エゾサクラケンモン Acronicta strigosa (Denis & Schiffermüller, 1775)
「エゾ」と名の付く蛾は多く、50種以上が知られている。しかしその中で「蝦夷地=北海道」特産の種は意外と多くない。
エゾサクラケンモンはそんな真正エゾ蛾のひとつである。
情報が少なく、標準図鑑にもロシア産の標本が使われており、国内ではまれとの記述がある。
6月末、道東の湿地で灯りをつけたが、本命はモンヤガ。
正直採れるとも思ってなかった。どんな蛾かもよくわかってなかった。
エゾサクラケンモン、というくらいだからサクラケンモンに似てるんだろう、来たとしてもわかるかな、くらいの気持ちだった。
灯りには【ヒメウチスズメ】や【エゾコエビガラスズメ】など北海道特産の蛾が来ていた。それだけで北ビギナーの僕は満足していた。
21時を過ぎた頃だろうか。小さな蛾が飛来していた。幕には止まらず忙しなく地面をちょこちょこ歩いている。
(なんだろう、コヤガみたいな…)
小さくて薄い印象のその蛾は老眼の進んだ僕にはケンモンヤガに見えなかった。
(とりあえず見たことない蛾ではあるな)
写真に撮って画像を確認する。
(これケンモンヤガ…だよな なにこれ…)
そこで思い出した。
「え、エゾサクラ!?」
声に出ていた。
もっとサクラケンモンと似ているのかと思っていたが… そうは見えなかった。これは違う蛾である。
特に前翅基部附近や腎状紋が黄色みを帯びることは識別点として書かれているが、それ以前に印象が別物である。
【サクラケンモン】が翌日採れたので比較してみた。(といっても裏面だけだが)
左がサクラケンモン、右がエゾサクラケンモンである。大きさが一見して違う。
エゾは前翅形が丸みを帯び、裏面にも横線がハッキリ出るようだが数を見ていないので有効な識別点かどうかはわからない。
種小名はstrigosa (ストリゴーサ)。 痩せた、貧弱な、 という意味があるようだ。
確かに他種と比較するとそういった印象がある。前述しているが、薄くて弱々しく、一見ケンモンヤガに見えなかったのだ。
日本における寄主植物は未知だが、ヨーロッパでは多種の樹木が記録されている。
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