フユシャク

【0147】ナカジマフユエダシャク
Larerannis nakajimai

同じラレランニス属の【ウスオビフユエダシャク】と似たような晩秋に出現するフユシャクである。

時期にして11月下旬から12月上旬、ウスオビが終わりかけくらいの時期だ。

僕の感覚ではナカジマは相当局地的である。ウスオビは山に行けばいるだろーという感覚だが

ナカジマは適当に流してても会えた試しがない。どちらかというと南方の種なのだろうか。

Spb27581911
【成虫♂写真】20101127 山梨県富士河口湖町<標高1000m>

ウスオビに比べると完全に薄帯ではない。主張の激しい模様である。

ウスオビのラインを墨でなぞったようなラインはひと目で違うとわかる。

S
【成虫♀写真】20141123 山梨県富士河口湖町<標高1000m> 自宅にて撮影

この日は探索を予定していた。しかし事もあろうに骨折で家から出られなくなってしまった。

怪我で動けない僕に、探索に出かけた一寸野虫さんATSさんさらに翌日出かけた真神ゆさんが産卵前の生体を贈ってくれた。

初♀遭遇が自宅になってしまったが、やはり嬉しいものである。この場を借りてお礼申し上げます。


このナカジマフユエダシャク、記載された当初はシロフユエダシャクという和名であった。

しかし【シロフフユエダシャク】という種がおり、とても紛らわしいということで改名された。
中島秀雄,1989.ナカジマフユエダシャク(改称)の雌の発見.蛾類通信153:33.

種小名のnakajimai (ナカジマイ)は言うまでもなくフユシャク研究の第一人者、中島秀雄氏のことである。


ウスオビと混生している地域も一部あるようだが、ウスオビの確認されている埼玉では未だに記録されていない。

【0122】トギレフユエダシャク
Protalcis concinnata

クヌギ・コナラといったいわゆる雑木林で多く見られるフユエダシャクである。

つい最近までトギレエダシャクという和名で呼ばれていた種だ。

2009年にトギレフユエダシャクに改称されたばかりである。(誘蛾灯:196)

S_3
【成虫♂写真】20140309 埼玉県狭山市<標高70m>

♂はいわゆる地味エダシャク。中横線と外横線が急接近するのが特徴的だ。

個体変異が多いが、この特徴を覚えておけば同定に困ることはないと思う。

感覚的な話だが高標高地に行くほど色が薄くなる傾向がある気がする。

参考までに標高1300mで撮影した♂を添付しておく。

S_5
【成虫♂写真】20120519 長野県軽井沢町大字長倉<標高1300m>

関東平地では3月に見られる種だが、軽井沢では5月中旬でもその姿を見ることができた。

春キリガ等に比べるといくらなんでも遅すぎるような気もする。

1000m付近では3月下旬に確認している。何か羽化するにあたっての条件が揃わないのであろうか。


S_4
【成虫交尾写真】20140311 埼玉県狭山市<標高70m>

このペアは22時頃の撮影。♀を単独で撮影するのをすっかり忘れていた。

♀の翅はフユシャクと呼ばれるグループの中で一番大きく、まさに「途切れ」たその翅は見応えがある。

大きな翅は頑張れば飛べそうな気もするが、フユシャクの仲間ということはやはり飛べない。

翅をパタパタはためかせて必死に歩いて行く姿は可愛らしく、一度見てもらいたい光景だ。


埼玉では平地から山地まで幅広く生息している。

【0121】フチグロトゲエダシャク
Nyssiodes lefuarius

春の短い期間にだけ現れる昼行性のフユシャクである。

河川敷によく生息地が知られているが、元々は草原性の蛾らしい。

人間の開発により生息場所が河川敷に狭められていった、と見るべきかもしれない。


♂の飛翔は素早く、枯れ草が保護色となり見失うケースが多い。

大人しく撮影対象になってくれることが多い蛾類にしては写真が撮りづらい種だ。


S
【成虫♂写真】20140303 埼玉県さいたま市<標高10m>

♂はフサフサの触角が目立つ、『櫛髭四天王』の一員だ。

太陽が出ていて風が弱い時によく飛ぶようだ。時間的には正午前後によく見る印象がある。

対する♀は全くの無翅でアザラシのタマちゃんのような風貌だ。

S200902210027
【成虫♀写真】20090221 埼玉県さいたま市<標高10m>
産卵中失礼して撮影した。

Sp3011489111
【成虫交尾写真】20100301 埼玉県さいたま市<標高10m>

2回観察した交尾の時間はいずれも12時半頃。しかし交尾後も♀はまたコーリングして再交尾するという。

あまり聞かない習性である。


S_2
【幼虫写真】20130504 飼育<自宅撮影>


幼虫はノイバラやクローバーなど、多岐にわたる草本を食草とする。

僕はサクラを食べさせていたがよく食いついてくれた。(糞が良い香りになったりする)




フユシャクの中でもフチグロトゲエダシャクは非常に人気が高く、蛾屋以外にも人気である。

観察に生息地へ行くと網を持った人と遭遇する確率が高い。

フサフサ触角の♂と愛くるしいアザラシのような♀は"フッチー"の愛称で今年も虫屋に春を告げてくれる。



種小名lefuarius (レフアリウス)。 ルーマニア語でlefua=「洗練された」 riusは接尾辞か。これだと信じたい。



埼玉では2月後半から3月前半に出現。

産地は非常に少なく、埼玉県RDB2008で絶滅危惧I類に指定されている。


【0120】フタスジフユシャク
Inurois asahinai

11月から山間部で見られるフユシャクである。

イヌロイス属の中では早くに出現し、発生期は他のイヌロイスに比べると短い印象だ。

【シュゼンジフユシャク】によく似ており、外見での差異はあまり見られない。

強いて言うなら外横線が最後までキッチリ直線的なことだろうか。

僕の印象では全体的にシュゼンジよりも黒っぽい感じを受ける。

Sfutasuji
【成虫♂写真】20131110 群馬県吾妻郡嬬恋村鎌原<標高1220m>

シュゼンジを除く他のイヌロイスとはパッと見の印象で違うことがわかるはずだ。

直線的な外横線は他種と一線を画している。

♀は未見である。


埼玉では小川町で1月の記録がある。しかし発生時期と標高から考えてもフタスジだとは考えにくい。

実際に僕も現地で探してみたがウスバしか確認できなかった。一度標本を確認する必要があるだろう。


その他は記録がないようだが、奥秩父で数回死骸を見ている。

おそらく安定して発生していると思われる。

【0119】ミヤマフユナミシャク
Operophtera nana

関東・中部地方の山地に生息するフユシャクの仲間である。

場所によっては10月から発生しているようだが、11月初旬~中旬に見る印象が強い。

フユシャクのトップバッター的存在だ。

カラマツに依存しているので、カラマツ林がないと生息していない。

S
【成虫♂写真】20131108 群馬県吾妻郡嬬恋村<標高1170m>

ここ数年、♀を探してカラマツ林に通っているが未だに見つからない。

いつかは見てみたいものだ。


カラマツの少ない埼玉では未記録の種である。

【0074】スジモンフユシャク
Alsophiloides acroama

モミに依存したフユシャクである。

よってモミがないと生息しておらず、おのずと生息場所には限りがある。

よく考えると普段の生活圏内にはモミなんてなかなか生えていないものだ。

あっても神社や公園に一本二本。流石にそれでは生息は難しい。


というわけでこのフユシャクに会う為にはモミが多少まとまって生育しているところに行かなくてはいけない。

モミは元来、山の稜線付近に生えている樹木なのでおのずとそういったところへ赴く。


車がなかなか入っていけない場所だ。徒歩で行かなくてはいけない。

このクソ寒い2月に夜の山の中へ入っていくのである。

何の罰ゲームなんだと言いたくなるが仕方がない。

しかしそんな罰ゲーム?を乗り越えた者にだけ、その姿を魅せてくれるのだ。

S
20130226神奈川県愛甲郡清川村<標高562m>

アルソフィラに近いが前翅の形がかなり丸みを帯びている。

とても渋くて味わい深い蛾だ。

Ssujimon
20130226神奈川県愛甲郡清川村<標高562m>

同所で見つけた♀。全くの無翅だ。

アルソフィラやイヌロイスに見られる尾端の毛はこの種にはない。


S_2
20130226神奈川県愛甲郡清川村<標高562m>

交尾画像。初めて見た日に♂♀交尾の画像を撮ることができた。

これはとんでもなくラッキーなことだと思う。

次は埼玉でこの姿を拝んでみたい。


memo.....
シャクガ科 フユシャク亜科に分類されています。
僕はこの一回だけなので2月にしか見たことはありません。
埼玉での記録は「浦和市」の一件だけです。(ホントかよ・・・)

【0065】オオチャバネフユエダシャク
Erannis gigantea

関東周辺では山地に生息する種である。

【チャバネフユエダシャク】に似ているが、外横線の走り方がオオでは強く√になっているのが特徴だ。
チャバネでも大きく湾曲していて紛らわしい個体が存在するが、見慣れると違うのがわかってくると思う。

オオチャバネ~という名だが、比べても特段大きいわけではない。
最大値はオオチャバネのほうが大きいようだが、普段目にする時にはあまり変わらないように思う。

Spb102052
20121110長野県軽井沢町長倉<標高1368m>

チャバネと同じように白ベースタイプと暗色タイプがある。
暗色タイプはあまり多くないように思うが産地によるらしい。


S
20121110長野県軽井沢町長倉<標高1368m>

メスはチャバネフユエダシャクに酷似していて外見で見分けるのは困難だ。
交尾している確実な個体を見たことがないので未見、としておく。

Sootya
20121110長野県軽井沢町長倉<標高1368m>
近似種チャバネフユエダシャクとの比較画像。右がオオチャバネフユエダシャク(当記事一枚目の個体)だ。


以前はErannis defoliaria giganteaという学名で、E. defoliariaの亜種として扱われていたが、
近年独立種となったようだ。


memo.....
シャクガ科 エダシャク亜科に分類されています。
幼虫は針葉樹食い。成虫は11月に出現します。
埼玉県でも記録がありますが、見たことありません。
僕の積年の課題です。

【0063】サザナミフユナミシャク
Operophtera japonaria

平地に生息するフユシャクだが生息域が幾分限られており、時期に歩けばいるというような種ではない。

何しろ神奈川では絶滅危惧Ⅱ類に指定されている種だ。


食樹のクヌギ、コナラから考えるとどこにでもいそうな気がするのだが、何かしらの条件が整っていないとダメなのかもしれない。

マイフィールド秋ヶ瀬公園にもクヌギコナラは大量にあるのだが見たことがない。

あれだけの規模を誇る公園にもいないとなるとサザナミフユナミシャクの生息には一体何が必要なのか。

食草が普遍的な種なのに生息域が局所的という種は難しい。

Ssazanami
20091212埼玉県<標高60m>

羽化シーズンには日没後に木の下から上へ沿うようにして飛んでいるのを見かける。

♀を探しているのだと思う。


S_3
20121221埼玉県狭山市<標高60m>

その♀はというと一見貧相な【クロオビフユナミシャク】である。

最初に単体で見つけたときはこれがサザナミのメスとは思わなかった。

Skoubi
20121221埼玉県狭山市<標高60m>

樹上3~4mの高さで交尾個体を発見。

これにより先ほど見つけた貧相なクロオビが実はサザナミだったのだと判明した。

なんとか下ろして撮影したが、羽を傷つけてしまった。

あの高さで交尾されると流石に中々見つけられない。

Photo
20161217 埼玉県狭山市<標高60m>

こちらも樹上3mほどの高さにて発見。今回は次男が木に登って綺麗なまま捕獲してきてくれた。感謝である(笑)


成虫は12月に出現し半月ほどで姿を消す。

種小名は japonaria(ヤポナリア)。日本の という意味だ。

埼玉では加治~狭山丘陵近辺の記録しかなく、局所的な生息をしていると思われる。

【0062】シュゼンジフユシャク
Inurois kobayashii

現在のところ、伊豆市修善寺周辺のみで確認されている種である。

発生時期が極めて短い事が多く、少しでも時期がずれると何時間も何千円もかけて蜘蛛の巣にかかった死骸を見に行くことになる。

4週連続で週末遠征しても出会えない年すらあったほどだ。


それだけにタイミングよく会えた時の感動はひとしおである。

一見、【フタスジフユシャク】にそっくりなのだが、よく見ると外横線が若干前縁近く(M1付近)で角ばる傾向がある。

加えてフタスジが本州で800m級の山地で11月に発生するのに対し、シュゼンジが生息する伊豆市修善寺は標高が200mしかなく発生もひと月以上遅い。


フタスジもそうだが、シュッとした印象でメリハリがあり、イヌロイスの中では見栄えがする種だ。


Sp11325
20130113静岡県伊豆市修善寺<標高230m>


>>>>>>>>>140111追記

20150110にこのポイントへ行ったところ、食樹として記録されている桜の木が殆ど伐採されてしまっていた。

はじめは随分老齢化した木が多かったので倒木の危険を避けるために伐採したのかと思ったが、若い木も

かなり伐採されていること、モミジだけは殆ど伐採されていないことを不思議に思い家に帰ってから調べてみた。


紅葉しない樹木を伐採し、紅葉する樹木を植樹、将来的には全体が紅葉が楽しめる公園にするためということだ。

この公園のそばには同じような紅葉の名所と言われる公園があるのだが・・・

公園の半分を伐採してまで公園全体を統一する必要はあったのだろうか疑問に思う。


この日、このポイントでシュゼンジフユシャクを見ることはなかった。

全国でこの近辺にしかいない、修善寺の名を冠した蛾の貴重な生息地がひとつ壊滅するということ。

伐採をした伊豆市にとってそれは「公園を紅葉する樹木で統一すること」より小さな問題なのだろう。

来年以降、どこかで生き延びていたこのポイントのシュゼンジフユシャクに再び出会えることを切に願う。

<<<<<<<<<<<<<<<<<<<
Ssyuze
【成虫写真】20140112 静岡県伊東市<標高10m>

修善寺近辺だけではなく少し離れても生息はしているようだ。

詳しい分布域はわからないが、伊豆半島では広く生息している可能性もある。

広範囲に継続的な調査が必要と思う。


種小名はkobayasii(コバヤシイ)。小林秀紀氏にちなむ。


もちろん埼玉では記録されていない。

【0053】フタマタフユエダシャク
Larerannis filipjevi

フユエダシャクのラレランニス最後の刺客、とでもいうべき種だろうか。

11月下旬、【ウスオビフユエダシャク】から始まるラレランニスは4月に入ってフタマタフユエダシャクで発生を終えるフユエダシャクだ。

ウスオビの春版、と言ってもいいのかもしれない。同じような環境で見つかることが多い。

秋にウスオビを見かけた場所へ春行ってみたらフタマタがいた、そんな経験が少なからずある。

S_5
【成虫♂写真】20120417北佐久郡軽井沢町<標高1290m>

♀は羽が短くて飛べない。未見。

-----130411追記--------

再三の探索により、ようやく交尾ペアを発見した。

ブナ?の樹上3m付近で発見。発見時刻は21:30。気温1℃であった。

S
【成虫交尾写真】20130411北佐久郡軽井沢町<標高1200m>

上記ペアが分離した後の♀。近似種【ヒロバフユエダシャク】の♀より白っぽい印象だ。
S_2

持ち帰って観察したところ、昼間は擬死していて全く動かなかった。

活動時間になるとこの姿からは想像できないスピードで移動する。

-----150403追記--------

初遭遇以降、この時期はフタマタの交尾を観察するのが定例行事となってきた。

この日は半径30m以内に12ペアという高密度で交尾を観察することができた。

ピークと思われるので今後の参考の為データ等を書き留めておく。

2015年4月2日(月齢 12.7) ほぼ無風。
20時半に最初の交尾ペアを発見、21時半ごろにピークを迎える。気温は2~4℃。
食樹のミズナラ樹幹の他、カラマツの樹幹でも多く見られたが、細めの樹木では1ペアしか見られなかった。
高さは地上1.5m~5mほど。地上2~3mに多く集中しており発見は容易であったが
脚立を使わないと撮影捕獲は難しいと思われる。
交尾を発見した木には日没後から既に♂が多く張りついており、♀を待っているかのようだった。
20時を過ぎたあたりから♂が樹幹で羽ばたきながら歩いて移動するのが見られるようになり、
♀を迎える準備万端、と言った感じであった。
羽化不全の♂も交尾に成功しており、飛翔能力はあまり必要ないのかもしれない。

S_2
【成虫交尾写真】20150402北佐久郡軽井沢町<標高1200m>


種小名はfilipjevi(フィリピエウィー)ロシアの昆虫学者、Ivan Nikolayevich Filipjev氏(イワン ニコラエビッチ フィリッピェフ)(1889-1940)のことと思われる。

以前は北海道にのみ産すると言われていたが、中部山地帯でも次々と生息地が確認されている。

その他のカテゴリー

無料ブログはココログ