シャチホコガ科 ウチキシャチホコ亜科

【0189】アカシャチホコ
Gangaridopsis citrina

関東ではあまりお目にかかれない美しいシャチホコガである。

その姿は規則的な白点をアクセントに後翅まで橙がかっており、

見た者を一瞬にして虜にしてしまう魔力を持っている。


出現期は5~6月と8~9月の2化。期間は長いようだ。

食樹がマンサクのみという偏食家なので、遭遇率が低いものと思われる。


美しくレア。蛾をやっている人にはたまらない種類である。

S
【成虫写真】20160428 群馬県安中市松井田町坂本<標高600m>

この日は雨の後に風が強いうえ寒く、コンディションとしては最悪であった。

ライトトラップも街灯廻りもろくな成果もなかったのだが、終盤で一発逆転の遭遇であった。


種小名は citrina (キトリナ)。 ラテン語では黄色、イタリア語他でレモン色の意味がある。

んー そういう色じゃないよなぁ・・・ もっと橙的なのでよかったんじゃないのかなぁ・・・

citrinaは【ウコンエダシャク】などの色に近い気がする。


埼玉での記録は三峰山と志賀坂峠の2例。やはりなかなか出会えるシロモノではなさそうだ。

次は埼玉産を狙ってみたい。

【0185】コクシエグリシャチホコ
Odontosia marumoi

本州の極一部、飛騨、八ヶ岳、秩父山地、日光山地の高標高部にのみ生息するという蛾である。

ダケカンバを食樹とするため、ダケカンバが自生する場所に生息地域が限られているものと思われる。

発生も梅雨時期の初夏に限られ、採集のタイミングを逃しやすいこともあり得にくい蛾である。

岐阜の有名産地では多産するようだが、他の産地ではあまり得られていなかった。


数年前、ネット上に公開されている文献を読み漁っていたところ、この地域での記録があることがわかった。

しかし、採集地は2000m付近となっており車を横づけして採集できるような場所ではなかった。
群馬県立自然史博物館,2013.日光白根山・錫ヶ岳周辺(第1年).良好な自然環境を有する地域学術調査報告書:55-67.

ただ、ダケカンバの分布は国道沿いでも確認していたため、コクシエグリの生息が見込めるのではないかと思っていた。

読みは当たった。最初のトライから数年を要したが、国道沿いで採集することができた。

S
【成虫♂写真】20150613 群馬県片品村<標高1630m>

蛾をよく見てる方は【シーベルスシャチホコ】じゃないのか?と思われるかもしれない。

確かにシーベルスシャチホコは個体変異が多く、上に添付した画像のような個体がいてもおかしくない。

発生時期の違いもあるが、シーベルスとの決定的な差異点は触角だ。

コクシエグリは♂でも触角がシーベルスのように発達しないのだ。シーベルスの♀よりは発達するが♂よりは発達しない。

まあコクシエグリが出るころにはシーベルスはもう姿を消しているので、実際に迷うことはないと思われる。

しかし、シーベルス以外にも Odontosia 属で似た種類がおり、そちらとの分類では紆余曲折あったようだ。
従来キテンエグリシャチホコとされていたものが現在コクシエグリシャチホコと【ホッカイエグリシャチホコ】に分かれている。
細かい分類の歴史を調べてみたが、とても手に負えない。いつの日か解明できたらまた追記しようと思う。


標準図鑑には

最初に1940年7月2日奥秩父山地国師岳で得られ(澤田秀三郎採集),
丸毛信勝によりO. carmelita Esper,1799と同定されコクシエグリシャチホコと称された.

小林秀紀,2011.コクシエグリシャチホコ.岸田泰則(編),日本産蛾類標準図鑑 2:121.学研教育出版,東京.
とあるが、その原文を漁ってみると

 Odontosia carmelita ESPER .コクシエグリシヤチホコ
昭和5年7月2日山梨縣國師岳にて澤田秀三郎氏1 對を採集したり。
丸毛信勝.1933.日本産シヤチホコガの1新種及び1未録種 昆蟲6:293

となっている。報文自体が1933(昭和8年)に発行されているので、これは1930年7月2日の誤りと思われる。


種小名はmarumoi (マルモイ)。上記の最初に報告した丸毛信勝氏のことであろう。


埼玉での記録があるという話もチラと聞いたが、埼玉県昆虫誌や寄せ蛾記、蛾類通信、誘蛾燈、蝶と蛾、やどりがには報告を見つけられなかった。

【0136】タッタカモクメシャチホコ
Kamalia tattakana

タッタカモクメシャチホコ。 口に出すとリズミカルな和名である。

とっとこハム○郎を彷彿とさせる語呂の良さは記憶に残りやすく、ある意味有名なシャチホコガだ。

勿論このタッタカというのは語呂を意識したわけではない。

種小名tattakaana (タッタカアナ)にもあるように台湾の立鷹峰に由来するようだ。


名前のインパクトも強いが、実際に出会った時のインパクトもまた強い。



大きく、美しい。



恋い焦がれていた蛾のひとつではあったが、西日本を主な生息域としており関東では殆ど記録がない。

勿論埼玉の記録などない。

出会えるのは当分先のことだろうと半ば諦めていた蛾であった。

しかし状況が一変した。

Facebookを通じて知り合ったSさんが関東で撮影していたのだ。

即座に僕は行動に移した。


仕事帰りに高速を飛ばし、厚かましくも現地を案内していただいた。


土砂降りには祟られたが、お陰様で結果4頭の飛来を見ることができた。

Stattaka
【成虫写真】20140622 撮影地非公表<標高430m>

おそらくは新産地である。報告されるとの事なので僕の方では非公表、とさせて頂くことをご承知願いたい。

実際に出会ったタッタカモクメの第一印象は 「 デ カ イ ! 」 の一言だった。

【オオモクメシャチホコ】くらいを想定していた僕の期待を良い意味で裏切ってくれた。


そして美しい。白地に黒模様の蛾マニアの皆さんは見なくてはいけない蛾だろう。

タッタカの特徴のひとつ、濃淡のある内横線の黒帯が特に素晴らしく、見入ってしまう。

尾端付近の○印も面白い。

3頭を採集し、この夜は幕を下ろした。

先日のアズサに続き、この日も忘れられない夜となったのだった。



この一帯では珍しい種ではないようで、多数の飛来があるとSさんは言う。

食樹イイギリの生息域で調査すればもっと記録は増えるのかもしれない。

現在のところ宮城県が最北記録だったと記憶している。

Sさんの話ではイイギリの北限もそのあたりなのだそうだ。




今回このタッタカモクメシャチホコ捜索に快く応じていただいたSさんには本当に感謝しきりです。

この場を借りてお礼申し上げます。

【0130】アオバシャチホコ
Zaranga permagna

春を迎えてしばらく経つと、数多の蛾たちが一斉に羽化をはじめ、寂しかった外灯下にも活気が戻ってくる。

そんな外灯下で一際異彩を放ち、蛾を探している人たちの眼に留まることが多い種だ。


一見真っ黒でデカめの蛾。しかし写真に撮ってみると印象が一変する。

モフモフ具合も然ることながら、真っ黒と思われた翅色が実は黄色がアクセントに入った深碧。

撮った画像を確認した瞬間、「えっ?」と現物を二度見してしまうくらいだ。

S_2
【成虫写真】20140504埼玉県飯能市坂石町分<標高180m>

冒頭に春と書いたが実は夏にも発生する年二化の蛾である。

夏は更に数多の蛾が出てくるのに加え、春にも見てることが多いためスルーされがちになってしまう。

春先だからこそ眼が向くことの多い蛾なのかもしれない。




ミズキの類を食草としているようで、ヤマボウシなどでも記録があるという。



種小名はpermagna (ペルマグナ)。 ラテン語で素晴らしいの意。最大級の賛辞を受けた種である。



埼玉での記録は西側に偏っているようで秩父市のほか、小鹿野町や皆野町、小川町、横瀬町などで記録されている。(あれ?飯能市ははいってなかった)

【0111】ムラサキシャチホコ
Uropyia meticulodina

日本蛾界における擬態の王とでも言うべき種ではないだろうか。

近年、テレビ等でもよく取り上げられることが増えたおなじみの蛾である。

丸まった枯葉に擬態したその前翅は、人間の目でも見ても丸まってるように見える。


実際は丸まってなどいないのに、だ。


鱗粉で人間の目を錯覚させるトリックアートを描いているのだ。

進化の過程でこうなったのであろうが、とても信じることができない。

神を信じない僕がその存在を疑ってしまう完成度だ。


まさに「神の御業」である。


Smurasaki
20130823 埼玉県秩父市入波沢<標高650m>

オスの触角は櫛毛状。

メスは糸状で一回り大きいが、未撮影。


オニグルミを食草とする意外と普通に生息している蛾である。

「え? 見たことないよ?」 と思った方、実は騙されているだけなのかも知れません。

埼玉での記録は多数。オニグルミがあれば平地の公園でも生息している。


【0103】ハガタエグリシャチホコ
Hagapteryx admirabilis

まさに深紅という言葉が似合うシャチホコガである。

僕が蛾に興味を持って間もない頃、修学旅行で奥日光へ行った際に宿泊先の旅館に止まっていたのが初見である。

その時の感覚は今だ鮮烈に覚えている。


「なんだこのキレイな蛾!!」


思わずそう叫んでしまった。


僕を蛾の世界へ導いてくれたのはオオミズアオ。

僕を蛾の世界へ引きずりこんだのはこのハガタエグリシャチホコ。

そう言っても過言ではないだろう。

Shagataeguri
20130823 埼玉県秩父市豆焼橋付近<標高980m>


なお、近似種に【ゲンカイハガタシャチホコ】という種がいる。

実物を見たことがないので実際にどう違うのかはよくわからない。

更に近年、そのゲンカイ~の対馬以外に生息するものが【クレナイハガタシャチホコ】として新種記載された。

今年はそのクレナイハガタ~を探してみたが見つからなかった。

いつかここで紹介できる日が来ることを期待している。


memo.....
シャチホコガ科 ウチキシャチホコ亜科に分類されています。
食草は色々記載されていてどこにでもいそうな感がありますが
埼玉での記録は西側に偏っており、ある程度の自然がないと生息していないと思われます。

【0089】シロジマシャチホコ
Pheosia rimosa fusiformis

キングオブスタイリッシュ シロジマシャチホコ。

英語的におかしいが、僕の中でそう呼んでるとても美しいシャチホコガだ。

幼少の頃に図鑑で見てから、僕の憧れの蛾であった。


得てして僕は白黒の蛾が好きな傾向があるのだが、この種は群を抜いて美しいと感じる。

アクセント的に入った茶色がまた良いのだ。


シラカンバなどのカンバ類を食草としており、関東近辺ではかなり標高を上げないと見られない蛾である。

食草から1000m付近ならいてもよさそうだが、僕が見る限りは1500m付近にならないと見ていない。

感覚的には亜高山の蛾である。

S
【成虫♂写真】 20100719 群馬県吾妻郡草津町 <標高2000m>

記念すべき初遭遇のシロジマシャチホコ♂である。

あまりにも興奮して「シッ・・・シロシロ・・」とどもってしまった覚えがある。

♂の触角は櫛毛状だ。


Sp6034285
【成虫♀写真】 20130603 埼玉県秩父市三国峠 <1700m>

♀は触角が目立たなくなってくる。

ちなみに埼玉ではここでしか記録がない。 

普段使いの道路だと標高1000mがやっとの埼玉県では仕方ないことなのかもしれない。

種小名はrimosa (リモ-サ)。ラテン語で「亀裂」の意。

白地に亀裂が入ったような模様からとったのではないだろうか。


以前はP. fusiformis という独立種であったが、近年北米のP.rimosa と同種とされfusiformis は亜種となった。

<FONT SIZE="2">【0083】ユミモンシャチホコ<BR><em>Ellida arcuata</em></FONT>

 

春のシャチホコガである。大体GW辺りでよく目にする種だ。

 

名前の由来ともなっている前翅先端の弓状紋は【タカオキリガ】を彷彿とさせ、

 

一瞬「おおっ?タカオ!?」とぬか喜びさせるがすぐにこのユミモンシャチホコであると気がつく。

 

S

【成虫♂写真】 20130503  埼玉県秩父市 <標高690m>

 

♂は触角が櫛歯状。♀は糸状らしいが未見だ。

 

----2013/06/04加筆-----
ライトトラップをしたらメスが飛来した。♂より一回り大きい。
色が薄いのは個体変異なのだろうか?
S_2

【成虫♀写真】 20130603 埼玉県秩父市 <標高1700m>

 

 

 

 

食草はケヤキやハルニレとなっており、都市部にもいそうな気がするが僕自身は見たことがない。

 

記録としては旧大宮市での記録がある。

 

 

種小名はarcuata(アルクアータ)。直訳で「弓型」。和名のユミモン(弓紋)と通じるところがある。

以下記録
190518
【成虫♂写真】190518群馬県 <標高1240m>

 

 

【0060】シーベルスシャチホコ
Odontosia sieversii japonibia

海外の人名がつく種というのは意外と少ないように思う。

以前はミヤマエグリシャチホコ、という名前だったのだが何かあったのだろうか。

個人的にはミヤマエグリ~のほうが好きだ。


4月頃から出現するシャチホコガで、春の山間部でよく灯下に飛来する種だ。

なかなか渋いデザインをしているのだが、個体変異も多い。

黒っぽいのから白っぽいのまで様々で極端な個体を見ると「ん?なんだこれ?」と思うこともしばしば。

S
【成虫♂写真】 20120429 群馬県利根郡片品村 <標高1400m>

オスは触角が強く櫛歯状だ。メスより若干小さい。


Ssiberuko
【成虫♀写真】 20120429 群馬県利根郡片品村 <標高1400m>

メスは触角が糸状で細い。白っぽいのが多いように思う。

撮影は群馬県だが、群馬県のRDBでは注目種となっているようだ。

種小名はsieversii (シーベルシ)。和名にもあるシーベルスで人名由来であろうが、その正体はわからない。

記載年が1856年と150年以上昔である。アマチュアだと探しようがない。名前の感じからロシア方面だとは思うのだが・・・

ちなみに日本の蛾類でsieversがつくのはこの種だけである。


コンディションが悪い時でも飛来してくれる蛾の印象がある。春の山間部探索ではおなじみの存在だ。

食樹はカンバ類。埼玉では奥秩父で記録が多い。


以下記録
S_3
【成虫♂写真】 20130326 埼玉県秩父市 <標高600m>

【0025】オオトビモンシャチホコ屋久島以北亜種
Phalerodonta manleyi manleyi

秋に見られるシャチホコガ。

シャチホコガの多くは春~夏が全盛期である。

秋になって活動するのはこのオオトビモンシャチホコとクシヒゲ類である。


この時期は灯下に飛来する蛾も少なくなるのでおのずと撮影する種も毎年同じような種になる。


その恩恵もあってかオオトビモンシャチホコは撮影回数の多い蛾だ。

S101013mine
【成虫写真】 20101013 長野県北佐久郡軽井沢町<標高1400m>

最近、トビモンシャチホコ亜科が新設されたが、オオトビモンは仲間に入れなかったようだ。

食樹はブナ科が記録されている。

種小名はmanleyi (マンレェイ・・・かな) 採集家Manley氏への献名と思われる。

埼玉では浦和や新座の記録もある。奥秩父ではいくらでもいる。

以下記録
S101106deai
【成虫写真】 20101106 埼玉県秩父市 <標高1065m>

S
【成虫写真】 20111029 埼玉県小鹿野町 <標高1260m>

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