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2013年1月

【0067】ナカグロヤガ
Xestia undosa

モンヤガ亜科の中でも種の数が多く、僕の好きな種が多いXestia(クェスティア)属の蛾だ。

北方系の種が多いこの属だが、ナカグロヤガは近年この属に移された新参者だ。


関東周辺ではおおよそ600m~くらいからその姿を目にしている。

そんなに珍しい種ではないが、初夏に羽化するが夏眠(越夏)をする。

そして秋にまた産卵のため活動するというライフスタイルが面白い。

S2
20121013埼玉県秩父市三峰<標高722m>

上の写真はストロボを当てて撮っているのでそうでもないが、
実際目にすると非常に上手くコンクリートに溶け込んでいる。

もちろんコンクリートではなく石などに擬態してるのだろうが、隠れた擬態職人だ。

S
20121013埼玉県秩父市三峰<標高722m>

同じ個体をストロボなしの長時間露光で撮影してみた。おわかりだろうか?

こんなのが足元に多数いるもんだから、ライトトラップ中も相当気を配って歩かねばならない。


memo.....
ヤガ科 モンヤガ亜科に分類され、夏に羽化、越夏の後秋に再び活動します。
幼虫はコヌカグサというイネ科の植物を食草としてるようです。
埼玉でも秩父地方で多数の記録があります。
ライトトラップをすると、幕には止まらず地面にいることが殆どです。

以下記録
Sp9154631
20100915長野県東御市新張湯の丸<標高1728m>

【0066】クロウスタビガ
Rhodinia jankowskii

クロウスタビガ。その響きがなんとなく堪らない。名前を聞くだけで心躍るのは僕だけだろうか。

中秋の夜、山間部へ行くときのお楽しみである。

何はなくともクロウスさえいれば、その日は「成果アリ」なのだ。



蛾の渋い魅力を凝縮したような蛾だと僕は勝手に思っている。

今まで出会った全個体を撮影してるんじゃないかってくらい撮影している。

とにかく出会うと嬉しくって堪らない蛾のひとつだ。



♂は触角が強く櫛状になっている。ヤママユガ科に共通する特徴だ。
Sp9216191
【成虫♂写真】20090921群馬県利根郡片品村東小川<標高1320m>


♀は触角が軽く櫛状。蛾眉という言葉の由来の触角ではないかと勝手に思っている。
Spa152282
【成虫♀写真】埼玉県秩父市三峰<標高1060m>

以前はロシア南東部の原名亜種、本州亜種、北海道亜種と分かれていたが、

「差異が認められないため原名亜種のシノニムとする」※日本産蛾類標準図鑑よりという記述があった。

よって原名亜種と統合となったようだ。


種小名は jankowskii(ヤンコウスキイ)。 【ヤンコウスキーキリガ】をはじめ、色々なところに出てくるヤンコウスキー氏である。

ヤンコウスキー氏については正体がよくわかっていなかったのだが

虫撮記【虫画像・他】のyyzz2さんが謎を解いてくれた。

出現期は関東近辺では9月後半から10月中旬くらいまでと思う。【ウスタビガ】より早く出現する。

食樹はキハダ。埼玉では準絶滅危惧(NT1)に指定されているが、奥秩父ではちょくちょく見ることができる。

標本画像
SS_2
成虫♂                                   成虫♀


以下記録
1013
20101013長野県軽井沢町大字軽井沢<標高960m>


あと、どうでもいい情報ですが。。。
僕の撮影した渾身のクロウスタビガが2013,4月刊行予定の【世界のネイチャー・フォトグラフィー2013】に掲載されています。

【0065】オオチャバネフユエダシャク
Erannis gigantea

関東周辺では山地に生息する種である。

【チャバネフユエダシャク】に似ているが、外横線の走り方がオオでは強く√になっているのが特徴だ。
チャバネでも大きく湾曲していて紛らわしい個体が存在するが、見慣れると違うのがわかってくると思う。

オオチャバネ~という名だが、比べても特段大きいわけではない。
最大値はオオチャバネのほうが大きいようだが、普段目にする時にはあまり変わらないように思う。

Spb102052
20121110長野県軽井沢町長倉<標高1368m>

チャバネと同じように白ベースタイプと暗色タイプがある。
暗色タイプはあまり多くないように思うが産地によるらしい。


S
20121110長野県軽井沢町長倉<標高1368m>

メスはチャバネフユエダシャクに酷似していて外見で見分けるのは困難だ。
交尾している確実な個体を見たことがないので未見、としておく。

Sootya
20121110長野県軽井沢町長倉<標高1368m>
近似種チャバネフユエダシャクとの比較画像。右がオオチャバネフユエダシャク(当記事一枚目の個体)だ。


以前はErannis defoliaria giganteaという学名で、E. defoliariaの亜種として扱われていたが、
近年独立種となったようだ。


memo.....
シャクガ科 エダシャク亜科に分類されています。
幼虫は針葉樹食い。成虫は11月に出現します。
埼玉県でも記録がありますが、見たことありません。
僕の積年の課題です。

【0064】カシワオビキリガ
Conistra ardescens

キリガの中でも同定しづらいコニストラ属の仲間である。

その中でも【ホシオビキリガ】【ミヤマオビキリガ】【テンスジキリガ】とは見分けがつきにくく

糖蜜にやってきても「はいはいコニストラコニストラ」で片づけがちである。


カシワオビに至るフローチャートとして僕は以下のようにしている。


・ずんぐりむっくりな翅型 (ホシオビ黒点型は細長い)

・内横線が不明瞭な二重線で波打つ(テンスジは明瞭)

・翅色が赤っぽい茶色(ミヤマオビは暗い茶色 ホシオビは黄色っぽい茶色)

しかしこれだけやっても判別に困る個体はたくさんいるのが現状である。。。

そういった個体の正確な同定は交尾器を見るしかないだろう。


ということで以下は僕がカシワオビキリガと「思っている」個体である。

Sp1310256
20100131埼玉県さいたま市桜区秋ヶ瀬<標高10m>
不明瞭な二重線、赤っぽい翅色、カシワオビだと思う。

カシワオビは翅をあまり重ねずに止まる傾向があり、黒点がふたつ見えることが多い。

が、それだけで同定するのはあまりにも危険である・・・


memo.....
ヤガ科 キリガ亜科に分類され、秋に羽化。越冬し翌年春まで見られます。
糖蜜採集でよく飛来する蛾です。




以下記録
S
20130121埼玉県朝霞市岡<標高25m>




【0063】サザナミフユナミシャク
Operophtera japonaria

平地に生息するフユシャクだが生息域が幾分限られており、時期に歩けばいるというような種ではない。

何しろ神奈川では絶滅危惧Ⅱ類に指定されている種だ。


食樹のクヌギ、コナラから考えるとどこにでもいそうな気がするのだが、何かしらの条件が整っていないとダメなのかもしれない。

マイフィールド秋ヶ瀬公園にもクヌギコナラは大量にあるのだが見たことがない。

あれだけの規模を誇る公園にもいないとなるとサザナミフユナミシャクの生息には一体何が必要なのか。

食草が普遍的な種なのに生息域が局所的という種は難しい。

Ssazanami
20091212埼玉県<標高60m>

羽化シーズンには日没後に木の下から上へ沿うようにして飛んでいるのを見かける。

♀を探しているのだと思う。


S_3
20121221埼玉県狭山市<標高60m>

その♀はというと一見貧相な【クロオビフユナミシャク】である。

最初に単体で見つけたときはこれがサザナミのメスとは思わなかった。

Skoubi
20121221埼玉県狭山市<標高60m>

樹上3~4mの高さで交尾個体を発見。

これにより先ほど見つけた貧相なクロオビが実はサザナミだったのだと判明した。

なんとか下ろして撮影したが、羽を傷つけてしまった。

あの高さで交尾されると流石に中々見つけられない。

Photo
20161217 埼玉県狭山市<標高60m>

こちらも樹上3mほどの高さにて発見。今回は次男が木に登って綺麗なまま捕獲してきてくれた。感謝である(笑)


成虫は12月に出現し半月ほどで姿を消す。

種小名は japonaria(ヤポナリア)。日本の という意味だ。

埼玉では加治~狭山丘陵近辺の記録しかなく、局所的な生息をしていると思われる。

【0062】シュゼンジフユシャク
Inurois kobayashii

現在のところ、伊豆市修善寺周辺のみで確認されている種である。

発生時期が極めて短い事が多く、少しでも時期がずれると何時間も何千円もかけて蜘蛛の巣にかかった死骸を見に行くことになる。

4週連続で週末遠征しても出会えない年すらあったほどだ。


それだけにタイミングよく会えた時の感動はひとしおである。

一見、【フタスジフユシャク】にそっくりなのだが、よく見ると外横線が若干前縁近く(M1付近)で角ばる傾向がある。

加えてフタスジが本州で800m級の山地で11月に発生するのに対し、シュゼンジが生息する伊豆市修善寺は標高が200mしかなく発生もひと月以上遅い。


フタスジもそうだが、シュッとした印象でメリハリがあり、イヌロイスの中では見栄えがする種だ。


Sp11325
20130113静岡県伊豆市修善寺<標高230m>


>>>>>>>>>140111追記

20150110にこのポイントへ行ったところ、食樹として記録されている桜の木が殆ど伐採されてしまっていた。

はじめは随分老齢化した木が多かったので倒木の危険を避けるために伐採したのかと思ったが、若い木も

かなり伐採されていること、モミジだけは殆ど伐採されていないことを不思議に思い家に帰ってから調べてみた。


紅葉しない樹木を伐採し、紅葉する樹木を植樹、将来的には全体が紅葉が楽しめる公園にするためということだ。

この公園のそばには同じような紅葉の名所と言われる公園があるのだが・・・

公園の半分を伐採してまで公園全体を統一する必要はあったのだろうか疑問に思う。


この日、このポイントでシュゼンジフユシャクを見ることはなかった。

全国でこの近辺にしかいない、修善寺の名を冠した蛾の貴重な生息地がひとつ壊滅するということ。

伐採をした伊豆市にとってそれは「公園を紅葉する樹木で統一すること」より小さな問題なのだろう。

来年以降、どこかで生き延びていたこのポイントのシュゼンジフユシャクに再び出会えることを切に願う。

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Ssyuze
【成虫写真】20140112 静岡県伊東市<標高10m>

修善寺近辺だけではなく少し離れても生息はしているようだ。

詳しい分布域はわからないが、伊豆半島では広く生息している可能性もある。

広範囲に継続的な調査が必要と思う。


種小名はkobayasii(コバヤシイ)。小林秀紀氏にちなむ。


もちろん埼玉では記録されていない。

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