ヤガ科 モンヤガ亜科

【0204】ホソアオバヤガ Actebia praecox flavomaculata

同属の【オオホソアオバヤガ】とは違い、淡い緑色と赤い斑紋が美しい種である。

 

ざっと調べてみても北海道から九州まで記録があるようで、特に局地的な分布を示すようなことは書かれていない。

 

埼玉でも旧浦和市、小鹿野町、横瀬町、旧大滝村で記録されている。平地から山地まで幅広く生息していることが伺える。

 

こんな感じなので、数こなしていれば採れそうな気もするが…

 

 

これがホントに全く採れないのである。

 

 

 

僕は蛾類のなかでもモンヤガ亜科には力を入れている(と自分では思っている)

 

ライトに飛来すればスルーするわけはないのだ。

 

図鑑で見ると美しい種である。僕との相性が悪いのか…と思っていたのだが。

 

 

ネットで検索しても「本州産」の画像が殆ど見当たらないのだ。出てくるのは北海道産ばかりである。

 

おそらく唯一、Digital Moths of Japanに今から20年前、1998年5月採集の標本が掲載されているだけだ。

 

 

重鎮の蛾屋さんは口を揃えて言う。「昔はそれなりに採れたんだがね。最近採れないねそういえば」

 

どうも察するに急激に数を減らしている蛾のようだ。

 

それもそのはず、先に改訂された山梨県 レッドデータブック2018にて、新たに準絶滅危惧種として掲載されてしまったのだ。

 

 

そんなホソアオバヤガだが、つい先日SNSを介した知人が本州産の画像をアップしていたのを発見した。

 

即時に連絡を入れると、わざわざ再度採集して頂いたうえに後程お渡ししますという返答を頂いた。

 

知人のご厚意で思いがけず本州産のホソアオバヤガが手に入ることになった。

 

有頂天の僕は、数日後に引き取る約束をしたのち別件で採集に向かったのだが…

 

 

 

なんとそこで採れてしまったのだ。今まで採れなかったホソアオバヤガが。

 

 

Photo

【成虫写真】20181012 山梨県<標高1500m>

 

まさかの飛来である。確かに知人が採集したのだから時期なのだろう。

 

ただ、今まで何年も採れなかった蛾である。ふと立て続けに採れてしまうというのは何か要因があるのだろうか。

 

 

種小名はpraecox(プラエコックス)。 ラテン語では患者、という意があるようだ。

 

 

夏眠する蛾のようで、越夏後はやはり斑紋が薄い。これは是が非とも越夏前の個体にお目にかかりたいものだ。

【0184】センモンヤガ
Agrotis exclamationis informis

幼虫は畑を荒らす農業害虫であり、北海道ではさほど珍しくない蛾である。

しかし、本州では標高が高めのごく一部にしか生息しておらず、なかなかお目にかかれない。

僕自身は3度ほど出逢ったことがあるだけだ。

個体さが大きいが、美しい個体ははっきりした斑紋、濃・淡・濃の組み合わせ、

さらに濃の中でもグラデーションがあり非常に美しい。そして(本州では)レア度高め。俗に言う「エロい蛾」である。

S2
【成虫♂写真】20150604 片品村丸沼<標高1400m>

【カブラヤガ】に似ているが、センモンの名の由来であろう、剣状紋が発達しているのが本種の特徴だ。

大きさもカブラヤガより一回り大きい。


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【成虫♂写真】20110723 草津町大字草津白根国有林<標高1860m>

しかし個体によっては平凡な蛾になってしまうのだが・・・ それだけに好みの色彩の個体が来ると嬉しい。


種小名はexclamationis(エクスクラマチオニス)。これはピンときた。おそらく!(エクスクラメーション)のことだ。

前述の剣状紋と腎状紋が!マークを形成している(ように見える)。ここから名前をとったのではないか?

埼玉での記録は三国峠の一件のみとなっている。

【0162】アオバヤガ
Anaplectoides prasina

関東近辺では標高の高いところに生息する大型のモンヤガである。

美しい緑色の前翅は個体による。色褪せた様子もないのに褐色やモノクロの個体もよくみかける。

それだけに新鮮な緑色の個体に出逢ったときは嬉しくなる。綺麗なアオバヤガは思わず撮影してしまうのだ。

様々な草本類を食草とし、6~8月に成虫が見られる。


S15
【成虫写真】20140719 山梨県山梨市牧丘町北原<標高2340m>


種小名は prasina (プラシナ)。 prasinというのは草色のことらしい。(カラーコード4ca66b)

わかりやすい命名だ。

埼玉県では高標高地に記録が限られる。

【0152】コウスチャヤガ
Diarsia deparca

♂と♀で随分容姿が違う蛾である。【オオバコヤガ】によく似た種だ。

都市部から高標高地といった様々な環境で、春から晩秋まで見られ、色々な草本を食草とするド普通種である。

埼玉でもあらゆるところで記録されている。

たくさんいて模様も地味で近似種との区別も難しいため敬遠され、スルーの対象になりがちな蛾である。

 

S_3
【成虫♂写真】20141004埼玉県秩父市三峰<標高700m>

よく見ると♂は触角が強く両櫛毛状になっているのですぐ見分けがつくが、♀の見分けが難しい。

僕もご多分に漏れずスルー対象となっていて撮影していなかった。

HDDの海に埋もれているかもしれないが、探して撮影してみようと思う。


種小名は deparca (デパルカ) ラテン語で「とんでもなくケチな」

酷い言われようである・・・


少しコウスチャヤガに同情。

今後はスルーせず写真を撮ろう。

【0151】アカフヤガ
Diarsia pacifica

似た種の多いディアルシア属のモンヤガである。

【ウスイロアカフヤガ】や【オオバコヤガ】に似ているが、

・腎状紋の外側まで濃色になる。

・環状紋の下側に黒点がない。

・環状紋がハッキリと確認できる。

この3つの特徴が合致すればアカフヤガと見ていいと思う。


珍しい種ではなく、どこでも見かける種ではあるが、オオバコヤガよりは見かける機会が少ない。

S_2
【成虫写真】20141004埼玉県秩父市三峰<標高700m>

春と秋の二化でキク科やリンドウ科の草本を食草としているらしい。この個体は二化目であろう。


種小名のpacifica (パキフィカ)は「平和な」という意味のようだ。


・・・あまりピンとこない。

>>>>>>>>>141129補足

monroeさんより「太平洋の」という意味があるとご教示いただいた。

良く考えれば確かにそうである。翻訳ソフト任せで頭が回っていない。

「太平洋のディアルシア」と考えれば納得もいく。

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埼玉では浦和大宮の都市部から奥秩父まで幅広く記録されている。

【0150】ウスアカヤガ
Diarsia albipennis

山間部に生息する小さなモンヤガの仲間である。

新鮮な個体はほんのり赤みがかかって美しい。

種小名albipennisと聞いて ん?なにこれどういう意味だよ?と勘ぐってしまった。

ということで翻訳サイトで調べてみると

albi(アルビ)=白  pennis(ペンニス)=羽毛 となっておりalbipennis (アルビペンニス)=白い羽毛、という儚げな名前だった。

なるほど、アルビノのアルビか。少し卑猥な想像をした自分を殴っておく。

S
【成虫写真】20141004埼玉県秩父市三峰<標高700m>


この日は5頭ほどのウスアカヤガが飛来した。

年二化で春と秋に成虫が見られる。言うまでもなく二化目の個体であろう。

S_2
【成虫写真】20160604 山梨県南都留郡富士河口湖町<標高970m> 

こちらは一化目と思われる個体。色合いが違うのは季節型なのか個体変異なのか。


埼玉でも記録は多い。秩父地方ではさほど珍しくなく、奥秩父を中心にいろいろな場所で記録されている。

しかし、平地での記録がなく、関東近辺では山地性の種であることが伺える。

食草は未だ不明だという。

【0148】ミヤマアカヤガ
Diarsia brunnea urupina

中部地方の高標高地では珍しくないモンヤガである。

標高が1000m付近でも見られるが、1500mくらいになると数が多くなる印象がある。

個体によって色の濃淡にかなりの差があるが、翅形や二重の外横線、環状紋と腎状紋の

間が濃色になる等の特徴を覚えてしまえば、さほど同定に迷う種ではないように思う。

S_4
【成虫写真】20140719 山梨県山梨市<標高2300m>

とても赤味が強く美しい個体である。

この日は100を超えるミヤマアカヤガが飛来した。発生のピークだったのかもしれない。

2週間後、同じ所でライトトラップをしたところ、飛来したのはスレスレの3頭。

口吻の退化は見られないので摂食をする蛾のハズだが寿命はさほど長くないのか、それとも移動したのか。



日本産蛾類標準図鑑には日本産は亜種 urupina とされる、という記述がある。

しかしネット上ではどこを見てもDiarsia brunnea までしか表記されていない。

当ブログでは標準図鑑を踏襲し、Diarsia brunnea urupina と表記する。

種小名brunnea (ブルンネア)は 鳶色 という意味のようだ。




埼玉では甲武信小屋や雁坂小屋といった高標高地の記録と寄居町の記録がある。

【0144】クモマウスグロヤガ
Euxoa ochrogaster rossica

クモマ、という和名は漢字で雲間と書く。

蝶では雲間ツマキチョウ、雲間ベニヒカゲといった高山蝶の和名に使われている。

雲の間に生息する蝶、という意味だろう。


和名だけで心躍らせる「クモマ」の三文字だが、蛾の世界ではこのクモマウスグロヤガ一種だけにつけられている。

それがまたこの種に対する想いを一段と募らせる。 

霧の多い北アルプスの稜線にひっそりと暮らす、そんなイメージを持ってしまう。


だが実際は様々な場所で採れている。

勿論、標高がかなり高めのところでしかお目にかかれないのだが、2000mないといない、というわけでもないようだ。

僕自身は1600mくらいでも見ている。高山蛾、という括りに相当するのかは怪しい部分もある。

しかしその姿はクモマの名にふさわしく、高貴で品のある蛾だと思っている。

S
【成虫写真】20140910 静岡県駿東郡小山町須走<標高1960m>

まさに美しいの一言に尽きる。銀白色に輝くこの蛾を見たときは、ため息しか出なかった。


この夜は複数のクモマウスグロヤガが飛来した。本種は個体変異が多く、一見すると別種に見える。

S_2
【成虫写真】20140910 静岡県駿東郡小山町須走<標高1960m>

一枚目の個体と比べると灰色味が強い。

一枚目をタイプシルバーと形容するならさしずめこの個体はタイプグレーとでも言おうか。

タイプグレーは【ウスグロヤガ】に近いが、一回り小さい。

S_3
【成虫写真】20140910 山梨県南都留郡鳴沢村<標高1660m>

タイプホワイト?と言いたくなるが擦れてこの色になってるのだと思う。

もう少し新鮮なら【ムギヤガ】に似た模様をしていたはずだ。

S_4
【成虫写真】20140910 山梨県南都留郡鳴沢村<標高1660m>

幾分黒味が強いタイプブラック。なかなか渋いタイプだ。


僕はやはりタイプシルバーがお気に入りだ。シルバーが飛来した時はテンションが上がってしまう。

目にする機会が少ないうえ、当たり外れの大きい蛾かもしれない。

しかしロマンを感じるのは得てしてこういった蛾なのである。


日本で記録された当時はE.islandica(イスランディカ)と同定されているのだが
杉繁郎・神保一義,1978. 本州の高山帯に分布するクモマウスグロヤガについて 蛾類通信97:611-616.

学名が変更になっているのを見ると同定しなおされたのだろう。
 

現在の種小名は ochrogaster (オクロガステル) ochroはオクラのことらしい。 gasterは胃。

オクラの胃?ってことは幼虫がオクラを食べつくす勢いで食害するのか。

と思ったら日本での食草はアブラナ科のフジハタザオだという。

ヨーロッパでオオバコ、アイスランドでトクサ。

名義タイプ亜種が北アメリカなのでそちらはオクラ食いなのだろうか。



埼玉でも一例だけ記録がある。(三国峠)


【0142】シロオビハイイロヤガ
Spaelotis lucens

灰色の地色に白く線を描いた一見地味なモンヤガである。

渋めの美と言えばそう見えなくもないが、僕の印象は「知的な大人の美しさ」である。

主張しすぎず、かといって無個性でもない。控えめな主張で個を演出している。


S_2
【成虫写真】20140829 群馬県片品村丸沼<標高1400m>

あまり光源近くには飛来せず、離れたところで落ち着く という記述が標準図鑑にはあるが、

僕が遭遇した二個体はいずれも光源に近すぎず遠すぎず、いわば普通の場所で落ち着いていた。

どこを見ても「個体数は少ない」との記述があり、珍品の誉高い種であるようだ。


種小名の lucens (ルーケンス)はラテン語で「明るい」。他のスパエロチス属に比べ明るいということだろうか。

埼玉では三国峠の他、大洞川(正確な場所不明、大洞川林道700m~1100mか)や旧大滝村滝川といった高標高地で記録されている。

【0141】キミミヤガ
Xestia baja tabida

本州では亜高山帯に生息し、夏に発生するモンヤガである。

多食性で様々な草本が食草として記録されているが、、目にすることが少ない蛾のように思う。

薄茶色で地味系なその容姿はスルーの対象になりやすいのだろうか。


前翅前縁の外縁付近にトレードマークの黒紋がある。

地味種が多い中型モンヤガの中では個性があるほうだと思っているのだが・・・


S
【成虫写真】20140822 長野県南佐久郡佐久穂町<標高1620m>

この一帯では二桁のキミミヤガが見られた。

普段は見つけても一頭二頭のこの蛾の多産地なのかもしれない。


埼玉でも三国峠や入川林道の高標高地での記録がある。


以前はX. tabida という独立種であったが、現在はKononenko(2005)により大陸産X. baja の日本亜種となっている。

種小名baja (バヤ)は言語によって意味合いがかなり違う。

記載者のdenis&schiffermuellerがオーストリアに居住、発見もオーストリアであることからドイツ語の可能性が高い。

と思ったのだが・・・ドイツ語ではbajaというとハンガリーのバヤ市になるようだ。

しかしバヤ市由来なら接尾辞がつくはず。

そのバヤ市の由来はトルコ語で牡牛とのことだが・・・ そんなひねくれて名前つけるんかな。

他には 「降りてくる」(スペイン語)  「間違った」(ハンガリー語)  「嘘」(ポーランド語)

・・・記載年は1775。奇しくも第一回ポーランド分割の時期だ。ということはもしかするとポーランド語の「嘘」なのか。

1775というとハンガリーはまだオーストリア帝国領。ハンガリー語の「間違った」も捨てきれない。

もしくは言葉遊びなのか。「間違った」と「嘘」。何か記載時に嘘や間違いのトラブルがあったのか。

全て僕の勝手な妄想ではあるが・・・学名に込められたロマンを想像するのは楽しい。


しかし学名調べてて世界史を思い出すことになるとは思わなかった。

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