ドクガ科

【0168】ヒメシロドクガ
Arctornis chichibense

個人的にはドクガ科の中でも一、二の美しさを誇ると思っている蛾だ。

薄く透けた緑色をしたその翅は、生きている時だけに特有の色である。この美しさは標本に残せないのだ。

植樹がブナ、ミズナラの為、関東近辺ではある程度の標高がないと生息していない。

本州には同じような白いドクガが多種生息しているが、

【スゲドクガ】【オオスゲドクガ】←止まり方が違い、若干黄色味を帯びる

【ヤナギドクガ】【ブチヒゲヤナギドクガ】←止まり方が違う

【キアシドクガ】【ヒメキアシドクガ】←脚が黄色い

【スカシドクガ】【エルモンドクガ】←前翅に黒点、L紋が見られる

と意外に消去法で同定ができる。


S110731
【成虫♀写真】20110731 埼玉県秩父市大滝<標高830m>

僕の美的感覚では緑色が薄いほど美しい。しかし真っ白ではダメだ。

この個体に出逢ったときは思わず息を飲んで見とれてしまった。






成虫は春と真夏の2化するようで夏の個体は小さくなるという。

種小名はchichibense (キキベンセ)。接尾辞-enseは地名の後につく語句だ。

ということはchichib=地名である。ひょっとすると埼玉県秩父市のことだろうか?

以前はArctornis alba chichibense という学名で、検索すると確かに似た蛾がヒットする。

保育社の原色日本蛾類図鑑にはこの学名で載っており、原名亜種は大陸に生息すると記述がある。

その後、chichibense alba とは別種ということが判明したということと思うが、文献が拾えない。


埼玉では秩父地方で多く記録されている。

旧浦和市でも1件の記録があるが(市川,1978)食樹のブナ・ミズナラがあるとは考えにくく、標本を確認する必要がある。

【0167】キドクガ
Kidokuga piperita

成虫にも毒があると言われている数少ない蛾である。

発生個所付近でのライトトラップには大量に飛来することがあるので注意が必要だ。

しかし実際に僕は成虫でかぶれたことがないため、どういった症状になるのかということはよくわからない。

そういった情報を知りたい方は「ドクガ 成虫 被害」で検索していただいた方が早いと思う。

S110731
【成虫♂写真】20110731 埼玉県秩父市大滝<標高830m>

黄色の前翅に黒い斑が施され、他の黄色系ドクガ【ドクガ】【チャドクガ】【ゴマフリドクガ】などに似ている。

そんな似ている種の中で、キドクガは黒い斑が全体的ではなく部分的に施されている。

細かい個体変異はあるものの、おおよそこの斑は同じような形をしている。慣れれば同定は難しくない。


属名がKidokuga (キドクガ)であり、和名がそのまま属名になっている珍しい例である。

以前は【トラサンドクガ】と共にEuproctis (ユープロクチス)属に分類されていたが、

標準図鑑によるとHolloway(1999)により分類の見直しがされ、新しい属が設定されたとのことだ。


種小名はpiperita (ピペリタ)。このまま翻訳ソフトにかけると「ハッカ」の意味しかでてこない。

これはペパーミントの学名がpiperita であることによるものだ。

piperがラテン語で「コショウ」なので、コショウを塗したような前翅を評してのことだろう。


様々な樹木を食樹とし、埼玉では普遍的に見られる種だ。


【0157】マイマイガ本州・四国・九州亜種
Lymantria dispar japonica

7月の下旬から8月にかけて成虫となる蛾である。ここ数年大発生を繰り返しており、よく耳にすることが多い。

その様子はニュース等でも放映されているので、ご覧になった方も多いのではないだろうか。

そんなマイマイガの大発生に、今年は僕も悩まされることとなった。



といっても僕の居住地で大発生が起きたわけではない。

ライトトラップをするととんでもない量が飛来してしまい、採集ができなくなってしまうのだ。

勿論、大発生をしている地域の方の被害に比べればなんということはない。被害はゼロに等しい。

しかしこの大発生のおかげで僕の採集行はかなり制限を強いられた。

Smaimai2
【成虫写真】20140726 新潟県魚沼市上折立<標高820m>

点灯後一時間でこの有様だ。実はこの地域でマイマイガが大発生しているということを知らなかった。

それらしい布石は道中あったものの、ニュースで見るような感じでもなく壁にチョボチョボついてるくらいであった。

これくらいならまあ大丈夫だろうと安易な考えで幕を張ってしまった結果だ。

蛾の重みで幕がしなって倒壊の危険があったため、撤収せざるをえなくなってしまった。


これだけの数に囲まれるとさすがに健康に支障をきたすレベルである。

鱗粉アレルギーの僕はクシャミが止まらなかった。一時的な刺激で皮膚もかゆくなった。

数時間後には治まる一時的なものだ。一部報道にあるような「毒」はこの種にはない。



そこから1時間ほど車を走らせたところでは、大発生のニュースでよく見る光景が広がっていた。

その中でも僕が驚いたのはこの木だ。
Smaimai3
【成虫写真】20140726 新潟県魚沼市大湯温泉<標高280m>

下から上までマイマイガの♀でみっちりである。本当にj隙間なく埋め尽くされている。

マイマイガの♀は何かにぶつかるとそれを登っていく習性があるように思う。

ライトトラップ中にも僕の体を「登ってくる」ことが多々あった。幕でも上の方に溜まっていく個体がとても多かった。

この木も灯りに寄せられた♀がぶつかり、登って♂を待ち最後は産卵に至る、というような感じであった。

S_3
【成虫交尾写真】20140726 新潟県魚沼市大湯温泉<標高280m>
V地で交尾することが多いようだが、このような形で交尾をすることもある。茶色い方が♂である。


S
【成虫♂写真】20140726 新潟県魚沼市大湯温泉<標高280m>

♂は単体で見るととても可愛い部類にはいる蛾である。当ブログ記事萌え蛾特集 でも紹介するくらいのレベルだ。


S_2
【成虫♀写真】20140726 新潟県魚沼市大湯温泉<標高280m>

♀は一般的に大きい。が、大きさにはかなり変異があり小さいのも多く見られる。

右に見えるのは卵塊である。見たことがある方も多いかと思う。この中に卵がたくさん産みつけられており、

その外側を守るように鱗粉をすりつけてあるのだ。この卵塊にも毒はない。


種小名は dispar (ディスパル)。ラテン語で~とは異なる、ルーマニア語で姿を消す、スペイン語で異種。

記載者はLinnaeus(リンネエウス)。分類学の父と言われた Linné(リンネ)のラテン語名である。

ということでラテン語の「~とは異なる」という意であろうか。何と異なるのかはわからない。

>>>>>>>>>140106追記

学名の意味を調べていらっしゃるyyzz2さんより「(♂と♀で)違っている」の意味である、とご教示いただきました。

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分類で紆余曲折ある種でもあり、ここ数十年の間に随分と変更されている。

簡単に僕がまとめ、mothprog氏に補足していただいたものを以下に掲載する。

長いので興味のない方は読み飛ばしていただいた方が良いかもしれない。


埼玉でも市街地から山地まで多数の記録があるド普通種である。

以下分類の要綱

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Lymantria dispar japonica
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