ヤガ科 モクメキリガ亜科

【0174】ケンモンミドリキリガ
Daseochaeta viridis

コケに擬態したのであろう前翅がとても美しい種だ。

秋に出現し、寂しくなり始めた街灯の下を美しく彩ってくれる。

同じコケ擬態系ヤガの【ゴマケンモン】や【ミヤマゴマキリガ】に比べると淡い緑色である。

ヤマザクラやチドリノキを食樹としており、自然度の高い山間部でよく見られる。

S091024
【成虫♂写真】20091024秩父市荒川久那<標高400m>

♂と♀では触角にかなり差が見られる。 言うまでもなく、♂のほうが発達している。

以前はミドリケンモンという名前で、僕が以前使っていた保育社の図鑑ではそちらの名前で掲載されていた。

おかげで今でもミドリケンモンと言ってしまう時がある。


このコケ擬態の前翅、実際に擬態するとどのくらいの威力なのか。

実際にその現場を見ることができた。

S
【成虫写真】20111014群馬県片品村丸沼<標高1400m>

頭部がスレたところですら、木の一部のようである。見事な擬態だ。


種小名はviridis (ウィリディス)。ラテン語で緑の意味。そのままだ。


埼玉県では西側に記録が偏っているが、山地性というわけではなく平地でも記録がある。

【0128】シロモンアカガネヨトウ
Valeria dilutiapicata splendida

黒を基調とした前翅に白い紋が目立つ春のヤガだ。

関東近辺では食草のハルニレが生えている標高が高めのところに見ることができる。

生息地でライトを灯せば多数の個体が飛んでくるので珍品とまではいかないが、比較的出逢うのが難しい。

他にもハルニレを食草とする【シロスジシャチホコ】【ハイイロハガタヨトウ】なども私的遭遇率は低い。

シロモンアカガネは発生時期が短いというのも出逢いづらさに拍車をかけている。


S
【成虫♂写真】20140426利根郡片品村<標高1180m>

水墨画のような黒の濃淡に目立つ白い紋とチラリと覗く純白の後翅のコントラストが堪らない。

一見地味に見えるかもしれないが、非常に美しい蛾であると断言する。

Ssiromonakagane_2
【成虫♂写真】20170503<標高1400m>

こちらの個体は白紋が薄くなっている。ほとんど見られないタイプだ。

異常型というわけではなさそうで、何度か見たことがある。

白紋が主張しすぎず、見事に調和しているのでこちらのほうが更に美しいように思う。

190108 追記
ところでこの白紋が薄くなる型は図鑑にも載ってないしネットにも画像がない。

そのような型がある文献も見当たらない。周りの強力蛾屋に聞いても誰も知らない。

これは下手すると僕が発見者だ。

白紋に霞がかったようなこの型には呼称をつけたい。暫定的に霞紋型とでも呼ぶことにしよう。




180505 追記・削除

種小名は  dilutiapicana (ディルチアピカナ)。ラテン語では追い切れなかった。

日本産は亜種splendidaとされ、ロシアに原名亜種が分布している。

元々は新種として記載されたが、ゲニタリアに差異がないということで亜種に降格した経緯があるようだ。




この原名亜種のことを調べていたのだが、どうにも検索に引っかからない。

これはおかしいと思いロシアのチェックリストList of moths of Russia (Noctuoidea)を見てみると

V.dilutiapicata となっている。

神保博士に確認してみたところ、日本の文献ではV.dilutiapicana となっているが、

タイプ標本ではV.dilutiapicata  となっていることがわかった。

本ブログでは原記載を踏襲し、Valeria dilutiapicata splendida と表記する。







原名亜種の記載者はロシアの昆虫学者、Ivan Nikolayevich Filipjev氏(イワン ニコラエビッチ フィリッピェフ)(1889-1940)だろうか。

原名亜種の産地は沿海州。しかしロシア語でもわからない。

では近隣国の言語を漁る。するとルーマニア語でdiluti=希釈 apic=頂点の という意味だった。

とにかく薄めまくった という意味だろうか?

種小名は  dilutiapicata (ディルチアピカタ)。希薄、という意味があるようだ。

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他にもアカガネヨトウ と名のつく蛾は数種存在する。

以前の分類体系ではすべてヨトウガ亜科に分類されていた。

新体系ではキリガ亜科に分類されているが、このシロモンアカガネだけはモクメキリガ亜科に移されたようだ。


発生は春の短い期間。4月後半から5月初旬にかけて確認している。

埼玉での記録は奥秩父に限られている。


以下記録
Sp5043575
【成虫♂写真】20180503<標高1400m>

Sp5133760
【成虫♂写真】20180512<標高1400m>

【0090】ミヤマゴマキリガ
Feralia sauberi

カラマツに依存した種である。

一見【ゴマケンモン】に似ているが、斑紋の違いの他にも色合いの違いなどから

さほど同定に困る種ではないように思う。

カラマツ依存ということで関東近辺ではある程度の標高がないと見られない種だ。

5月下旬から見ることが多いように思うが、図鑑では4月から出現と記載がある。僕が見ていないだけだろう。

緑地に白と黒の模様が美しく、見かけると写真を撮りたくなる蛾だ。

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【成虫♂写真】 20130603 埼玉県秩父市 <標高1700m>

触角が櫛毛状の♂。

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【成虫♀写真】 20120602 群馬県片品村 <標高1400m>

触角が糸状の♀。

ミヤマゴマキリガは♀もよく飛来してる印象がある。

以前は
Sugi(1968)によりFeralia montana という独立種として扱われていたが
Kononenko(1984)により大陸産の F. sauberi と同種とされ日本産の montana は日本亜種となった。
さらに上信山地のものは黒化が激しくF. sauberi pernigra という亜種として扱われていた。

しかし現在はRonkay&Ronkay(1995)によって二種はタイプ産地のsauberiと同種として扱い、上信山地の黒化は個体群の差として扱われるようになっている。※日本産蛾類標準図鑑より抜粋

>>>>>>>>>140707追記
上に記した上信山地亜種とされていた個体群とは産地が違うが、黒味が非常に強い個体を撮影した。
富士山の個体群である。この地域の個体群は黒化が激しいと以前から知られていた。
ひとつの個体が黒いわけではなく、ここで飛来する個体群が黒い。出会ってみると確かに別種と思ってしまう。

上信山地(浅間山付近)と富士山、黒っぽい岩の多い溶岩帯でこういった色になるのだろうか?
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【成虫♀写真】 20140707 静岡県富士宮市 <標高1950m>
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標本画像

S

Feralia sauberi  ミヤマゴマキリガ


種小名はsauberi (サウベリ)。 ドイツ語でsauberが「清潔な」という意味があるようだ。

埼玉の記録は奥秩父のさらに奥地、普段人が立ち入らないような林道に限られる。

【0045】タカセモクメキリガ
Brachionycha albicilia

本州中部(関東)山地に局所的にしか生息していない蛾である。

と書くと希少種のようだが、生息地では多産するらしい。


同属の【エゾモクメキリガ】【タニガワモクメキリガ】よりも一回り小さく、斑紋があっさりしており、どことなく高貴な印象だ。


S_2
【成虫写真】 20120413 山梨県北杜市 <標高1050m>

埼玉住みの僕には縁の遠い蛾で、飛来したときは大興奮であった。

大体この地域にいるだろうという認識しかなく、確定的なポイントは知らなかったのだ。

半分は偶然とも言えるこの出会いには本当に興奮した。


種小名はalbicilia(アルビキリア)。ラテン語で「白い睫毛」 いい感じ。

近年の研究でカラマツを食べるということがわかってきたらしい。

埼玉では未だ記録がない。

標本画像
S_7

Brachionycha albicilia タカセモクメキリガ 20120413山梨県北杜市<標高1050m>



【0037】エゾモクメキリガ
Brachionycha nubeculosa jezoensis

同属の【タニガワモクメキリガ】より若干遅く出現する。時期で言えば4月上旬がピークか。

タニガワ~よりも若干ふっくらして頭でっかちな印象であるが、渋い色合いの美しい蛾である。

名前にエゾとついているが、特に北海道特産というわけではなく九州まで分布するようだ。

Sp4057453
【成虫写真】 20110404 埼玉県秩父市 <標高665m>
まだ蛾の少ないこの時期、見かけると嬉しくなる。

個体数は多いとは思わないが全くいないというわけでもない。

食樹はブナ科、ニレ科、ヤナギ科、バラ科が記録されている。


種小名はnubeculosa (ヌベクロサ)。ラテン語でnubeculo=「雲のような」。なんとなくわかる気がする。

埼玉での記録は奥秩父のみとなっているが、非公式に平地でも確認されている。
 
以下記録
Sp4182401
【成虫写真】 201004173 埼玉県秩父市 <標高850m>  

Sp4073493
【成虫写真】 20120407 埼玉県秩父市 <標高1065m>

【0032】タニガワモクメキリガ
Brachionycha permixta

春、山々の雪が融け出す頃にこの蛾は現れる。

同属の【エゾモクメキリガ】に先駆けて現れ、エゾ~よりもスッキリした印象の種だ。

出現期が短く、時期を外すとまた一年お預けの蛾である。


タニガワ とは谷川岳から取った和名であるが、僕はこういう和名の種に弱い。

なんかレアっぽい響きがたまらない。遠く谷川岳にひっそりと暮らしている蛾。そんなイメージを持ってしまう。


実際にはいろいろなところで採れているのだが・・・

和名というのは大事なんだなぁと思う。


S1203161
【成虫♂写真】 20120316 埼玉県秩父市 <標高1065m>

♀は未見。なかなか灯りには飛来しないようだ。


>>>>>>>>>140516追記

ライトトラップに♀が飛来した。触角が糸状なのがわかるかと思う。

S
【成虫♀写真】 20140426 群馬県利根郡片品村 <標高1180m>
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意外と個体変異が多く、特に環状紋の大きさがまちまちである。

種小名はpermixta (ペルミクスタ) ラテン語で「混ざった」。他のブラキオニカが混じったような姿形ということか。

食草はサクラ類で飼育の記録がある。

埼玉では奥秩父で3月中旬くらいに見ることができるが、その年の積雪量に大きく左右される。


以下記録

P3182934_2
【成虫♂写真】 20180318 埼玉県秩父市 <標高1065m>

【0030】ミドリハガタヨトウ
Meganephria extensa

和名にミドリと入っているが、その名に反して殆ど緑色は認められない。

新鮮な個体に僅かに緑色が見られる程度だ。

写真で撮るとよくわかるが、一見すると緑なんてドコにもないように見える。


晩秋に発生する種で糖蜜にも飛来する。一般のキリガ類より大きめでなので良く目立つ。

越冬はせず、ほぼ年内でその生涯を終える蛾だ。

S081118
【成虫写真】 20081118 埼玉県さいたま市桜区 <標高10m>

この個体でも目いっぱい緑が確認できるレベル。よく見ないとわからない。


種小名はextensa (エクステンサ)。スペイン語やポルトガル語で「大規模な」。

他のMeganephria(メガネフィリア)属に比べると大きいところからつけられたのかもしれない。


ケヤキを食草とし、埼玉では平地でも山地でも見られる普通種である。

以下記録
Spa3024771
【成虫写真】 20111029 埼玉県秩父市 <標高1065m>

181202
【成虫写真】 20181202 埼玉県さいたま市桜区 <標高10m>

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