は多く、50種以上が知られている。しかしその中で「蝦夷地=北海道」特産の種は意外と多くない。

エゾサクラケンモンはそんな真正エゾ蛾のひとつである。

情報が少なく、標準図鑑にもロシア産の標本が使われており、国内ではまれとの記述がある。

 

6月末、道東の湿地で灯りをつけたが、本命はモンヤガ。

正直採れるとも思ってなかった。どんな蛾かもよくわかってなかった。

エゾサクラケンモン、というくらいだからサクラケンモンに似てるんだろう、来たとしてもわかるかな、くらいの気持ちだった。

灯りには【ヒメウチスズメ】や【エゾコエビガラスズメ】など北海道特産の蛾が来ていた。それだけで北ビギナーの僕は満足していた。

 

21時を過ぎた頃だろうか。小さな蛾が飛来していた。幕には止まらず忙しなく地面をちょこちょこ歩いている。

(なんだろう、コヤガみたいな…)

小さくて薄い印象のその蛾は老眼の進んだ僕にはケンモンヤガに見えなかった。

 

(とりあえず見たことない蛾ではあるな)

 

写真に撮って画像を確認する。

 

(これケンモンヤガ…だよな なにこれ…)

そこで思い出した。

 

「え、エゾサクラ!?」

 

声に出ていた。

220630
【成虫♂画像】220630 北海道

もっとサクラケンモンと似ているのかと思っていたが… そうは見えなかった。これは違う蛾である。

特に前翅基部附近や腎状紋が黄色みを帯びることは識別点として書かれているが、それ以前に印象が別物である。

 

【サクラケンモン】が翌日採れたので比較してみた。(といっても裏面だけだが)

Photo_20220921020101
左がサクラケンモン、右がエゾサクラケンモンである。大きさが一見して違う。

エゾは前翅形が丸みを帯び、裏面にも横線がハッキリ出るようだが数を見ていないので有効な識別点かどうかはわからない。

 

種小名はstrigosa (ストリゴーサ)。 痩せた、貧弱な、 という意味があるようだ。

確かに他種と比較するとそういった印象がある。前述しているが、薄くて弱々しく、一見ケンモンヤガに見えなかったのだ。

日本における寄主植物は未知だが、ヨーロッパでは多種の樹木が記録されている。

 

 

 

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フルショウヤガ Agrotis militaris Staudinger, 1888.



_僕は北の蛾が好きである。なかでも、北に多いモンヤガ亜科にはひと際思い入れが強い。

そんな僕の嗜好を決めたのはこのフルショウヤガである。最初に画像を見たときのインパクト、この蛾を見ずに死ねるかと思わせたほどだった。
この蛾に会うことは僕の一つの目標であった。

 

私事になるが、僕はほとんど北海道へ遠征というものをしなかった。というかできなかった。


ある程度の連休をとり、家族(主に嫁)の機嫌を伺い、なおかつ安くはない航空代や遠征費を自分の小遣いから捻出する。とてもじゃないができるものではない。そんな感じで北海道の蛾は諦めていたのが正直なところだった。

状況は変わるものだ。
数年前に部署が異動になり休みがとりやすくなった。子供も大きくなり手を離れつつある。格安航空チケットが手に入る時代になった。

しかしいつまでもこの状況が続くなんて保証はどこにもない。また部署が変ればもう無理だ。


そう思った僕の北への憧憬は一気に爆発する。


9月初旬。この年4度めの北海道。僕はオホーツクの海岸に立っていた。

ついに憧れのフルショウヤガが現実味を帯びてきた。時期に産地へ行きさえすればそう珍しいものでもないという。


海岸に棲むフルショウヤガ。昼は流木に隠れているという。

 

最初の一個体目はライトに飛来したものではない、ありのままのフルショウヤガを見たかった。

 

砂浜の流木を探すこと2時間。いくら北海道とはいえ、日が照り続ける海岸は暑い。Tシャツは汗でびしょびしょになっている。

強烈な陽射しと歩きにくい砂浜が、若いとは言えない僕の体力を容赦なく奪う。

 

頭もボーっとしてきた。喉もカラカラだ。 

まだ早かったか・・・?「フルショーいなくて泣いてる」 と仲間にLINEを送る。

 

半分作業となっていた何十本目かの流木をひっくり返す。

そこに何かいた。白っぽい蛾だ。

 

「あっ... フルショウ...」

憧れの君と遭遇した僕の第一声は思いの外か細かった。

210903_20220817020901
【成虫♂写真】20210904 北海道


北の海岸に佇む貴婦人に出逢った僕は冷静だった。

この蛾の前で取り乱したくない。これは僕にとって謁見なのだ。

フルショウヤガは個体変異が大きい。これは斑紋が清楚な型で美しい。僕の憧憬を裏切らない個体だった。


謁見を済ませた僕は夜のライトで追加を狙う。

海岸に仕掛けたライトには2つのフルショウヤガが飛来した。

210904
【成虫♂写真】20210904 北海道


これはコントラストが強い個体。これもまた美しい。

新鮮な個体を得ることができ、大満足だった。


種小名はmilitaris (ミリタリス) 軍隊、という意味だろうか。



憧れの蛾をひとつ手にするたび、楽しみが減っていくような気もして寂しい。

ひとつの大きな目標を達成するとそんな感傷に浸る。

それでもフルショウヤガに逢えた人生で良かったと心から思う。










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ヒメカレハ
 
Phyllodesma 
japonica (Leech, [1889])

 

春の蛾が一揃いした頃に出現する、年一化のカレハガである。

赤褐色と灰色が混じり、白帯を持ったその姿は他のカレハガに比べると小さく、見ればひと目でヒメカレハとわかるハズだ。

寒いところで良く見るイメージがあり、生息域は北海道と本州に限られている。時期に生息地へ行けば出会うのは容易いだろう。

190503
【成虫♂写真】20190503 山梨県

 

このヒメカレハ、もこもこして可愛らしく見つけるとつい手に乗せてみたくなる。

しかし、手に取るとコロンと擬死をしてしまい、動かなくなってしまうことが多い。

この擬死が頑固で、ちょっとやそっとでは動きだすことはないのだ。

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【成虫♂写真】20110521 長野県

 

まあ擬死をしていても可愛いので問題はないのだが。

メスはあまり見ることができず、僕自身も(おそらく)見たことはない。

 

幼虫の寄主植物はオオヤマザクラ、セイヨウハコヤナギが記録されている。

種小名は japonica (ヤポニカ)。そのまま日本の、という意味である。

以前は欧州に生息するP. ilicifolia の亜種とされていたが、現在は独立種とされている と標準図鑑に記述がある。

 

 

埼玉では旧浦和市と旧神泉村で記録がある。

先にも書いたように寒いところで見るイメージが強く、旧浦和市で記録があるのは驚きだ。

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ムラサキウスモンヤガ 本州亜種 
Cerastis leucographa fujisawai  Kishida, 2021

北海道と本州中部(長野・岐阜・群馬・埼玉・山梨など)の極めて一部に生息する紫色が美しい春のモンヤガである。

 

本州産は濃い紫色をしており、2021年に新亜種とされた。岸田泰則,2021.ムラサキウスモンヤガの一新亜種の記載 TINEA26(1):4-5.

 

ここ数年、モンヤガに執心している僕は是が非とも墜としておきたい種のひとつであった。

4月の休日に既知産地に赴き幕を張ったのも一度や二度ではない。しかしその度に惨敗を重ねるのであった。

 

 

今年も例年のように幕を張った。しかし来るのは【コウスチャヤガ】や【カブラヤガ】だけであった。

今年もダメかぁ…と諦めてかけていたところ、4月下旬になり同地で採集したという報が入ってきた。

即座に行動に移した。仕事を早退し、現地へ向かう。行く道すがらは土砂降りに祟られ幸先が悪い。

 

 

現地に到着、雨は止んでいたが道路は濡れている。幕を張るポイントを選定しながら車を流していると一台の車とすれ違った。

あっ、今の車は… と引き返す。昨年にムラサキウスモンを墜としている強力蛾屋のAくんだった。

やはり彼も来ていた。お互い採れると良いですね、と言葉を交わし各々幕を張る。

 

 

気温は5℃くらいであったろうか。点灯後、蛾が来ない。本当に来ない。2時間経過してミヤマカバ・トビモンオオエダ、エグリヅマ。

まぁ大体この時期ここはこんなもんなのだが、心は折れそうになる。

20時を過ぎたころ、Aくんから飛来したと連絡。悔しいのはさておき、とりあえずこの気温この条件でも飛来することは間違いなさそう。

期待を持つが飛来しない。

 

 

21時が近くなったころ、小さいヤガが飛来しブンブンまとわりついている。

僕の勘が叫ぶ。来た!!!!!!これだ!!!!!!!!

210430
【成虫♂写真】20210428 長野県



僕の勘は正しかった。ようやくムラサキウスモンヤガを墜とすことができた。

結局この日は1♂を採集するに留まったが、また来年チャレンジしてみようと思う。

なお、この個体はC. l. fujisawaiのパラタイプに指定していただいた。

 

 

種小名は leucographa(レウコグラファ) leucoは白い、graphaは描くとかそういう意味なのだろうか。
白を描く者、とかそんな意味?

ヨーロッパではオオバコやタンポポ、ヤナギなどを寄主植物としているようだ。

 

埼玉県でも一例、三国峠での記録がある。

 

ムラサキウスモンヤガ 北海道亜種 Cerastis leucographa leucographa (Denis & Schiffermüller, 1775)

亜種ということで同記事に配してみる。北海道で採れたムラサキウスモンヤガだ。

幕に飛来するより同行したSくんのネットによって採れる個体の方が多かった。僕のライトに飛来したのは5程度だったが、

Sくんは20ほどネットインさせていた。

210504
【成虫♂写真】20210504 北海道

 

確かに本州産とは明らかに色味が違う。これは同種と思えない。

ここで採れたムラサキウスモンヤガはすべてこのような色味であった。

なお、北海道産はヨーロッパの名義タイプ亜種に含まれている。

 

北海道産・本州産にも和名の〇〇亜種というものは先述の記載論文には記されていない。

本ブログでは便宜的な亜種名を使うこととした。

 

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タカネモンヤガ 
Xestia wockei aldani (Herz,1903)

タカネの名を冠する高山モンヤガ。

高山蛾と呼ばれるモンヤガの中でも、標高が高めの場所に生息する。おおよそ2500m以上ではないだろうか。

自ずと生息域は狭く、記録があるのは飛騨山脈と八ヶ岳のみである。

 

もちろんそんな高山モンヤガ、憧れないわけがない。とはいえ車横付けで採れる場所はないのだ。

そんな難関種に意を決してチャレンジしてきた。

現地は標高2700m。真夏でも夜は10℃を下回る。充分な登山の用意をして出かけた。

初回は甘く見ていたのもあって途中で断念。二度目のリベンジでようやく生息域へ行くことができた。

なお、生息地周辺は特別保護地域がある。予め地域の場所を確認しておかないと大変なことになる。

 

日没直後から点灯するも、飛んでくるのは【コキマエヤガ】ばかりだ。ひとつ【アルプスクロヨトウ】が飛んできたくらいか。

1時間ほどするとポツポツ【ウスグロヤガ】なども飛んできた。しかし飛来する蛾の9割はコキマエヤガ。

21時を過ぎると幕はコキマエヤガに占拠されている。蛾の飛来は悪くない。しかしアルクロ以外の高山蛾がいっこうに飛んでこない。

気温は10℃あるかないか。風も強くなってきた。防寒具を着ても寒い。

 

・・・正直心が折れてきた。しかしここは山の上、帰ろうにも帰れない。我慢の時間が続く。

 

22時を過ぎた。ようやく【ダイセツヤガ】がひとつ飛んできてテンションが上がったが、蛾の飛来がほとんどなくなってきた。

所詮こんなものか、やはり僕はダメだなぁ… と諦めモードになった僕の脚にヤガが飛来した。

 

どーせコキマエヤガだろ…と期待もせず見てみる。

 

翅をバタつかせてはいるものの、明らかにコキマエヤガではなかった。今日初めて飛来する蛾だな…?なんだろう。 

ライトに照らされたバタつく翅は一瞬、【カギモンヤガ】のように見えた。そんなはずはない、カギモンヤガは春の蛾だ。じゃあなんだこれは…

 

 

そう思った瞬間、全身に鳥肌が立つのを感じた。脳より先に身体が反応した。

 

 

「まさか…!」

 

 

そう、飛来したのだ。待ち焦がれた高嶺の華が。

Photo_20210202033601
【成虫♂写真】20200801 岐阜県

 

いつもなら「うああああ!」とか叫んでしまう僕であるが、この時は言葉が出なかった。

「・・・・・・ッ!!!!!」 こんな感じである。

高嶺の華がこの僕に微笑みかけてくれたのだ。挙動不審になるのは仕方ないだろう?

 

この後、1時まで点灯したがタカネモンヤガの飛来はひとつだけであった。

ひとつの飛来、というのはもしこれが来なかったら~と考えてしまうせいか、とても愛おしい存在になる。

このタカネモンヤガが2020年、一番の成果であったことは間違いない。

 

幼虫の寄主植物は不明。八ヶ岳産はもっと黒くなるらしい。次回の目標である。

種小名はwockei (ウォッケイ)。

ドイツの昆虫学者、マクシミリアン・フェルディナンド・ヴォッケ  Maximilian Ferdinand Wocke(1820-1906) への献名と思う。

日本産は亜種 aldaniとされる。

 Imc00170

タカネモンヤガ  Xestia wockei aldani male

岐阜県 Aug. 1,2020/Masahiro IIMORI leg.(IMC00170)



 

 

 

 

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アトジロアルプスヤガ
 Xestia sincera (Herrich-Schäffer, 1851)

 

【アルプスヤガ】と言えば高山蛾を代表する種である。

本種はアトジロアルプスヤガ。アトジロ…後翅が白いアルプスヤガの意であるが、あまり似ているとは思わない。

高山蛾と呼ばれる一群は何種か存在するが、この蛾はイマイチ高山性なのかどうかハッキリしない。

日本では採集できる場所は標高こそ2000mを超えた箇所であるものの、海外での寄主植物はトウヒとなっており亜高山帯に生育する植物である。

高山蛾、と呼ぶことには少し抵抗もあるかもしれないが、僕は高山蛾と呼びたいのだ。 

 

 

本種は鱗翅学会発行の「やどりが」でシリーズ化されていた「日本の珍しい蛾」にも名を連ねる珍蛾でもある。
枝恵太郎,1999.日本の珍しい蛾-12-アトジロアルプスヤガ.やどりが (180):36

 

 

そんなアトジロアルプスヤガに出会うことなんてあるのだろうか、と思っていた。

しかし、蛾仲間の鉄人monroe氏がまたやってくれた。アトジロアルプスヤガを見つけてしまったのだ。翌年僕はそのポイントへ向かった。

僕のようなへなちょこでも行ける場所だ。しかし、行った時間は雷鳴轟く土砂降り。とてもじゃないがライトを点灯するような状態ではない。

これはダメだな、徒労か…と諦めていたところ…

 

 

いたのだ。建物の窓の隙間に。

 

「あぁっ!!?」

 

思わず声が出た。高山の白い貴婦人は逃げることなく撮影に応じてくれた。

まるでシャクガのようなモンヤガ。これは高山蛾だ。間違いない。

 

「ありがとうございます」

 

おもわず口に出た。

僕は誰にお礼を言ってるのだろう。

 

もちろん、鉄人monroe氏に対する感謝の意もあった。

それに加え、この美しい蛾と出会えたこの瞬間に思わず出た言葉なのかもしれない。

1907292
【成虫♂写真】20190726 静岡県

人づてに「アトジロはすぐ背中がハゲちゃうんだよ」と聞いていた。

ところがどうだ、この個体は美しいままだ。こんな美麗な個体に出会えたことにはやはり感謝である。

 

いつの間にか雨は止んでいた。大きな成果を得て満足気に歩いている僕の目の前をヒラヒラ舞う蛾が横切った。

 

「いた!」

 

なぜか僕は確信していた。飛んでいるのに、まだ一個体しか見ていないのに。

それがアトジロアルプスヤガだと脳が瞬時に判断した。

追われた蛾は逃げもせずふわりと僕の3m先へ舞い降りる。

ほら、アトジロだ。しかもまた綺麗な個体。

20190729
【成虫♂写真】20190726 静岡県


この後、一晩中歩いたが結局二個体と出会うに留まった。だがそれでも満足だった。僕はアトジロアルプスヤガを見たのだ。

 

種小名はsincera (シンケラ)
イタリア語やスペイン語で誠実な、という意味があるようだ。

 

Photo_20210202010801

アトジロアルプスヤガ Xestia sincera male

静岡県 July 26,2019/Masahiro IIMORI leg.(IMC00166)

 

 

採集地は特別保護地区に囲まれた箇所である。
事前に充分な確認を行い、無意識に特別保護地区で採集をしないよう、充分注意せねばならない箇所だ。

 

ちなみに蛾といえば「みんなでつくる日本産蛾類図鑑」であるが…

ここに【成虫写真1】として掲載されているアトジロアルプスヤガはおそらくヤツガタケヤガの誤同定と思われる。

画像は産地が山梨の大弛峠となっているが、この画像以外の大弛(国師岳)産は文献を見ても、人づてに聞いても確実な記録が見当たらない。

ややもすると標準図鑑にも記述がある国師岳には産しない可能性があるのだ。もしこの近辺産のアトジロアルプスヤガをご存じの方はご一報いただきたい。

 

 

 

 

 

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ホソアオバヤガ 
Actebia praecox flavomaculata (Graeser, [1889])

同属の【オオホソアオバヤガ】とは違い、淡い緑色と赤い斑紋が美しい種である。

 

ざっと調べてみても北海道から九州まで記録があるようで、特に局地的な分布を示すようなことは書かれていない。

 

埼玉でも旧浦和市、小鹿野町、横瀬町、旧大滝村で記録されている。平地から山地まで幅広く生息していることが伺える。

 

こんな感じなので、数こなしていれば採れそうな気もするが…

 

 

これがホントに全く採れないのである。

 

 

 

僕は蛾類のなかでもモンヤガ亜科には力を入れている(と自分では思っている)

 

ライトに飛来すればスルーするわけはないのだ。

 

図鑑で見ると美しい種である。僕との相性が悪いのか…と思っていたのだが。

 

 

ネットで検索しても「本州産」の画像が殆ど見当たらないのだ。出てくるのは北海道産ばかりである。

 

おそらく唯一、Digital Moths of Japanに今から20年前、1998年5月採集の標本が掲載されているだけだ。

 

 

重鎮の蛾屋さんは口を揃えて言う。「昔はそれなりに採れたんだがね。最近採れないねそういえば」

 

どうも察するに急激に数を減らしている蛾のようだ。

 

それもそのはず、先に改訂された山梨県 レッドデータブック2018にて、新たに準絶滅危惧種として掲載されてしまったのだ。

 

 

そんなホソアオバヤガだが、つい先日SNSを介した知人が本州産の画像をアップしていたのを発見した。

 

即時に連絡を入れると、わざわざ再度採集して頂いたうえに後程お渡ししますという返答を頂いた。

 

知人のご厚意で思いがけず本州産のホソアオバヤガが手に入ることになった。

 

有頂天の僕は、数日後に引き取る約束をしたのち別件で採集に向かったのだが…

 

 

 

なんとそこで採れてしまったのだ。今まで採れなかったホソアオバヤガが。

 

 

Photo
【成虫♀写真】20181012 山梨県

まさかの飛来である。確かに知人が採集したのだから時期なのだろう。

 

ただ、今まで何年も採れなかった蛾である。ふと立て続けに採れてしまうというのは何か要因があるのだろうか。

 

日本での寄主植物はハマエンドウが記録されている。属名のActebia(アクテビア)は浜辺に棲むもの、という意があるようで、

海外では砂丘地帯などに生息する蛾のようだ。

 

 

種小名はpraecox(プラエコックス)。 ラテン語では患者、という意があるようだが、

標準図鑑にはその薄緑が早春を思わせることから「早い季節」という意でつけられている、と記述されている。

 

 

夏眠する蛾のようで、越夏後はやはり斑紋が薄い。これは是が非とも越夏前の個体にお目にかかりたいものだ。

 

 

Photo_20200831223401 
【成虫♀写真】20200609 茨城県

 

と思っていたら採れてしまった。まさに羽化したてと言わんばかりのビカビカな個体である。

210522_20210523140301
【成虫♀写真】20210522 静岡県

越夏前の個体であるが、茨城の個体に比べるとスレている感がある。

が、拡大するとスレているわけではなく、元々こういう色味のようだ。個体変異が大きいのだろうか?雌雄差?

210522

上記の個体を拡大。鱗粉がスレている様子はない。

腎状紋が大きく、ふたつのハートが微笑んでいるように見える。

この蛾を見つけると恋愛運が上がる縁起の良い蛾…とかにはならないかな?

Photo_20210523224301
ホソアオバヤガ Actebia praecox flavomaculata female

茨城県 June 9,2020/Masahiro IIMORI leg.



後翅が黒い。しかしこれは極東の亜種である A.p.flavomaculata に固有のもので、ヨーロッパの亜種は白っぽくなる。

 

 

 

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ヒメアケビコノハ
 
Eudocima phalonia (Linnaeus, [1763]) 



♂は【アケビコノハ】によく似ているが、♀はアケビコノハとは違い、木の葉状とは違う模様をしている。

 

後翅の黒い部分が広く、アケビコノハとは違うのがわかる。

 

北は北海道から広く散発的な記録があるようだが、関東近辺では定着していないようで毎年採集される種ではない。

 

国外では東南アジアをはじめオセアニア、アフリカなどにも生息し、相当に広い分布域を持つ種のようだ。

 

船の甲板上で採集されたこともあり、遠距離を移動して生息地を拡大しようとする種であることが伺える。
村田 浩平 ・ 土屋 守正・増島 宏明,, 2007.太平洋上を浮遊する昆虫類と島嶼の昆虫相に関する研究 : 昆虫類の島嶼間移動の可能性.,昆蟲(ニューシリーズ) 10(4), 75-87,

 

そんな関東では稀なヒメアケビコノハ、10月の記録が多い。

 

Photo
【成虫♀写真】20181013 山梨県

 

長距離を移動してきたにしては妙に綺麗である。羽化したてじゃないかと思えるくらいだ。

 

ここからは僕の仮説になるが・・・

 

ライトトラップ中に霧が通過すると大量の飛来があることは蛾屋なら経験しているかと思う。

 

このヒメアケビコノハも霧の中から数多の蛾と共に飛来してきた。

 

これはコウモリのエコーロケーションが減衰される霧や低層の雲に紛れて移動してきているのではないだろうか。

 

例えば梅雨前線と共にやってきた個体が山にぶつかったとき彼らはそこに降り立ち、新たな生息地にしようとしてそこで産卵し、秋に成虫となる。

 

冬は越すことができず、翌年同じ場所で採集されることはない…

 

こう考えると一見南方種に似つかわしくない山奥で10月に綺麗な個体が採集されることに説明がつく。

 

しかし夏の間に幼虫が採集されていないとこの説は立証できないのだが…

 

 

俗にいう偶産蛾とは、偶々飛ばされてきたのではなく貪欲な生息地拡大の一端を垣間見ているだけなのかもしれない。

 

種小名はphalonia(ファロニア)。よくわからなかった。

 

ファロニア島というのが地中海にあるようだけど、縁もゆかりもない。

 

 

埼玉での記録は三峰山と両神山の二例。1999年の両神山では多数の飛来があったという。

S1002
【成虫♀写真】20101003 埼玉県 

 

 

 

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クロフカバシャク 
Archiearis notha okanoi (Inoue, 1958)



環境省のRDBでは絶滅危惧II類(VU)に指定され、永らく記録が途絶えていた。

 

しかし2015年に青森で再発見され、一躍蛾屋の間で話題になった蛾である。
工藤 誠也, 工藤 忠,2017.東北地方におけるクロフカバシャクの再発見.やどりが (253):2-5   著者のブログ→青森の蝶たち

 

その後、長野で生息が確認され、新たに記録された。
四方 圭一郎・青木 由親・工藤 誠也,2016.長野県で発見されたクロフカバシャク(シャクガ科,カバシャク亜科).蛾類通信 (280):121-124

 

さらに秋田県でも記録されるなど
梅津一史,2017.クロフカバシャクを秋田県で採集 .誘蛾燈 (230):101

 

採れだすとどうやら既知の発生期より実は一か月ほど早いのではないかということがわかってきた。

 

兎にも角にもクロフカバシャクはここ数年蛾屋の心をざわつかせていたのだった。

 

 

僕もミーハー蛾屋のはしくれとして是非この手にそして写真におさめたいと思い、長野で発見されたという産地へ向かった。

 

まだ雪が残る山間部だが、この日は20℃に近い晴天。コンディションは良いと思われた。

 

到着して10分、視界の奥に目立つ飛翔体が舞う。

 

 

「あれか」

 

 

自分の短い竿では届かないところだったので見送った。しかし、どういうものかはわかった。

 

【カバシャク】を採集したことのある人ならわかるだろう。アレと同じである。

 

 

その後、5分も経たないうちに近くを横切る橙色の飛翔体。

 

ロックオンして落ち着いてネットを振る。

 

 

よし!!

 

P3263080
【成虫♂写真】20180326 長野県

なんとか一発で仕留めた。クロフカバシャクの名の通り、カバシャクより黒味が強い。

 

それは裏面にも表れていた。

 

P3263052
【成虫♂写真】20180326 長野県

 

黒部分が明らかに多い。似ているが差異点を抑えれば間違うことはないだろう。

 

さらに♂は触角の差異があり、同定に役立てることができる。

 

S
【成虫♂写真】20180326 長野県

 

このような両櫛歯状の触角はクロフの特徴である。

 

 

 

場所を少し変える。

 

現場で落ち合う予定だった蛾類学会会長とA氏が先に到着していた。

 

二人ともひとつづつ採集したとのこと。その後三人で歩くが飛んでいるのは越冬明けの蝶ばかりだ。

 

長いこと何も採れない時間帯が続く。まだ盛期にはちょっと早かったのか… 少しダレてくる。

 

A氏がまたひとつ採ったようでニコニコしながら三角紙に入れている。

 

いいなぁ。。。

 

 

その直後、僕の目の前に橙色の飛翔体が舞い降りる。

 

どうやら吸水に来たようだ。

 

Sp3273096
【成虫♀写真】20180326 長野県

 

なんと二つ目はメスであった。またメスを採ってしまった。

 

僕をメスハンターにでもさせるつもりであろうか。

 

合計二個体を採集しこの日の採集行は終わった。少ないが成果がないよりは百倍マシである。

 

 

食餌はヤマナラシなどのヤナギ科。カバシャクのカバノキ科とはここでも違いがある。

 

 

種小名はnotha (ノーダ)  いろいろな種の種小名に使われているようだがよくわからない。

 

 

現状では青森・秋田・岩手・長野でのみ記録されており、埼玉では記録がない。






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ヨモギキリガ 
Orthosia ella (Butler, 1878)



春に現れるキリガ。ヨモギキリガは分布はしているが中々採れない、そんなキリガである。

 

キリガの仲間というのは基本的に樹木に幼虫がつくのだが、ヨモギキリガはその名の通りヨモギを食餌とする。

 

ヨモギと言えば河川敷などに良く生えている草である。普通、そんなとこでキリガは採らない。

 

糖蜜採集も基本的には林のあるところで行う。キリガを採りに行ってもそこにヨモギキリガはいないのだ。

 

偶々生息域が重なるところで採集をすると飛んでくる。そんなちょい珍キリガなのだ。

 

 

そんなヨモギキリガ、飛来するとやはり嬉しい。

 

前翅からは想像できない純白の後翅を見たら最後、ヨモギキリガはお気に入りのキリガになってしまうのだ。

 

P3242997
【成虫♂写真】201800324 埼玉県

 

種小名はella (エラ)。 スペイン語で「彼女」の意。

 

埼玉での記録は少なくない。川口から大滝まで幅広く生息している。

 

 

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