シャクガ科 フユシャク亜科

【0120】フタスジフユシャク
Inurois asahinai

11月から山間部で見られるフユシャクである。

イヌロイス属の中では早くに出現し、発生期は他のイヌロイスに比べると短い印象だ。

【シュゼンジフユシャク】によく似ており、外見での差異はあまり見られない。

強いて言うなら外横線が最後までキッチリ直線的なことだろうか。

僕の印象では全体的にシュゼンジよりも黒っぽい感じを受ける。

Sfutasuji
【成虫♂写真】20131110 群馬県吾妻郡嬬恋村鎌原<標高1220m>

シュゼンジを除く他のイヌロイスとはパッと見の印象で違うことがわかるはずだ。

直線的な外横線は他種と一線を画している。

♀は未見である。


埼玉では小川町で1月の記録がある。しかし発生時期と標高から考えてもフタスジだとは考えにくい。

実際に僕も現地で探してみたがウスバしか確認できなかった。一度標本を確認する必要があるだろう。


その他は記録がないようだが、奥秩父で数回死骸を見ている。

おそらく安定して発生していると思われる。

【0074】スジモンフユシャク
Alsophiloides acroama

モミに依存したフユシャクである。

よってモミがないと生息しておらず、おのずと生息場所には限りがある。

よく考えると普段の生活圏内にはモミなんてなかなか生えていないものだ。

あっても神社や公園に一本二本。流石にそれでは生息は難しい。


というわけでこのフユシャクに会う為にはモミが多少まとまって生育しているところに行かなくてはいけない。

モミは元来、山の稜線付近に生えている樹木なのでおのずとそういったところへ赴く。


車がなかなか入っていけない場所だ。徒歩で行かなくてはいけない。

このクソ寒い2月に夜の山の中へ入っていくのである。

何の罰ゲームなんだと言いたくなるが仕方がない。

しかしそんな罰ゲーム?を乗り越えた者にだけ、その姿を魅せてくれるのだ。

S
20130226神奈川県愛甲郡清川村<標高562m>

アルソフィラに近いが前翅の形がかなり丸みを帯びている。

とても渋くて味わい深い蛾だ。

Ssujimon
20130226神奈川県愛甲郡清川村<標高562m>

同所で見つけた♀。全くの無翅だ。

アルソフィラやイヌロイスに見られる尾端の毛はこの種にはない。


S_2
20130226神奈川県愛甲郡清川村<標高562m>

交尾画像。初めて見た日に♂♀交尾の画像を撮ることができた。

これはとんでもなくラッキーなことだと思う。

次は埼玉でこの姿を拝んでみたい。


memo.....
シャクガ科 フユシャク亜科に分類されています。
僕はこの一回だけなので2月にしか見たことはありません。
埼玉での記録は「浦和市」の一件だけです。(ホントかよ・・・)

【0062】シュゼンジフユシャク
Inurois kobayashii

現在のところ、伊豆市修善寺周辺のみで確認されている種である。

発生時期が極めて短い事が多く、少しでも時期がずれると何時間も何千円もかけて蜘蛛の巣にかかった死骸を見に行くことになる。

4週連続で週末遠征しても出会えない年すらあったほどだ。


それだけにタイミングよく会えた時の感動はひとしおである。

一見、【フタスジフユシャク】にそっくりなのだが、よく見ると外横線が若干前縁近く(M1付近)で角ばる傾向がある。

加えてフタスジが本州で800m級の山地で11月に発生するのに対し、シュゼンジが生息する伊豆市修善寺は標高が200mしかなく発生もひと月以上遅い。


フタスジもそうだが、シュッとした印象でメリハリがあり、イヌロイスの中では見栄えがする種だ。


Sp11325
20130113静岡県伊豆市修善寺<標高230m>


>>>>>>>>>140111追記

20150110にこのポイントへ行ったところ、食樹として記録されている桜の木が殆ど伐採されてしまっていた。

はじめは随分老齢化した木が多かったので倒木の危険を避けるために伐採したのかと思ったが、若い木も

かなり伐採されていること、モミジだけは殆ど伐採されていないことを不思議に思い家に帰ってから調べてみた。


紅葉しない樹木を伐採し、紅葉する樹木を植樹、将来的には全体が紅葉が楽しめる公園にするためということだ。

この公園のそばには同じような紅葉の名所と言われる公園があるのだが・・・

公園の半分を伐採してまで公園全体を統一する必要はあったのだろうか疑問に思う。


この日、このポイントでシュゼンジフユシャクを見ることはなかった。

全国でこの近辺にしかいない、修善寺の名を冠した蛾の貴重な生息地がひとつ壊滅するということ。

伐採をした伊豆市にとってそれは「公園を紅葉する樹木で統一すること」より小さな問題なのだろう。

来年以降、どこかで生き延びていたこのポイントのシュゼンジフユシャクに再び出会えることを切に願う。

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Ssyuze
【成虫写真】20140112 静岡県伊東市<標高10m>

修善寺近辺だけではなく少し離れても生息はしているようだ。

詳しい分布域はわからないが、伊豆半島では広く生息している可能性もある。

広範囲に継続的な調査が必要と思う。


種小名はkobayasii(コバヤシイ)。小林秀紀氏にちなむ。


もちろん埼玉では記録されていない。

【0043】ホソウスバフユシャク
Inurois tenuis

フユシャク亜科の中で最も遅くに出現するホソウスバフユシャク。

関東平地だと2月下旬から3月、寒冷地だと4月、場所によっては5月まで見ることができる。

この種が出てきたら冬はもう終わり間近。春はそこまで来ている。


イヌロイスはお互いよく似ているが、関東で普段良く見られる他のイヌロイスに比べ一回り小さい。

斑紋が薄く、内横線が3の字になっているのが特徴的。

外横線がギザついているのも同定ポイントである。

Sp4083500
20120407埼玉県秩父市川又<標高710m>

様々な落葉樹を食樹としており、普遍的に見ることができる。

種小名は tenuis(テヌイス)。ラテン語で「薄い」。 もうそのままである。


埼玉での報告は多いが、東側に偏っている。


【0013】シロオビフユシャク
Alsophila japonensis

アルソフィラ属のなかで一番繁栄しているであろう種。

山地にも平地にも普通に見られ、個体数も多い。

ユキムカエやクロオビと似ているが白い外横線の外縁付近が同定のポイントとなっている。

山地では11月から出現する。

平地の僕のフィールドでは

12月中旬からユキムカエ→→→シロオビ→→→クロバネ

という出現の順序になっており、季節は移ろいで行く。

シロオビはどちらとも出現時期が重なるのだ。

S
【成虫♂写真】20100111埼玉県川口市西立野<標高5m>

平地型と山型で色に濃淡があり山の方が濃い。翅形も違う気がする。

S_2
【成虫♂写真】20111205埼玉県秩父市豆焼橋付近<標高1000m>

メスは未見。というか探そうともしてない。今後の課題だ。

かなりの広い食性をもち、9科34種が今までに記録されている。

種小名は japonensis(ヤポネンシス)。日本の、という意味だ。

埼玉では県下全域で記録されている。

【0012】ウスモンフユシャク
Inurois fumosa

フユシャク亜科のトップバッターとして山間部では11月頃から出始める。

その名のとおり、イヌロイスの中では最も模様が薄い。

種小名 fumosa(フモサ)もラテン語で「煤けた」という意味だ。

それが止まり方と相まって高級なミンクのコートを連想させる。

これが出てくると続々他のフユシャク亜科が出てくる。

いよいよフユシャクシーズンの到来ということを告げてくれる蛾である。

S
【成虫♂写真】20111125埼玉県秩父市豆焼橋付近<標高1000m>

外横線が最後カクっとなるのはクロテンとウスモンに共通する特徴。

ウスモンは羽が広いのも同定ポイントだ。


イヌロイスのメスは単体で歩いていたら種などわからない。

オスと交尾をしているところを見て、初めて種が確認できる。


>>>>>>>>>20140119追記&交尾画像差し替え
イマイチだった交尾画像を撮り直した。
あと♀を単体で撮影していなかったので改めて撮影してみた。
Shpea
【成虫交尾写真】20140118 静岡県伊豆市<標高345m>
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イヌロイスのメスは単体で歩いていたら種などわからない。

オスと交尾をしているところを見て、初めて種が確認できる。


ウスモンの♀は他のイヌロイスに見られない特徴として「尾端の毛に葉片状の鱗粉が混じる」との記述がある。

が、写真ではよくわからなかった。

Sp1192541
【成虫♀写真】20140118 静岡県伊豆市<標高345m>

低標高地では2月くらいまで見ることができる。食樹は幅広く様々な樹木が記録されている。

埼玉での記録は3件だが(入間市、三峰、狭山湖)幅広く生息している印象がある。

以下記録

Spc052580
【成虫♂写真】20111205埼玉県秩父市豆焼橋付近<標高1000m>
Spb225357
【成虫交尾写真】20081122栃木県日光市<標高1490m>

【0005】ユキムカエフユシャク
Alsophila inouei

漢字で書くと雪迎冬尺。1989年に記載された比較的新しい種である。
中島秀雄,1989.日本産フユシャクガAlsophilaの1新種.蛾類通信156:83-85.

すごく風流な名前のこのフユシャク、僕がフユシャクに興味を持ってからの憧れだった。

標高が高めの山地で発生、という図鑑の記述があったので高嶺の花だと思っていたのだが・・・

灯台下暗しとはこのこと。すぐ近所にいた。我が家から車で30分もかからない。


そんなだから、最初はシロオビフユシャクだと思い込んでしまった。

知人の指摘など色々あってユキムカエと判明した。

この一件で僕は図鑑に記載してあることももしかしたら・・・と疑ってかかるようになった。


一番最新の図鑑でも「関東地方周辺では700-1000mの山地に発生」と記載がある。

しかし、関東の平地にも確実に生息している。


Spc2328451
【成虫♂写真】20111223埼玉県さいたま市桜区<標高5m>

関東平地のオス。山地産に比べて黒味が弱い傾向がある気がする。

Spc232863
【成虫♀写真】20111223埼玉県さいたま市桜区<標高5m>

同所で出会ったメス。


Sp1012896
【成虫交尾写真】20111223埼玉県さいたま市桜区<標高5m>にて捕獲した個体

いつまで経っても交尾しないので、持って帰ってカップリング。19時頃。

Spc232867
【成虫♀写真】20111223埼玉県さいたま市桜区<標高5m>

産卵後の♀は腹部が縮んでしまう。


S
【成虫♂写真】20101127山梨県山梨市三富川浦<標高1100m>

関東の山地では11月、平地では12月の中旬から下旬にかけて出現する。

ヤマハンノキ、ハンノキを食草としているので、大きいハンノキ林があったら生息している可能性がある。

近くにハンノキ林がある方は是非チェックしていただきたいと思う。


種小名はinouei(イノウエイ)。言わずと知れた日本蛾界の大家、井上寛氏への献名である。

尚、平地産ユキムカエフユシャクの報告は「誘蛾燈」に報告があった。杉山徹朗,2000.埼玉県秋ケ瀬公園で得たフユシャク2種.誘蛾燈159:36


埼玉での記録はこの平地産だけである。

【0004】クロバネフユシャク
Alsophila foedata

全国的には生息しておらず、関東近辺にしかいない種だ。

しかし関東ではドがつくほどの普通種で、時期に食樹のクヌギコナラがある場所を探せば出会うことは難しくない。


【シロオビフユシャク】に似ているが少し小さくて白線が細い。

前縁部が少し反っているのも特徴的だ。


Sp1142994
【成虫♂写真】20120114埼玉県ときがわ町大字日影<標高184m>

メスはまだ未見。
>>>>>>>>>20130122追記
フユシャク探しをしていたら擬木の柵で見つけた。

アルソフィラのメスは互いに似ているが、尾端の毛が黒いのが特徴。
S
【成虫♀写真】20130121埼玉県朝霞市岡<標高10m>
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12月後半から2月にかけて見られる。

種小名はfoedata(フォエダータ)。ラテン語で「汚さ」。気持ちはわかる。


埼玉の記録は旧浦和市と入間市の2件となっているが、県南東部では広く確認している。

【0003】クロテンフユシャク
Inurois membranaria

【ウスバフユシャク】に似たフユシャクの仲間である。

ウスバに比べて翅色が黄色っぽく、外横線が最後にカクってなってるのが特徴的だ。

「クロテン」の由来である黒点も他種より目立つことが多い。

イヌロイスはこれだけ見てもまだ怪しいのが多いのだが、クロテンだけはすぐわかるようになってきた。

様々な樹木が植樹として記録されているが、クヌギやコナラのある雑木林でよく見かける。

Sp1142992
【成虫♂写真】20120114埼玉県ときがわ町大字日影<標高184m>.

メスはそういえばまだ未見。

>>>>>>>>>20130220追記
フユシャク探索をしていて見つけた交尾ペア。この日は2ペア見つかった。

撮影時刻は0時過ぎ。
S_2
【成虫交尾写真】20130219埼玉県朝霞市岡<標高25m>

上記個体が分離した後の♀を単独撮影。

イヌロイス♀は似ていて単独では判別が難しい。
S
【成虫♀写真】20130219埼玉県朝霞市岡<標高25m>
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埼玉では山地で11月から出現(初冬型)。一旦終息した後に3月ごろからまた出現する(晩冬型)。

平地では1月ごろから出現する。

現在、この初冬型と晩冬型が研究により2種に分かれる手前の段階という話だが・・・ 平地産はその中間らしい。

種小名はmembranaria(メンブラナリア)。membranaはラテン語で「膜」。薄い翅を評しての命名と思う。

埼玉での記録は旧浦和市、入間市、長瀞町、皆野町の4カ所だが、僕自身は広い範囲で確認している。

埼玉は冬蛾の記録が少ない。今まであまり注視されてこなかったのだろう。

以下記録

Spc052568
20111205埼玉県秩父市豆焼橋付近<標高1000m> 
Sp2183314
20120218埼玉県狭山市稲荷山<標高95m>                

【0002】ウスバフユシャク
Inurois fletcheri

成虫が冬にだけ活動するフユシャクの仲間。

そんなフユシャクの中で一番目にするのはこのウスバフユシャクだと思う。

僕が交尾を見た初めてのフユシャクでもある。

1月の日没後、桜並木を車で走るとヘッドライトにチラチラ舞う蛾が照らされる。

大概はこのウスバフユシャクの♂だ。

いろんなバリエーションがあって面白いが、おかげで同定に困ることもしばしばある。


Sp1142985
【成虫♂写真】20120114埼玉県小川町栗山 <標高280m>

その辺の公園でもよく観察できる。関東平地だと12~2月くらいだろうか。

近所で「花見の名所」とされてるところがあったらそこは「ウスバフユシャクの名所」でもある。

花見のシーズン前に夜の公園で真冬の恋物語を観察するのも一興だ。

寒冷地だと11月の半ばごろに発生している。

Sp2136908
【成虫♀写真】20110213埼玉県川口市差間<標高5m>

メス。羽がなくて単体だとなかなか見つからない。

>>>>>>>>>20130220追記

コーリング中の♀を発見したのでアップ。

尾端から生殖器をだし、性フェロモンを放出。♂を呼んでいる真っ最中だ。
S_3
【成虫♀写真】20110219埼玉県川口市差間<標高5m>
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Sp2136904
【成虫交尾写真】20110213埼玉県川口市差間<標高5m>

交尾中。偽木の杭で発見。サクラのそばにある杭を探すとよく見つかる

ピーク時にはひとつの杭に3ペアとか張り付いてる。ラブホ状態だ。

交尾は日没後、大体19時頃に見ることが多い。


種小名はfletcheri(フレトゥケリ)。フレッチャーという人への献名だと思う。軽く検索した程度ではわからなかった。


埼玉でも多くの記録があるだろうと思いきや6カ所しか記録されてない。

記録してないだけだろう。奥秩父では12月初旬に発生を確認している。(2012)

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