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ホソアオバヤガ 
Actebia praecox flavomaculata (Graeser, [1889])

同属の【オオホソアオバヤガ】とは違い、淡い緑色と赤い斑紋が美しい種である。

 

ざっと調べてみても北海道から九州まで記録があるようで、特に局地的な分布を示すようなことは書かれていない。

 

埼玉でも旧浦和市、小鹿野町、横瀬町、旧大滝村で記録されている。平地から山地まで幅広く生息していることが伺える。

 

こんな感じなので、数こなしていれば採れそうな気もするが…

 

 

これがホントに全く採れないのである。

 

 

 

僕は蛾類のなかでもモンヤガ亜科には力を入れている(と自分では思っている)

 

ライトに飛来すればスルーするわけはないのだ。

 

図鑑で見ると美しい種である。僕との相性が悪いのか…と思っていたのだが。

 

 

ネットで検索しても「本州産」の画像が殆ど見当たらないのだ。出てくるのは北海道産ばかりである。

 

おそらく唯一、Digital Moths of Japanに今から20年前、1998年5月採集の標本が掲載されているだけだ。

 

 

重鎮の蛾屋さんは口を揃えて言う。「昔はそれなりに採れたんだがね。最近採れないねそういえば」

 

どうも察するに急激に数を減らしている蛾のようだ。

 

それもそのはず、先に改訂された山梨県 レッドデータブック2018にて、新たに準絶滅危惧種として掲載されてしまったのだ。

 

 

そんなホソアオバヤガだが、つい先日SNSを介した知人が本州産の画像をアップしていたのを発見した。

 

即時に連絡を入れると、わざわざ再度採集して頂いたうえに後程お渡ししますという返答を頂いた。

 

知人のご厚意で思いがけず本州産のホソアオバヤガが手に入ることになった。

 

有頂天の僕は、数日後に引き取る約束をしたのち別件で採集に向かったのだが…

 

 

 

なんとそこで採れてしまったのだ。今まで採れなかったホソアオバヤガが。

 

 

Photo
【成虫♀写真】20181012 山梨県

まさかの飛来である。確かに知人が採集したのだから時期なのだろう。

 

ただ、今まで何年も採れなかった蛾である。ふと立て続けに採れてしまうというのは何か要因があるのだろうか。

 

日本での寄主植物はハマエンドウが記録されている。属名のActebia(アクテビア)は浜辺に棲むもの、という意があるようで、

海外では砂丘地帯などに生息する蛾のようだ。

 

 

種小名はpraecox(プラエコックス)。 ラテン語では患者、という意があるようだが、

標準図鑑にはその薄緑が早春を思わせることから「早い季節」という意でつけられている、と記述されている。

 

 

夏眠する蛾のようで、越夏後はやはり斑紋が薄い。これは是が非とも越夏前の個体にお目にかかりたいものだ。

 

 

Photo_20200831223401 
【成虫♀写真】20200609 茨城県

 

と思っていたら採れてしまった。まさに羽化したてと言わんばかりのビカビカな個体である。

210522_20210523140301
【成虫♀写真】20210522 静岡県

越夏前の個体であるが、茨城の個体に比べるとスレている感がある。

が、拡大するとスレているわけではなく、元々こういう色味のようだ。個体変異が大きいのだろうか?雌雄差?

210522

上記の個体を拡大。鱗粉がスレている様子はない。

腎状紋が大きく、ふたつのハートが微笑んでいるように見える。

この蛾を見つけると恋愛運が上がる縁起の良い蛾…とかにはならないかな?

Photo_20210523224301
ホソアオバヤガ Actebia praecox flavomaculata female

茨城県 June 9,2020/Masahiro IIMORI leg.



後翅が黒い。しかしこれは極東の亜種である A.p.flavomaculata に固有のもので、ヨーロッパの亜種は白っぽくなる。

 

 

 

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