クロフカバシャク Archiearis notha okanoi (Inoue, 1958)
環境省のRDBでは絶滅危惧II類(VU)に指定され、永らく記録が途絶えていた。
しかし2015年に青森で再発見され、一躍蛾屋の間で話題になった蛾である。
工藤 誠也, 工藤 忠,2017.東北地方におけるクロフカバシャクの再発見.やどりが (253):2-5 著者のブログ→青森の蝶たち
その後、長野で生息が確認され、新たに記録された。
四方 圭一郎・青木 由親・工藤 誠也,2016.長野県で発見されたクロフカバシャク(シャクガ科,カバシャク亜科).蛾類通信 (280):121-124
さらに秋田県でも記録されるなど
梅津一史,2017.クロフカバシャクを秋田県で採集 .誘蛾燈 (230):101
採れだすとどうやら既知の発生期より実は一か月ほど早いのではないかということがわかってきた。
兎にも角にもクロフカバシャクはここ数年蛾屋の心をざわつかせていたのだった。
僕もミーハー蛾屋のはしくれとして是非この手にそして写真におさめたいと思い、長野で発見されたという産地へ向かった。
まだ雪が残る山間部だが、この日は20℃に近い晴天。コンディションは良いと思われた。
到着して10分、視界の奥に目立つ飛翔体が舞う。
「あれか」
自分の短い竿では届かないところだったので見送った。しかし、どういうものかはわかった。
【カバシャク】を採集したことのある人ならわかるだろう。アレと同じである。
その後、5分も経たないうちに近くを横切る橙色の飛翔体。
ロックオンして落ち着いてネットを振る。
よし!!
なんとか一発で仕留めた。クロフカバシャクの名の通り、カバシャクより黒味が強い。
それは裏面にも表れていた。
黒部分が明らかに多い。似ているが差異点を抑えれば間違うことはないだろう。
さらに♂は触角の差異があり、同定に役立てることができる。
このような両櫛歯状の触角はクロフの特徴である。
場所を少し変える。
現場で落ち合う予定だった蛾類学会会長とA氏が先に到着していた。
二人ともひとつづつ採集したとのこと。その後三人で歩くが飛んでいるのは越冬明けの蝶ばかりだ。
長いこと何も採れない時間帯が続く。まだ盛期にはちょっと早かったのか… 少しダレてくる。
A氏がまたひとつ採ったようでニコニコしながら三角紙に入れている。
いいなぁ。。。
その直後、僕の目の前に橙色の飛翔体が舞い降りる。
どうやら吸水に来たようだ。
なんと二つ目はメスであった。またメスを採ってしまった。
僕をメスハンターにでもさせるつもりであろうか。
合計二個体を採集しこの日の採集行は終わった。少ないが成果がないよりは百倍マシである。
食餌はヤマナラシなどのヤナギ科。カバシャクのカバノキ科とはここでも違いがある。
種小名はnotha (ノーダ) いろいろな種の種小名に使われているようだがよくわからない。
現状では青森・秋田・岩手・長野でのみ記録されており、埼玉では記録がない。
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