南方偶産種(関東近辺)

【0203】ヒメアケビコノハ
Eudocima phalonia

♂は【アケビコノハ】によく似ているが、♀はアケビコノハとは違い、木の葉状とは違う模様をしている。

後翅の黒い部分が広く、アケビコノハとは違うのがわかる。

北は北海道から広く散発的な記録があるようだが、関東近辺では定着していないようで毎年採集される種ではない。

国外では東南アジアをはじめオセアニア、アフリカなどにも生息し、相当に広い分布域を持つ種のようだ。

船の甲板上で採集されたこともあり、遠距離を移動して生息地を拡大しようとする種であることが伺える。
村田 浩平 ・ 土屋 守正・増島 宏明,, 2007.太平洋上を浮遊する昆虫類と島嶼の昆虫相に関する研究 : 昆虫類の島嶼間移動の可能性.,昆蟲(ニューシリーズ) 10(4), 75-87,

そんな関東では稀なヒメアケビコノハ、10月の記録が多い。

Photo
【成虫♀写真】20181013 山梨県 <標高1650m>

長距離を移動してきたにしては妙に綺麗である。羽化したてじゃないかと思えるくらいだ。

ここからは僕の仮説になるが・・・

ライトトラップ中に霧が通過すると大量の飛来があることは蛾屋なら経験しているかと思う。

このヒメアケビコノハも霧の中から数多の蛾と共に飛来してきた。

これはコウモリのエコーロケーションが減衰される霧や低層の雲に紛れて移動してきているのではないだろうか。

例えば梅雨前線と共にやってきた個体が山にぶつかったとき彼らはそこに降り立ち、新たな生息地にしようとしてそこで産卵し、秋に成虫となる。

冬は越すことができず、翌年同じ場所で採集されることはない…

こう考えると一見南方種に似つかわしくない山奥で10月に綺麗な個体が採集されることに説明がつく。

しかし夏の間に幼虫が採集されていないとこの説は立証できないのだが…


俗にいう偶産蛾とは、偶々飛ばされてきたのではなく貪欲な生息地拡大の一端を垣間見ているだけなのかもしれない。

種小名はphalonia(ファロニア)。よくわからなかった。

ファロニア島というのが地中海にあるようだけど、縁もゆかりもない。


埼玉での記録は三峰山と両神山の二例。+僕が三峰山で採集している。

S1002
【成虫♀写真】20101003 埼玉県 <標高1000m>


【0155】オオトウウスグロクチバ
Avitta fasciosa fasciosa

1976年、奇しくも筆者が生まれた年に日本で初記録された蛾である。
杉繁郎,2001. 日本未記録のヤガ3種 蛾類通信 89:471-473

西日本では特に珍しくないようだ。和名の『オオトウ』は和歌山県の大塔山にちなむという。

しかし東日本では記録が散発的で偶産蛾の域を出ていない。

ただ例外的に奥多摩地域では確認例が多く、定着している可能性がある。

埼玉での記録は1例しかなく、細かい報文は確認していないがこの個体が2例目か。

>>>>>>>>>141215追記
2例目の記録が両神山で記録されていた。この個体は埼玉県3例目となる。
神部正博・築比地秀夫・長畑直和,2000. 10月の両神山で得た偶産性ヤガ科蛾類とその背景 寄せ蛾記94:2813-2829
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どちらにしろ定着している可能性は低いだろう。

はっきりと縁どられた腎状紋が目立つ蛾だ。

S_2
【成虫写真】20141004埼玉県秩父市三峰<標高700m>
林道でのライトトラップに1頭だけ飛来した。

種小名は fasciosa (ファスキオサ)。 ラテン語で fascios=帯状面 という意味らしい。

帯状紋が多いのでそこから命名されたのだろう。

食草はアオツヅラフジが記録されている。

成虫出現期は5~11月となっているが、関東近辺では10月の記録が多いようだ。

この種に限らず、南方種と言われるような偶産蛾は9~11月に記録されることが多い。


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