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2015年1月

【0178】ノコバフサヤガ
Anuga japonica

展翅してしまうと全く面白味がない蛾である。

生きている時の姿を見なくてはノコバフサヤガを見たとは言えないだろう。

それほどにインパクトのある外見である。


端的に言えば折れた枯れ枝に擬態しているのだが、そのクオリティが半端ではない。

よくぞここまで擬態したな、と褒めたくなる完成度である。


【ムラサキシャチホコ】と並び日本蛾界における擬態の代名詞的存在である。

Photo
【成虫写真】20130602埼玉県秩父市三国峠<標高1700m>

よくもまあこんな形になったもんだ。

しかしこの蛾の擬態はこれが完成系ではない。平面に止まった状態ではまだ7割程度なのだ。


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【成虫写真】20090711埼玉県秩父市

立体的に止まったその時、ノコバフサヤガの擬態は完成する。

まさに折れた枝そのものだ。この擬態を見るとやはり嬉しくなるものである。


カジカエデが食樹として記録されている。単一食のようだ。

7~8月と10月の2化で、10月に羽化した個体は越冬するというが僕は見たことがない。


種小名はjaponica (ヤポニカ)。日本の、という意味である。


埼玉では旧大滝村での記録しかないようだが、僕は長瀞付近でも採集している。

【0177】アオセダカシャチホコ
Euhampsonia splendida

黄色と黒褐色をあしらい、更に白で縁取った美しいシャチホコガの仲間だ。

セダカの名の通り、鶏冠が特徴的で数多に飛来する蛾の中では目立つ存在である。

同じ属で色違いの【セダカシャチホコ】よりはずいぶん小さく、一見して見分けがつくだろう。

同定に困る種ではないと思う。

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【成虫写真】20130602埼玉県秩父市中津川<表国600m>

以前はセダカシャチホコと共にRabtala 属(旧Lampronadata 属)に分類されていたが、

Schintlmeister & Lai(2001)により以前から近縁と見られていたEuhampsonia 属に移された。

Rabtala 属はシノニムとなり現在は使われていない。


種小名はsplendida (スプレンヂダ)。ラテン語で「明るい」の意。

セダカシャチホコより明るい黄色部分を評してのことだろうか。


春と夏の年二化で、食樹はブナ科で記録があるようだ。

埼玉でも記録が多いが、完全に県西部に偏っている。

【0176】モンウスギヌカギバ
Macrocilix maia

2014年1月、『鳥の糞に集まるハエが前翅に描かれている』ということで少し話題になった蛾である。

しかし、その画像を見ると同種ではあるものの日本産ではなくマレーシアのキナバル山産のM.maia であるようだ。

日本のものはハエの頭部分が非常に小さく、殆どハエには見えない。

亜種に分かれていても良さそうなくらいの違いが見て取れるのだが、今のところ亜種には分かれていない。

本種は東北地方を北限としてインド北部まで広く生息する蛾となっている。

アラカシを食樹とし、関東地方では比較的少ない蛾のように思う。

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【成虫写真】20090608東京都西多摩郡檜原村<標高400m>

以前はArgyris maia という種だったが、1976年にHollowayによってMacrocilix maia となった。

Argyris maia の模式産地がGensanとなっており、これは北朝鮮の元山市(ウォンサン市)のことだと

mothprogさんよりご教示いただいた。これを見ると北朝鮮のM.maia は日本のものに近い印象を受ける。

Macrocilix maia を画像検索すると、いろいろな地域のモンウスギヌカギバが見られる。

ざっと見ると南方の物ほどハエの頭が大きくなる傾向があるように思う。


種小名はmaia (マイア)。春を司る豊穣の女神マイアのことだと思われる。


埼玉では大滝村、横瀬町、寄居町での記録があるが、僕自身は埼玉では見たことがない。

【0175】ムラサキキンウワバ
Autographa buraetica

本州中部の亜高山帯に生息する種である。

【オオムラサキキンウワバ】に似ているが、一見してオオムラサキ~は前翅の比率が長細く大きい。

見た感じで普通のキンウワバより大きいため、実物を見るとわかりやすい。

紫が強く、美しい種であるため撮影されていることも多いようだ。

対して本種はなかなか見られない蛾なのか、ネット上には写真がほとんど見当たらない。

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【成虫写真】20130714 群馬県吾妻郡中之条町<標高2140m>

せっかくなので数少ないこの写真を活用して、図鑑に出ている特徴を確認してみようと思う。

”♂♀35~38mm内外.
翅先部では外横線外側と外縁部が明るく,
少し波打つ二重の外横線と太く黒い湾曲した亜外縁線が目立つ.
全体は紫というより茶褐色を帯びる
銀紋は小さく,普通はU紋と丸紋はつながる(ときに離れるものもある).

--中略--

日本では本州中部地方亜高山帯に生息する.
年1化で7月下旬に出現する.”

小林秀紀,2011.ムラサキキンウワバ.岸田泰則(編),日本産蛾類標準図鑑 2:279.学研教育出版,東京.

なるほど、写真を見ながら照らし合わせるとなんとなくわかる気がする。


オオムラサキ~の本州での出現期は5~6、8月となっていてズレがあるのだが、

この地では標高が高いからなのか7月にも良く飛来する。つまり同時に飛来することが多いのだ。

私見ではオオムラサキ~に比べて外横線の湾曲が激しく、内横線が後縁に向かうにつれ

基部へ大きく湾曲する個体が多い気がする。もう少したくさんの個体を見てみたい。

種小名は buraetica (ブラエチカ)。 buraetが固有名詞のようだが・・・ 追い切れない。地方名のような気がする。

タイプ産地がモンゴルなのでモンゴルに関係した地名由来なのかもしれない。


埼玉では未だに記録されていない。


【0174】ケンモンミドリキリガ
Daseochaeta viridis

コケに擬態したのであろう前翅がとても美しい種だ。

秋に出現し、寂しくなり始めた街灯の下を美しく彩ってくれる。

同じコケ擬態系ヤガの【ゴマケンモン】や【ミヤマゴマキリガ】に比べると淡い緑色である。

ヤマザクラやチドリノキを食樹としており、自然度の高い山間部でよく見られる。

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【成虫♂写真】20091024秩父市荒川久那<標高400m>

♂と♀では触角にかなり差が見られる。 言うまでもなく、♂のほうが発達している。

以前はミドリケンモンという名前で、僕が以前使っていた保育社の図鑑ではそちらの名前で掲載されていた。

おかげで今でもミドリケンモンと言ってしまう時がある。


このコケ擬態の前翅、実際に擬態するとどのくらいの威力なのか。

実際にその現場を見ることができた。

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【成虫写真】20111014群馬県片品村丸沼<標高1400m>

頭部がスレたところですら、木の一部のようである。見事な擬態だ。


種小名はviridis (ウィリディス)。ラテン語で緑の意味。そのままだ。


埼玉県では西側に記録が偏っているが、山地性というわけではなく平地でも記録がある。

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