ムラサキウスモンヤガ 本州亜種 Cerastis leucographa fujisawai Kishida, 2021
北海道と本州中部(長野・岐阜・群馬・埼玉・山梨など)の極めて一部に生息する紫色が美しい春のモンヤガである。
本州産は濃い紫色をしており、2021年に新亜種とされた。岸田泰則,2021.ムラサキウスモンヤガの一新亜種の記載 TINEA26(1):4-5.
ここ数年、モンヤガに執心している僕は是が非とも墜としておきたい種のひとつであった。
4月の休日に既知産地に赴き幕を張ったのも一度や二度ではない。しかしその度に惨敗を重ねるのであった。
今年も例年のように幕を張った。しかし来るのは【コウスチャヤガ】や【カブラヤガ】だけであった。
今年もダメかぁ…と諦めてかけていたところ、4月下旬になり同地で採集したという報が入ってきた。
即座に行動に移した。仕事を早退し、現地へ向かう。行く道すがらは土砂降りに祟られ幸先が悪い。
現地に到着、雨は止んでいたが道路は濡れている。幕を張るポイントを選定しながら車を流していると一台の車とすれ違った。
あっ、今の車は… と引き返す。昨年にムラサキウスモンを墜としている強力蛾屋のAくんだった。
やはり彼も来ていた。お互い採れると良いですね、と言葉を交わし各々幕を張る。
気温は5℃くらいであったろうか。点灯後、蛾が来ない。本当に来ない。2時間経過してミヤマカバ・トビモンオオエダ、エグリヅマ。
まぁ大体この時期ここはこんなもんなのだが、心は折れそうになる。
20時を過ぎたころ、Aくんから飛来したと連絡。悔しいのはさておき、とりあえずこの気温この条件でも飛来することは間違いなさそう。
期待を持つが飛来しない。
21時が近くなったころ、小さいヤガが飛来しブンブンまとわりついている。
僕の勘が叫ぶ。来た!!!!!!これだ!!!!!!!!
僕の勘は正しかった。ようやくムラサキウスモンヤガを墜とすことができた。
結局この日は1♂を採集するに留まったが、また来年チャレンジしてみようと思う。
なお、この個体はC. l. fujisawaiのパラタイプに指定していただいた。
種小名は leucographa(レウコグラファ) leucoは白い、graphaは描くとかそういう意味なのだろうか。
白を描く者、とかそんな意味?
ヨーロッパではオオバコやタンポポ、ヤナギなどを寄主植物としているようだ。
埼玉県でも一例、三国峠での記録がある。
ムラサキウスモンヤガ 北海道亜種 Cerastis leucographa leucographa (Denis & Schiffermüller, 1775)
亜種ということで同記事に配してみる。北海道で採れたムラサキウスモンヤガだ。
幕に飛来するより同行したSくんのネットによって採れる個体の方が多かった。僕のライトに飛来したのは5程度だったが、
Sくんは20ほどネットインさせていた。
確かに本州産とは明らかに色味が違う。これは同種と思えない。
ここで採れたムラサキウスモンヤガはすべてこのような色味であった。
なお、北海道産はヨーロッパの名義タイプ亜種に含まれている。
北海道産・本州産にも和名の〇〇亜種というものは先述の記載論文には記されていない。
本ブログでは便宜的な亜種名を使うこととした。
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