越冬キリガ

【0134】アメイロホソキリガ
Lithophane remota

【ナカグロホソキリガ】とよく似た越冬キリガである。

飴色ということで色が薄茶褐色のキリガ。

1998年に記載されたばかりの新しい種だ。TINEA ,15(Supplement 1).1998.

現地で「これはアメイロ!」と断言できることは少ない。アメイロっぽいナカグロが存在するからだ。

怪しいのを採集して家に帰って写真と標本をよーく見比べて「うん、これはアメイロだな」と同定している。


Sameiro
【成虫写真】20140504 山梨県山梨市<標高1400m>


越冬前と越冬後では少し雰囲気が変わる。

越冬前は色が濃く、更にナカグロとの区別が困難になる。

Same
【成虫写真】20131014 埼玉県秩父市小品沢<標高900m>


差異点をナカグロの時も書いたが、いかんせん文字で表すだけではわかりづらい。

ということで差異点をまとめて比較画像を作ってみた。


Sp5043933
【成虫比較写真(越冬後)】上:ナカグロホソキリガ 下:アメイロホソキリガ

他にもアメイロは前翅の幅が狭いという特徴もある。

図鑑に記述されている相違点であるが、肩の部分の記述は僕の私見である。参考程度にして頂きたい。

新しい種のため、記録が少ないが埼玉にも生息している。

僕が知るかぎりは秩父市で記録されている。


種小名はremota< (レモト)=遠隔、辺鄙ななど。要は辺鄙なところにいるリトファネということか。


食草が未だ不明である。近縁種ナカグロホソキリガはサクラで飼育された記録があるが、

アメイロと分化する前の記録であるため、実際はどちらの幼虫かはっきりしていないようだ。


【0124】モンハイイロキリガ
Lithophane plumbealis

シナノキが食草として記録されている越冬キリガである。

普通種、という記述をよく見かけるのだが僕自身は未だ二度しか見たことがない。

リトファネ属の中で北海道にのみ生息する未見の【クモガタキリガ】を除けば私的に一番のレア種である。

北方系のキリガのようで、西日本では高標高地に生息が限られるようだ。

灰色地の前翅に前縁部にある茶褐色の紋が目立つ。同定には苦労しない蛾だ。


S
【成虫写真】20140329長野県<標高1378m>

まだ雪の残る氷点下の軽井沢で灯火に飛来した。

氷点下とは思えぬ活発な飛び方は流石越冬キリガといったところであろうか。


越冬前の個体は赤みがかかって美しいようだ。是非そちらも見てみたい。

>>>>>>>>>180322追記
越冬前の個体を確認できた。背面の色が濃く、違う蛾のようにさえ見える。

Photo
【成虫写真】20161009長野県<標高1310m>
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埼玉でも三峰山や三国峠、入川林道などの標高が高めの所で記録されている。

Photo
【成虫写真】20181013山梨県<標高1650m>

【0112】テンスジキリガ
Conistra fletcheri

見分けの難しいコニストラ属のキリガだ。

そのせいかコニストラは敬遠する傾向があるが、テンスジキリガは特徴が出ている個体だと若干わかりやすい。

腎状紋に黒紋がなく、翅脈が白っぽく目立っていたらテンスジの可能性がかなり高い。

内横線が直線的なら間違いないだろう。


越冬前の美しい個体であればその特徴がよくわかる。

S
20131014 埼玉県秩父市小品沢<標高900m>

オスの触角は微かに毛束状でよく見ないとわからない。

食草が未だによくわかっていないようだ。
-----140307訂正
柳田(1999)はクリ、ヤナギ、ミズナラ、ミズキなどの広葉樹であると述べている。

僕は山地に生息している、と思っていたが埼玉では浦和や川口の記録があるようだ。

【0079】ミスジキリガ
Jodia sericea

越冬するキリガの一種で平地にも産地にも生息するが、頻繁に見られる種ではない。

ポツン ポツンといろいろな所で散発的に発生している印象がある。

環境省のRDBでは準絶滅危惧(NT)に指定されている種だ。

例年僕が糖蜜をやっているフィールドでもこの冬に初めて飛来した。

今までも同じ所で十何回とやってきていたのだが・・・ わからないものだ。

継続的な調査は大事だと思った瞬間でもあった。

S
【成虫写真】 20130307 埼玉県さいたま市桜区 <標高10m>

普段良く飛来するコニストラに比べると明るい茶色だ。

混じっていても「ん?これはなんか違うぞ?」とひと目でわかるはずだ。

ミスジ、という名の割りにはスジははっきりしないので名前に騙された感が多少する。


種小名はsericea(セリケア)。sericeus が絹糸状のという意なので 「絹糸」に関係しそうだ。

ただ、serice で「対処」という意味もあるようだ。 絹糸のほうがいいなぁ・・・

埼玉では旧大宮市、川口市、鳩山町での記録がある。

【0072】シロクビキリガ
Lithophane consocia

秋に羽化し、翌年春まで越冬するリトファネ属の中でもかなり大型の種。

【ハンノキリガ】に似ているが、シロクビは一回り大きく、腎状紋の内部が赤くなるのが特徴だ。

幼虫はハンノキを食べるようで、※日本産蛾類標準図鑑より
こちらのほうが ハンノキリガ の名にふさわしいと思ったりもする。

関東では標高の高い所でよく見るイメージが強く、山の蛾、といった印象だが
伊豆諸島や佐渡ヶ島にも分布してるようで特に山地性というわけではないのかもしれない。

S
【成虫♂写真】 20120922 群馬県吾妻郡草津町 <標高2008m>
♂は触角に微毛が生えている。 


S
【成虫♀写真】 20131007 群馬県吾妻郡嬬恋村 <標高1744m>
♀の触角は糸状だ。


しかし、ちょっと画像で見ただけでは触角に違いなどないように見える。
ということで拡大してみた。

S_1

若干ではあるが違いがあるのがわかるかと思う。

これを夜の野外で見つけた時、肉眼で見分けるのは至難の業だ。

埼玉では奥秩父で記録がある。


種小名はconsocia (コンソキーア)。味方とか協調とかそんな意味あいがあるようだが…

以下記録

S_2
【成虫♂写真】 20100915 埼玉県秩父市 <標高717m>

【0064】カシワオビキリガ
Conistra ardescens

キリガの中でも同定しづらいコニストラ属の仲間である。

その中でも【ホシオビキリガ】【ミヤマオビキリガ】【テンスジキリガ】とは見分けがつきにくく

糖蜜にやってきても「はいはいコニストラコニストラ」で片づけがちである。


カシワオビに至るフローチャートとして僕は以下のようにしている。


・ずんぐりむっくりな翅型 (ホシオビ黒点型は細長い)

・内横線が不明瞭な二重線で波打つ(テンスジは明瞭)

・翅色が赤っぽい茶色(ミヤマオビは暗い茶色 ホシオビは黄色っぽい茶色)

しかしこれだけやっても判別に困る個体はたくさんいるのが現状である。。。

そういった個体の正確な同定は交尾器を見るしかないだろう。


ということで以下は僕がカシワオビキリガと「思っている」個体である。

Sp1310256
【成虫写真】 20100131 埼玉県さいたま市桜区 <標高10m>

不明瞭な二重線、赤っぽい翅色、カシワオビだと思う。

カシワオビは翅をあまり重ねずに止まる傾向があり、黒点がふたつ見えることが多い。

が、それだけで同定するのはあまりにも危険である・・・


埼玉県では全体に記録があるが、以前は少ない印象であった。

ここ数年で糖蜜への飛来が非常に増えてきた種の一つである。


種小名はardescens (アルデスケンス) arde scensと区切ると「焦げた間伐」という意味になるようだが…

以下記録

S
【成虫写真】 20130121 埼玉県朝霞市 <標高25m>



【0061】ウスアオキリガ
Lithophane venusta venusta

灰色や茶色のイメージが強いリトファネでは唯一の薄緑色をした種。

薄緑に黒の模様は見つけた瞬間にハッと息を呑む美しさだ。

越冬後の個体も綺麗なものが多い。やはり越冬中はあまり活動していないのだろうか。

Susuoa
【成虫写真】 20120429 群馬県利根郡片品村 <標高1320m>

リトファネの中では小さい部類である。

黒い模様は個体変異が大きく、緑が優勢な個体、黒が優勢な個体と様々だ。

9月下旬頃から成虫が出現。そのまま越冬し5月上旬頃まで見られる。

種小名は venusta (ウェヌスタ)。ラテン語で「素敵な」の意。

命名はLeech(リーチ)。この蛾の美しさは万国共通なのだろう。

日本産は原名亜種。台湾や大陸に亜種がいる。


ミズナラを食草とするので関東近辺では標高を上げないとなかなか見られない。

埼玉でも入川や三峰、三国峠など標高が高いところでの記録に限られている。


標本画像

S
 

Lithophane venusta venusta ウスアオキリガ 20120429 群馬県利根郡片品村 <標高1320m>


以下記録

S100406
【成虫写真】 20100406 埼玉県秩父市 <標高1060m>

S100915
【成虫写真】 20100915 群馬県吾妻郡嬬恋村 <標高1380m>


【0057】エグリキリガ
Teratoglaea pacifica

前翅の先端がエグれていて一目でそれとわかる特徴的なキリガである。

大きさも小さく大人の小指の幅にも満たない。

普通のキリガとは一線を画した姿は一度見てみたいと思っていた。


ずっと出逢えなかったエグリキリガだが今年に入って立て続けに3頭、会うことができた。

それぞれが違う場所での遭遇。会えるときはこんなもんなのかもしれない。

S1204293
【成虫写真】 20120429 群馬県利根郡片品村 <標高1400m>

基本的には黒っぽい個体が多いようだが、このように茶褐色になる個体もいるようだ。

種小名はpacifica(パキフィカ)。太平洋のという意。

埼玉県昆虫誌には記録がなかったが、埼玉昆虫談話会による秩父演習林の調査にて採集された報告があった。
阿部功,2010.2008年から2009年にかけて演習林等で採集された蛾.寄せ蛾記136:21-35
水上久雄,2014.東京大学秩父演習林にて2012年に採集した蛾.寄せ蛾記156:34-55

以下記録

S120519
【成虫写真】 20120519 群馬県吾妻郡嬬恋村 <標高1260m>

【0055】コケイロホソキリガ
Lithophane nagaii

コケイロという名にはちょっとピンとこない灰褐色の蛾である。

他のリトファネと同様、成虫越冬で4月頃までその姿を見ることができる。

渋いその姿にそぐわず、意外と南方系の種のようだ。

日本産蛾類標準図鑑には太平洋側では静岡県以西、日本海側では新潟県以西に分布、となっている。


僕は埼玉県、栃木県、群馬県でその姿を見ているが、何れも内陸部。

内陸ではまぁまぁ北まで足を伸ばしているようだ。

S110407
【成虫写真】 20110407 埼玉県秩父市 <標高1000m>

他のリトファネより一回り小さく、ちょこん、と止まっているイメージだ。


越冬前の個体は苔色の名に相応しい蛾だった。
Photo_2
【成虫写真】 20181013 山梨県北杜市 <標高1650m>

関東周辺で見られるリトファネでは一番見る機会の少ない種だ。

種小名は nagaii(ナガイイ)。人名由来のようだ。

S090404
【成虫写真】 20090404 栃木県日光市 <標高1260m>

S120415
【成虫写真】 20120415 長野県北佐久郡軽井沢町 <標高960m>


【0054】ハンノキリガ
Lithophane ustulata

よく植物の名前が和名につく蛾がいる。

往々にして幼虫時代の食草がその植物でそこから由来している和名だ。
(たとえばキリガなら【スモモキリガ】とか)


そんな先入観からこのハンノキリガはハンノキが食草だと思っていた。

しかも初めて見たのはハンノキで有名な公園。

しかしハンノキリガの食草は「カシワ・コナラ・ミズナラ」である。※日本産蛾類標準図鑑より


果たしてハンノキリガのハンノとは一体なんなのだろう・・・

Sp4133545
【成虫写真】 20120413 山梨県北杜市 <標高1000m> 
 
【シロクビキリガ】に若干似ているが、シロクビは一回り大きく長い印象がある。
腎状紋の内部が赤くなってるのもシロクビの特徴だ。

【カシワキボシキリガ】にも似ているという記述をよく見るが、僕個人はあまり似てるとは思わない。
個体によっては似てくるのだろう。

そういえば以前記事にしたカシワキボシと同じところで撮影している。
並べて比較すればよかったと後悔。

種小名はustulata(ウスツラータ)。ラテン語でustulatusが黒褐色の、という意があるようだ。そのような意味なのだろう。

以下記録
S200903050037
【成虫写真】 20090305 埼玉県さいたま市桜区 <標高10m>


S110521

【成虫写真】 20110521 長野県北佐久郡軽井沢町 <標高1290m>

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