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2014年6月

【0135】ウンモンスズメ
Callambulyx tatarinovii gabyae

緑色の迷彩模様が美しく人気の高いスズメガである。

ケヤキを食草とするので、都市部でも見ることができる。

ケヤキ並木のそばのマンションの壁で静止しているのをよく見かける。


ウンモンスズメの雲紋とは何かと検索してみると、どこかで見たことのあるような模様である。

ただ、ウンモンスズメの模様とイメージが一致するかと言われると僕は疑問符がついてしまう。

この辺は時代と命名者のセンスによるものなので仕方ないのかもしれない。

しかし和的で趣きのある名前であることには違いなく、良い和名だと思っている。


Sunmon
【成虫♂写真】20140530 北佐久郡軽井沢町<標高1120m>

美しい緑色は標本にしてしばらくすると茶色に色褪せてしまう。


種小名は tatarinovii (タタリノウィー)。 うーむ。人名かな。けど検索には引っかからない。

同じつづりで菌類にも名前がついている。

タタール族という民族がいるらしいが・・・関係ないか。迷宮入り。


ウチスズメ亜科の特徴として口吻が退化しているというものがある。

ウンモンスズメもそれに倣い口吻を確認できず、摂食をしないスズメガであると思われる。

埼玉での記録は幅広く、県下全域で生息が確認されている。

【0134】アメイロホソキリガ
Lithophane remota

【ナカグロホソキリガ】とよく似た越冬キリガである。

飴色ということで色が薄茶褐色のキリガ。

1998年に記載されたばかりの新しい種だ。TINEA ,15(Supplement 1).1998.

現地で「これはアメイロ!」と断言できることは少ない。アメイロっぽいナカグロが存在するからだ。

怪しいのを採集して家に帰って写真と標本をよーく見比べて「うん、これはアメイロだな」と同定している。


Sameiro
【成虫写真】20140504 山梨県山梨市<標高1400m>


越冬前と越冬後では少し雰囲気が変わる。

越冬前は色が濃く、更にナカグロとの区別が困難になる。

Same
【成虫写真】20131014 埼玉県秩父市小品沢<標高900m>


差異点をナカグロの時も書いたが、いかんせん文字で表すだけではわかりづらい。

ということで差異点をまとめて比較画像を作ってみた。


Sp5043933
【成虫比較写真(越冬後)】上:ナカグロホソキリガ 下:アメイロホソキリガ

他にもアメイロは前翅の幅が狭いという特徴もある。

図鑑に記述されている相違点であるが、肩の部分の記述は僕の私見である。参考程度にして頂きたい。

新しい種のため、記録が少ないが埼玉にも生息している。

僕が知るかぎりは秩父市で記録されている。


種小名はremota< (レモト)=遠隔、辺鄙ななど。要は辺鄙なところにいるリトファネということか。


食草が未だ不明である。近縁種ナカグロホソキリガはサクラで飼育された記録があるが、

アメイロと分化する前の記録であるため、実際はどちらの幼虫かはっきりしていないようだ。


【0133】アズサキリガ
Pseudopanolis azusa

僕は焦っていた。今年もまたアズサキリガには逢えずじまいで終わるのかと。

4月の中旬から5月の中旬にかけて出現する春のキリガである。

その時期に仕事の都合、他種の採集、期待していた林道の通行止めも重なり採集へ行けていなかった。

時は5月下旬。周りで聞こえるアズサキリガ採集の報告も殆どなくなってきた頃だった。


(今年は既知産地ではもう採れない)


そう考えた僕は賭けに出た。

前々からモミやゴヨウマツが生育しており、プセウドパノリスがいるかもと目をつけていた高標高地での採集を決行した。


気温は12℃。点灯後30分、一匹の虫も飛んでこない。

1時間経過。ようやく【ミヤマカバキリガ】【マツキリガ】【シーベルスシャチホコ】などが飛来する。

違うんだ、お前たちじゃない。

でも飛来する蛾はアズサキリガのハイシーズンのそれだ。期待していいのか?

そもそもモミはたくさんあるのに【タカオキリガ】が飛んでこない。やっぱりだめか?


1時間半経過。時刻にして20時半を少し過ぎたあたりだったろうか。

半透明の幕の裏側に止まる蛾と目があった。蛾はこちらを向いており翅が見えない。


しかし、その木が折れた断面のような顔には見覚えがあった。


「タカオか!?」


近寄って確認する。見た瞬間わかった。タカオじゃない。


「アズサ!?アズサだろこれ!」

触角を念のため確認する。フッサフサである。

「アズサだあああ!!!!!」

S_2
【成虫♂写真】20140530吾妻郡嬬恋村<標高1880m>

僕は賭けに勝った。お世辞にも綺麗な個体とは言えない。翅頂がスレているのは肉眼でもわかった。

だが、確実に生息しているかわからないところで幕を張り、狙い通り目的種が飛来すると本当に嬉しい。

嬉しさのあまり比喩ではなくその場を転げまわった。傍から見たら通報モノの奇行であろう。

転げまわる僕のそばにもう一頭、アズサキリガが飛来した。

S_3
【成虫♀写真】20140530吾妻郡嬬恋村<標高1880m>

今度は♀である。しかも綺麗な個体だ。これを大勝利と言わずして何が大勝利だろうか。

この夜は僕にとって鮮烈な記憶となって残る夜となった。


北海道、本州中部での記録があるが同属タカオキリガと比べると極端に産地が限定されている。

標高に左右されない蛾のようだが、埼玉県での記録は今のところない。




種小名はazusa (アズサ)。梓川流域で初めて記録されたため、この名がある。

大和田守氏がタカオキリガを採集していた時、タカオキリガに似た触角の違う蛾が混じっていた、

それがこのアズサキリガの発見だったという逸話は有名である。
大和田守,1991.日本の珍しい蛾6 アズサキリガ.やどりが :146.

興味のある方はご一読いただくことをお勧めする。

【0132】ムクゲエダシャク
Lycia hirtaria parallelaria

白銀の前翅に目立つ櫛状の触角を持つ魅力的なエダシャクである。

春の短い時期にだけ発生する種で、北海道と本州の一部(山梨、長野、岩手)にのみ記録があるようだ。

生息域が狭いのか、中々見ることができない蛾のように思う。

少なくとも僕は今回が初見であった。


この時は【ウスシモフリトゲエダシャク】を狙っての遠征であったが、集まる蛾を見ると明らかに時期が過ぎていた。

標高を上げに上げた結果の場所でも似たような顔ぶれだった。

しかし最後にこのムクゲエダシャクが一頭だけ飛来してくれたおかげで、結果的に良い遠征となってくれた。

S
【成虫♂写真】20140503 南佐久郡川上村七森沢<標高1500m>

このモフモフ具合と渋目の前翅、大きな触角、さらに中々出会えないレア度。

個人的にはもう少し人気が出てもよさそうな種だと思っているのだが、検索で出るのはカバシタ~の方ばかりだ。

メスは翅が半透明になるようで、そちらも是非出逢いたいものだ。

種小名はhirtaria (ヒルタリア)。アイスランド語で hirtar=収穫 という意味があるようだが真偽はわからない。


埼玉での記録が未だにないが、密かに狙っている種でもある。

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