オナガミズアオ本土亜種
Actias gnoma gnoma (Butler, 1877)
【オオミズアオ】によく似ている種だ。
世間ではオオミズアオのパチモンみたいな扱いを受けているが、
僕はこのオナガミズアオの方により美しさを感じている。
一言で言えば「上品なオオミズアオ」である。
夏型の♂である。外横線が強く出ているのが夏型の特徴だ。
オオミズアオは夏型になると黄色味を帯びてきて若干汚らしく見えることが多い。
しかしオナガは鮮やかな蒼翠色を保ったままであることが多い。
同所で得られた♀。もちろん夏型である。
♀はオナガの特徴があまり出ていないので同定が難しいが、この個体はひと目でオナガとわかった。
しかし何故上品なのか。
僕は前縁部の紫色が半分白くなっているのが上品さを醸し出している一因ではないかと思う。
もちろん尾が長くスラっとして見えるのもあるだろう。
春型の♂である。
オナガは何故か透けてることが多い。鱗粉のノリが悪いのだろうか。
しかしこの透け透け具合がまた色っぽさと幽玄さを醸しだすのだ。
よく質問される事項として「オオミズアオとオナガミズアオの違い」が挙げられる。
ということでわかりやすいように解説図を作ってみた。
春型で作ったので、外横線の違いが記載されていないがなんとなくお分かりだろうか?
もちろん各項目に当てはまらない個体もあり、総合的な判断が必要だ。
また、触角の大きさ(上記比較画像ではオナガミズアオを大きくしてしまったのでわかりづらいが)に違いがあり、
オオミズアオの方が大きく見える。
【オオミズアオとオナガミズアオの♂触角比較(前翅長はほぼ同じ)】
色が顕著な個体を選んだ。オオミズアオの方が櫛が長く、触角全体の面積が広く感じる。
また、オナガミズアオは飛来してしばらく経つと前翅を閉じる。
特に地面に止まってしまうとこのように土下座スタイルとなる。このポーズをしていたら間違いなくオナガミズアオだ。
以前は
オナガミズアオ本州・九州亜種 A.gnoma gnoma
オナガミズアオ北海道亜種 A.gnoma mandschurica
オナガミズアオ伊豆諸島亜種 A.gnoma miyatai
というような具合で3つの亜種に分かれていた。
しかし標準図鑑では北海道亜種を原名亜種(本州・九州亜種)に含める という記述があった。
伊豆諸島亜種 miyatai はそのまま残るようだが、mandschurica は日本から消える事となった。
しかし、その図鑑には新しい本州・九州亜種の亜種和名が表記されていない。
言うなれば「本土亜種」であろうか。今回は亜種和名を省かせていただいた。
※20130904 ListMj 日本産蛾類総目録 [version 2]に「本土亜種」と記述がされていたのでそれを踏襲する。
春型は4月から、夏型はおおよそ7月から見ることができるが、高標高地では夏型を見たことがない。
ハンノキ属を食樹とするので、ハンノキ類がないとみることはできない。正午過ぎにハンノキを登って羽化しているのを何度も見かけている。
種小名はgnoma (グノ-マ)。 小人、妖精を意味するgnom を女性名詞化したものではないかと思う。
環境省のRDBでは準絶滅危惧(NT)に指定されている。埼玉では上記個体の採れたハンノキ林で有名な秋ヶ瀬の他、
旧大宮市、春日部市、川口市、戸田市、草加市、志木市、北本市、久喜市などの低地帯(おそらくは河川敷)
から日高市、横瀬町といった場所で記録があり、大宮台地の個体群は埼玉県RDBに指定されている。
僕自身は埼玉の最奥地、三国峠でも採集している。
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