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2013年6月

【0091】タカムクカレハ本州亜種
Cosmotriche lobulina takamukuana

マツやモミといった針葉樹食いのカレハガである。

僕自身は標高の高い所でしか見たことがないので、亜高山の蛾だと思っていたが

記録を見ると600mくらいでも採れているようだ。

確かに食樹的にはいても全くおかしくない。僕の探し方が悪いのだろう。


感じ的には【シーベルスシャチホコ】を寸詰まりにしてモフらせた印象である。

6~7月に出てくる初夏の蛾だ。

Stakamuku
【成虫♂写真】20130603 埼玉県秩父市三国峠<標高1700m>

埼玉での記録は西部に偏っており多くはないが、ここではたくさん飛んできた。

♀は灯りにこないようで極めてまれ、と図鑑に記載がある。

>>>>>>>>>20140804追記
ライトトラップに飛来した♀。

目の前にあったシラビソで発生していたのだろうか。
S
【成虫♀写真】20140719 山梨県山梨市<標高2230m>

触角が♂にくらべ細く、一見して♀とわかる。
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ちなみに日本産標準蛾類図鑑で本州亜種は
C. lobulina takamukui (Matsumura,1921)となっているのだが、他にそういった記述を見かけない。
C. lobulina takamukuana も(Matsumura,1921)であるため、その後変更がされたとは考えづらく誤記の可能性も考えられる。
出典がハッキリするまでここでは従来のC.takamukuana を使用する。

補足すると学名で~anaとなる場合形容詞となるので献名が多いようだ。
~i の場合は所有者の意味合いが強い。
ちなみにタカムクシャチホコはTakadonta takamukui Matsumura, 1920
同じ記載者で takamukui ・・・
亜種だから タイプ タカムク ってことで形容詞takamukuanaになってたのか・・・?
しかし同じ記載者のオキナワルリチラシ本土亜種は Eterusia aedea sugitanii
こっちはsugitanii・・・ 


>>>>>>>>>20140214追記
mothprog様よりtakamukuana で間違いないとの情報を頂きました。
ご教示いただいた新日本千虫図解. 巻之4 に 

たかむくかれは Selenephera takamukuana
の記述がありました。
昔はSelenepheraという属に分類され、独立種とされていたようです。
今でもSelenepheraで検索するとC.lobulina の画像が出てきます。

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種小名はloburina (ロブリナ)。ラテン語で「小葉」。

【0090】ミヤマゴマキリガ
Feralia sauberi

カラマツに依存した種である。

一見【ゴマケンモン】に似ているが、斑紋の違いの他にも色合いの違いなどから

さほど同定に困る種ではないように思う。

カラマツ依存ということで関東近辺ではある程度の標高がないと見られない種だ。

5月下旬から見ることが多いように思うが、図鑑では4月から出現と記載がある。僕が見ていないだけだろう。

緑地に白と黒の模様が美しく、見かけると写真を撮りたくなる蛾だ。

Sp60342911
20130603 埼玉県秩父市三国峠<標高1700m>
触角が櫛毛状の♂。

Sp603485233
20120602 群馬県片品村丸沼<標高1400m>

触角が糸状の♀。
ミヤマゴマキリガは♀もよく飛来してる印象がある。

以前は
Sugi(1968)によりFeralia montana という独立種として扱われていたが
Kononenko(1984)により大陸産の F. sauberi と同種とされ日本産の montana は日本亜種となった。
さらに上信山地のものは黒化が激しくF. sauberi pernigra という亜種として扱われていた。

しかし現在はRonkay&Ronkay(1995)によって二種はタイプ産地のsauberiと同種として扱い、上信山地の黒化は個体群の差として扱われるようになっている。※日本産蛾類標準図鑑より抜粋

-----140707追記
上に記した上信山地亜種とされていた個体群とは産地が違うが、黒味が非常に強い個体を撮影した。
富士山の個体群である。この地域の個体群は黒化が激しいと以前から知られていた。
ひとつの個体が黒いわけではなく、ここで飛来する個体群が黒い。出会ってみると確かに別種と思ってしまう。

上信山地(浅間山付近)と富士山、黒っぽい岩の多い溶岩帯でこういった色になるのだろうか?
10458670_580342802082928_4278625730
20140707 静岡県富士宮市<標高1950m>

標本画像
S

種小名はsauberi (サウベリ)。 ドイツ語でsauberが「清潔な」という意味があるようだ。

埼玉の記録は奥秩父のさらに奥地、普段人が立ち入らないような林道に限られる。

【0089】シロジマシャチホコ
Pheosia rimosa fusiformis

キングオブスタイリッシュ シロジマシャチホコ。

英語的におかしいが、僕の中でそう呼んでるとても美しいシャチホコガだ。

幼少の頃に図鑑で見てから、僕の憧れの蛾であった。


得てして僕は白黒の蛾が好きな傾向があるのだが、この種は群を抜いて美しいと感じる。

アクセント的に入った茶色がまた良いのだ。


シラカンバなどのカンバ類を食草としており、関東近辺ではかなり標高を上げないと見られない蛾である。

食草から1000m付近ならいてもよさそうだが、僕が見る限りは1500m付近にならないと見ていない。

感覚的には亜高山の蛾である。

S
【成虫♂写真】20100719 群馬県吾妻郡草津町大字草津白根国有林<標高2000m>

記念すべき初遭遇のシロジマシャチホコ♂である。

あまりにも興奮して「シッ・・・シロシロ・・」とどもってしまった覚えがある。

♂の触角は櫛毛状だ。


Sp6034285
【成虫♀写真】20130603 埼玉県秩父市三国峠<1700m>

♀は触角が目立たなくなってくる。

ちなみに埼玉ではここでしか記録がない。 

普段使いの道路だと標高1000mがやっとの埼玉県では仕方ないことなのかもしれない。

種小名はrimosa (リモ-サ)。ラテン語で「亀裂」の意。

白地に亀裂が入ったような模様からとったのではないだろうか。


以前はP. fusiformis という独立種であったが、近年北米のP.rimosa と同種とされfusiformis は亜種となった。

【0088】オナガミズアオ 本土亜種
Actias gnoma gnoma

【オオミズアオ本州以南亜種】によく似ている種だ。

世間ではオオミズアオのパチモンみたいな扱いを受けているが、

僕はこのオナガミズアオの方により美しさを感じている。

一言で言えば「上品なオオミズアオ」である。

Sp9021985
20080902 埼玉県さいたま市桜区<標高10m>
【成虫♂写真】夏型の♂である。外横線が強く出ているのが夏型の特徴だ。

オオミズアオは夏型になると黄色味を帯びてきて若干汚らしく見えることが多い。

しかしオナガは鮮やかな蒼翠色を保ったままであることが多い。


Sp9022013
【成虫♀写真】20080902 埼玉県さいたま市桜区<標高10m>

同所で得られた♀。もちろん夏型である。

♀はオナガの特徴があまり出ていないので同定が難しいが、この個体はひと目でオナガとわかった。

しかし何故上品なのか。

僕は前縁部の紫色が半分白くなっているのが上品さを醸し出している一因ではないかと思う。

もちろん尾が長くスラっとして見えるのもあるだろう。

Sp603431800
【成虫♂写真】20130603 埼玉県秩父市三国峠<1700m>

春型の♂である。

オナガは何故か透けてることが多い。鱗粉のノリが悪いのだろうか。

しかしこの透け透け具合がまた色っぽさと幽玄さを醸しだすのだ。


よく質問される事項として「オオミズアオとオナガミズアオの違い」が挙げられる。

ということでわかりやすいように解説図を作ってみた。

Sp6034343

春型で作ったので、外横線の違いが記載されていないがなんとなくお分かりだろうか?

もちろん各項目に当てはまらない個体もあり、総合的な判断が必要だ。

以前は
オナガミズアオ本州・九州亜種 Actias gnoma gnoma
オナガミズアオ北海道亜種 Actias gnoma mandschurica
オナガミズアオ伊豆諸島亜種 Actias gnoma miyatai

というような具合で3つの亜種に分かれていた。
しかし最新の図鑑では北海道亜種を原名亜種(本州・九州亜種)に含める という記述があった。
伊豆諸島亜種 miyatai はそのまま残るようだが、mandschurica は日本から消える事となった。

しかし、その図鑑には新しい本州・九州亜種の亜種和名が表記されていない。
言うなれば「本土亜種」であろうか。今回は亜種和名を省かせていただいた。

※20130904 ListMj 日本産蛾類総目録 [version 2]に「本土亜種」と記述がされていたのでそれを踏襲する。

春型は4月から、夏型はおおよそ7月から見ることができるが、高標高地では夏型を見たことがない。

ハンノキ属を食樹とするので、ハンノキ類がないとみることはできない。正午過ぎにハンノキを登って羽化しているのを何度も見かけている。


種小名はgnoma (グノ-マ)。 小人、妖精を意味するgnom を女性名詞化したものではないかと思う。

埼玉では上記個体の採れたハンノキ林で有名な秋ヶ瀬の他、旧大宮市、春日部市、川口市、戸田市、草加市、
志木市、北本市、久喜市などの低地帯(おそらくは河川敷)から日高市、横瀬町といった場所で記録があり、
大宮台地の個体群は埼玉県RDBに記載されている。

僕自身は埼玉の最奥地、三国峠でも採集している。

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