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【0157】マイマイガ本州・四国・九州亜種
Lymantria dispar japonica

7月の下旬から8月にかけて成虫となる蛾である。ここ数年大発生を繰り返しており、よく耳にすることが多い。

その様子はニュース等でも放映されているので、ご覧になった方も多いのではないだろうか。

そんなマイマイガの大発生に、今年は僕も悩まされることとなった。



といっても僕の居住地で大発生が起きたわけではない。

ライトトラップをするととんでもない量が飛来してしまい、採集ができなくなってしまうのだ。

勿論、大発生をしている地域の方の被害に比べればなんということはない。被害はゼロに等しい。

しかしこの大発生のおかげで僕の採集行はかなり制限を強いられた。

Smaimai2
【成虫写真】20140726 新潟県魚沼市上折立<標高820m>

点灯後一時間でこの有様だ。実はこの地域でマイマイガが大発生しているということを知らなかった。

それらしい布石は道中あったものの、ニュースで見るような感じでもなく壁にチョボチョボついてるくらいであった。

これくらいならまあ大丈夫だろうと安易な考えで幕を張ってしまった結果だ。

蛾の重みで幕がしなって倒壊の危険があったため、撤収せざるをえなくなってしまった。


これだけの数に囲まれるとさすがに健康に支障をきたすレベルである。

鱗粉アレルギーの僕はクシャミが止まらなかった。一時的な刺激で皮膚もかゆくなった。

数時間後には治まる一時的なものだ。一部報道にあるような「毒」はこの種にはない。



そこから1時間ほど車を走らせたところでは、大発生のニュースでよく見る光景が広がっていた。

その中でも僕が驚いたのはこの木だ。
Smaimai3
【成虫写真】20140726 新潟県魚沼市大湯温泉<標高280m>

下から上までマイマイガの♀でみっちりである。本当にj隙間なく埋め尽くされている。

マイマイガの♀は何かにぶつかるとそれを登っていく習性があるように思う。

ライトトラップ中にも僕の体を「登ってくる」ことが多々あった。幕でも上の方に溜まっていく個体がとても多かった。

この木も灯りに寄せられた♀がぶつかり、登って♂を待ち最後は産卵に至る、というような感じであった。

S_3
【成虫交尾写真】20140726 新潟県魚沼市大湯温泉<標高280m>
V地で交尾することが多いようだが、このような形で交尾をすることもある。茶色い方が♂である。


S
【成虫♂写真】20140726 新潟県魚沼市大湯温泉<標高280m>

♂は単体で見るととても可愛い部類にはいる蛾である。当ブログ記事萌え蛾特集 でも紹介するくらいのレベルだ。


S_2
【成虫♀写真】20140726 新潟県魚沼市大湯温泉<標高280m>

♀は一般的に大きい。が、大きさにはかなり変異があり小さいのも多く見られる。

右に見えるのは卵塊である。見たことがある方も多いかと思う。この中に卵がたくさん産みつけられており、

その外側を守るように鱗粉をすりつけてあるのだ。この卵塊にも毒はない。


種小名は dispar (ディスパル)。ラテン語で~とは異なる、ルーマニア語で姿を消す、スペイン語で異種。

記載者はLinnaeus(リンネエウス)。分類学の父と言われた Linné(リンネ)のラテン語名である。

ということでラテン語の「~とは異なる」という意であろうか。何と異なるのかはわからない。

>>>>>>>>>140106追記

学名の意味を調べていらっしゃるyyzz2さんより「(♂と♀で)違っている」の意味である、とご教示いただきました。

<<<<<<<<<<<<<<<<<<<


分類で紆余曲折ある種でもあり、ここ数十年の間に随分と変更されている。

簡単に僕がまとめ、mothprog氏に補足していただいたものを以下に掲載する。

長いので興味のない方は読み飛ばしていただいた方が良いかもしれない。


埼玉でも市街地から山地まで多数の記録があるド普通種である。

以下分類の要綱

Lymantria dispar and allies
★日本産蛾類大図鑑では以下の5亜種に分類されていた。
Lymantria dispar praeterea (マイマイガ北海道・ロシア東部亜種)
Lymantria dispar japonica (マイマイガ本州-九州亜種)
Lymantria dispar albescens (マイマイガ沖縄亜種)
Lymantria dispar postalba (マイマイガ種子島&屋久島亜種)
Lymantria dispar tsushimaensis (マイマイガ対馬亜種)

★Schintlmeiser(2004)の論文にて。
albescens が対馬・九州南部でjaponica と混生している為
albescens を独立種とした(シロシタマイマイ)
この時点では
Lymantria dispar japonica (マイマイガ本州-九州亜種)
Lymantria dispar dispar (マイマイガ名義タイプ亜種) ヨーロッパからロシア東部・北海道までを同一亜種に
Lymantria albescens (シロシタマイマイ)
Lymantria albescens albescens (シロシタマイマイ 奄美以南亜種)
Lymantria albescens postalba (シロシタマイマイ 種子島&屋久島亜種)本土産の扱いは明記されていないが暫定的にこの亜種とする
Lymantria albescens tsushimaensis (シロシタマイマイ 対馬亜種)


★Pouge&Schaefer(2007)の論文にて。
北海道(道南以外)とロシア東部の個体群を独立種とし、
北海道産に以前使われていたpraetereaumbosa のシノニムとした
と同時に
Lymantria albescens (シロシタマイマイ)から屋久島以北の個体群
Lymantria postalba (コシロシタマイマイ)を分離。亜種tsushimaensis は認めず、上記の2種には亜種が設置されなかった。 

この時点では4種に分離されている
Lymantria umbrosa (エゾマイマイ)
Lymantria dispar japonica (マイマイガ日本亜種)
Lymantria albescens (シロシタマイマイ)
Lymantria postalba (コシロシタマイマイ)

★標準図鑑での記述
Lymantria umbrosa (エゾマイマイ)のレクトタイプが函館の為
道東 道北を産地とする種というのはおかしい
praeterea はウスリーから記載されたもので、ロシア東部から北海道にかけて分布する集団ではなく、むしろヨーロッパの亜種に含まれる(名義タイプ亜種 L. dispar dispar のシノニム)。そのため、北海道産に用いる名前として、umbrosa より後に北海道集団に対しつけられたhokkaidoensis が採用された。
Lymantria postalba (コシロシタマイマイ)にはL.albescens (シロシタマイマイ)
との差異が認められない、亜種レベル。そのためにSchintlmeiser(2004)の扱いに戻す。

結果、日本では

Lymantria dispar japonica (マイマイガ 本州・四国・九州亜種)
Lymantria dispar hokkaidoensis (マイマイガ北海道亜種)

Lymantria albescens albescens (シロシタマイマイ 奄美以南亜種)
Lymantria albescens postalba (シロシタマイマイ 屋久島以北対馬以外亜種)
Lymantria albescens tsushimaensis (シロシタマイマイ 対馬亜種)

の2種5亜種に分類されている。(Dec,2014現在)

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コメント

どうもです。
dispar はリンネの『自然の体系』で,「♂の翅は灰色と黒のもやもや,♀の翅は黒斑のある白っぽい色」と記載されていることから,「(♂♀で)違っている」という意味だとされています。disparという種小名を持つ鱗翅は他にもいますが,性差を示す使い方が定番のようです。

yyzz2さん コメントありがとうございます。

「オスとメスが違っている」なるほどそう考えると確かにしっくりきますね。
貴重な情報ありがとうございました!

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