ヒメアケビコノハ Eudocima phalonia (Linnaeus, [1763])
♂は【アケビコノハ】によく似ているが、♀はアケビコノハとは違い、木の葉状とは違う模様をしている。
後翅の黒い部分が広く、アケビコノハとは違うのがわかる。
北は北海道から広く散発的な記録があるようだが、関東近辺では定着していないようで毎年採集される種ではない。
国外では東南アジアをはじめオセアニア、アフリカなどにも生息し、相当に広い分布域を持つ種のようだ。
船の甲板上で採集されたこともあり、遠距離を移動して生息地を拡大しようとする種であることが伺える。
村田 浩平 ・ 土屋 守正・増島 宏明,, 2007.太平洋上を浮遊する昆虫類と島嶼の昆虫相に関する研究 : 昆虫類の島嶼間移動の可能性.,昆蟲(ニューシリーズ) 10(4), 75-87,
そんな関東では稀なヒメアケビコノハ、10月の記録が多い。
長距離を移動してきたにしては妙に綺麗である。羽化したてじゃないかと思えるくらいだ。
ここからは僕の仮説になるが・・・
ライトトラップ中に霧が通過すると大量の飛来があることは蛾屋なら経験しているかと思う。
このヒメアケビコノハも霧の中から数多の蛾と共に飛来してきた。
これはコウモリのエコーロケーションが減衰される霧や低層の雲に紛れて移動してきているのではないだろうか。
例えば梅雨前線と共にやってきた個体が山にぶつかったとき彼らはそこに降り立ち、新たな生息地にしようとしてそこで産卵し、秋に成虫となる。
冬は越すことができず、翌年同じ場所で採集されることはない…
こう考えると一見南方種に似つかわしくない山奥で10月に綺麗な個体が採集されることに説明がつく。
しかし夏の間に幼虫が採集されていないとこの説は立証できないのだが…
俗にいう偶産蛾とは、偶々飛ばされてきたのではなく貪欲な生息地拡大の一端を垣間見ているだけなのかもしれない。
種小名はphalonia(ファロニア)。よくわからなかった。
ファロニア島というのが地中海にあるようだけど、縁もゆかりもない。
埼玉での記録は三峰山と両神山の二例。1999年の両神山では多数の飛来があったという。
【成虫♀写真】20101003 埼玉県
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